Mary's Blood「Countdown to Evolution」

marysblood_countdowntoevolution.jpg
Mary's Blood「Countdown to Evolution」 (2014)

4人組ガールズ・メタル・バンド、メジャー第1弾、初のフルアルバム。
正直、メアリーがメジャーってのは驚きましたね。その激しいライブ・パフォ-マンスと「メジャー」という単語の語感がそぐわないと思っていたからかもしれません。
今年の1月にメジャー・デビューを発表 → それを記念しました的ワンマン・ライブを敢行 → その後何本かのライブ出演を経て満を持しての、というよりやっと出たかという印象の、フルアルバムです。

結果、メジャー感が一気に増した傑作に仕上がりました。昔はメジャー移籍によるセルアウトってのが心配されたりしたんでしょうが、今はそんな風潮はないのかな?とにかくそういった“軟弱化”“日和見”みたいのは、まったくないですね。日和ったからといって売れるジャンルでも知名度でも時代でもないのかもしれませんが。
目指す方向性とバンドサウンドはより激しくなっているのに、メロディ面の充実も成功しているという理想のバランスですわ。おまけに、今まではやや希薄だったオーセンティックなHR/HM的展開が大胆に取り入れられ、それがもたらすカタルシスが堪らんのです。
王道かつ先鋭的。
驚いたね。


初めてメアリーのライブを観た2012年の『Electric Lady Loud』での感想で私は「今後、SAKIのギターを主軸に楽曲とライブ・パフォーマンスを練り上げていけば、もっと良いバンドになるのでは」と書きました。
そして、ここに正にその通りの音になって届けられた新作があり、あたしゃあ嬉しい限りですよ。ダース・シディアスばりに「グゥゥゥゥーーッ、メアリー、グゥゥゥゥーーッド」「全ては計画通りの進んでおる」って言いたい感じです(笑)

本作収録の10曲中6曲を書いたSAKIの貢献は大きく、誤解を恐れずに言えば「ギター・アルバム」だと言ってもいいかもしれません。このリフとソロ両面の主張は紛うことなきメタルだし、テクニカルなんだけど無機質じゃない演奏の切れ味に思わず身体がビクビクッてなります。「あたし、もう我慢できない!」的な(笑)、情念迸り過ぎて行き過ぎちゃったようなチョーキングもイイし、時にSLAYERバリの不協和音を奏でつつそこからメロディックにまとめていく鳥肌モノの展開があったりと、Gt面での聴き処は非常に多いです。
また、既にライブでは(サポートGtを入れた)ツインGt体制で演奏していますが、Gt1本に拘らない楽曲、むしろツインリードが肝となるような楽曲を収録した結果それがバンド最強の武器になっちまった、そんな風に感じる個人的に嬉しいポイントもあります。

このアルバムの苛烈な作風は、シーン屈指の実力者であるMARI(Dr)を擁するリズム隊の存在ゆえに選択できた方向性でしょう。また、逆にこの方向性を選択したからこそさらなる鍛錬が必要になり、結果として演奏陣の技巧レベルが上がったとも言えるような気がしますね。ライブを観た印象からの逆引きみたいな感想ですが。
演奏・作曲技術等、全てがレベルアップしている中、EYE(Vo)の成長も光ります。烈しくなった方向性に合わせて今までに無かったようなドスの利いた声も披露してますし、1曲の中でも様々なスタイルの歌唱法を切り替えられるようになった感じ。これといって何かが飛び抜けているわけではないんだけど、多彩な歌い回しが出来て、表現力が増したね。ライブでの安定感についても同様。
あとVo面に関しては、歌詞の乗せ方が今までよりスムーズになり、不自然に感じるメロディが減ったのはデカいなぁ。


①Countdown to Evolution
今までではありえなかった、王道HR/HMの流儀に則ったようなイントロに昂揚する。

②Marionette
前曲から雪崩れ込むように始まるリード・トラック。(MVは → コチラ
SAKIらしい攻撃的でトリッキーなリフ、重さと突進力を兼ね備えるリズムにいきなり鳥肌。演奏は目まぐるしいんだけど、サビメロは実にキャッチーなんだよな。そして間奏でツインリードに瞬間移行するところがマジでツボ。

