近藤史恵『サヴァイヴ』

近藤史恵_サヴァイヴ
近藤史恵『サヴァイヴ』 (新潮文庫)

自転車ロードレースを描いた『サクリファイス』と『エデン』のシリーズを補完するような短編集。

団体戦略が勝敗を決する自転車ロードレースにおいて、協調性ゼロの天才ルーキー石尾。ベテラン赤城は彼の才能に嫉妬しながらも、一度は諦めたヨーロッパ進出の夢を彼に託した。その時、石尾が漕ぎ出した前代未聞の戦略とは―― (「プロトンの中の孤独」)。エースの孤独、アシストの犠牲、ドーピングと故障への恐怖。『サクリファイス』シリーズに秘められた感涙必至の全六編。

全6編。
最高。


以下、人によっては「ネタバレ」と感じる部分があると思いますので、ご注意ください。
 ↓

長編2冊の主人公である白石誓の目線を通した物語を最初と最後に配置。間に、白石と同世代の伊庭和実を描いた作品1編、彼らからは1世代上の石尾豪と赤城の活躍を描いた作品3編を収める。海外に行った白石の古巣である、「チーム・オッジ」でのエピソードが中心ですね。
そのどれもが素晴らしいけど、特に白石以外の登場人物にスポットが当たっているものが沁みる。シリーズものはこういう別の方向から光を当てられてさらに深みを増し、また違った表情を見せるところが堪らないですね。

実は『サクリファイス』を読んだ時の登場人物それぞれの印象はあまりはっきりとは覚えていません。ただ、(薄ぼんやりと)ぶっきらぼうなイメージのある伊庭の家庭模様やスランプが描かれた「スピードの果て」は読み応え抜群。スランプを吹っ切れたラストの爽快感に、思わず涙する逸品。

エース石尾とそのアシスト赤城をフィーチャーした3編が時代順に並ぶことで、『サクリファイス』に至るまでの「チーム・オッジ」の歴史を総ざらいできる流れも良く考えられていますね。
赤城なんて人物がいたことすら覚えていませんでしたが(汗)、彼の落ちついた視線を通して浮かび上がるエース石尾の姿にシビれます。「プロトンの中の孤独」冒頭の石尾の台詞、『赤城さん、俺のアシストになりませんか?』が、「ゴールよりももっと遠くへ」のラストに繋がる様子、石尾と赤城の奇妙な絆に心揺さぶられますね。『サクリファイス』のおける結末を知っているだけに…。

傑作。
本作を以って『サクリファイス』の価値がさらに持ち上がっているように感じるところも◎。読み返さなきゃ。
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