③XOXO -kiss & hug-
ウネウネうねる、リズミックでグルーヴィな曲。リズム隊の貢献が光るね。
アルバムの曲目を見てあまりに印象的な曲名にビビったもんですが、調べたら「XOXO」はクソクソじゃないんだな。顔文字みたいなもので、発音しないとのこと(残念/笑)

④Wings
さぁさぁキラーチューンきましたよ。ドラマティックかつクッサクサなメロディが走り抜けるスピード・チューン。イントロの重いリズムからテーマメロへ移行する瞬間の爆発力、Gtの刻み/重ねの妙、歌メロ、泣ける歌詞。全てがツボですね。個人的にはメアリー最強楽曲。
飛翔感のあるメロディを歌い上げる伸びやかなVoが素晴らしく、安易にファルセットに逃げないで音域ギリギリ精一杯なところ、その余裕の無さが曲のシリアスさを増してて◎。
「嗚呼 あなたの声なき叫び声よ どうかあの日へ連れて行ってよ 負けないで」

⑤Campanula
爽やかなメロディが映えるポップ・チューン。RIOのBaの存在感と、気持ちよく歌い上げるGtが素晴らしいです。

⑥Paranoid Delusion
なんじゃこのリフは!?インダストリアル風の尖りまくったGtと噛みつくようなVoにビビる攻撃的な曲。ドカンドカンとリズムをキープするDrの上で、縦横無尽に暴れまわるGtがすっげぇのよ。

⑦Coronation Day
テクニカルなインスト曲かと思わせるイントロから息苦しいほど攻め攻めの超速スラッシュへ。前曲から流れは本作随一の激烈さ。グロゥル一歩手前の吐き捨て型Vo、限界に挑むかのようなブラストビートも凄いが、不協和音気味の弾きまくりGtソロの中に封じ込めたちょっとした哀感も凄い。

⑧I, Lament
メアリーといえばテンポ・チェンジの上手さ。キビキビとしたテンポチェンジが生み出すフックが最大限に発揮された哀メロ・チューン。ちょっとした陰のある歌メロが堪らないですね。この曲も歌詞がイイ。
サビ裏で厚めに重ねるGt、Gtソロの展開美とその裏のベース・ランも光るね。

⑨Black★Cat
ゲストプレイヤーであるLIGHT BRINGERのMao(Key)のオルガンが効いた異色のシャッフル・チューン。間奏のジャジーなGtとメタルGtの掛け合いソロ合戦は聖飢魔ⅡRATSBANEに憧れたSAKIの遊び心が爆発していて、「エース!ルーク!」って感じですが(笑)、もうちょっとスリリングに仕上げられた気はしますね。

⑩Promised Land
さぁさぁキラーチューンきましたよパートⅡ。MARIのDrがリードする圧倒的スピード感のメロパワ曲。ボトムが効いてて重いのに、瞬発力と爽快感に溢れていることにビックリ。と同様、空を駆け巡るようなメロディが素晴らしい曲ですが、こちらの方が曲調は明るめですね。マニアックさとスリリングさと美しさを兼ね備えた間奏の展開が本当に素晴らしく、アルバム全体のハイライトにしてクライマックスであろうと感じます。
ラストに挿入されるアコギのフレーズがやや唐突で浮いてる感じがするのがちょっと残念ですね。もっと鮮やかに繋げられればドキッとしたのにな。


全10曲という長さ。緊張~解放を繰り返して飽きさせない曲順。全体的にはタフな印象を感じさせるアルバムでありながら、要所々々にキーとなる楽曲が配置されていることによりバラエティの豊かさも兼ね備える。
メンバーの踏ん張り、特にGtの冴えわたりっぷりに驚く傑作ですね。

本人達の実力もさることながら、LIV MOONCyntiaでおなじみの丘ナオキがアレンジで関わっていたり、各楽器(特にBa)が明瞭に聞こえる分離の良いサウンドで録音されていたり、周りのスタッフのバックアップ体制も良かったんではないかな。
はっきり言って、次作が心配ですよ。本作に聴き劣りしそうで(笑)
最大の問題点は、バンドロゴというかシンボル・マークがあんまりカッコ良く見えないこと。←

【お気に入り】
全曲素晴らしいですが、
④Wings
⑩Promised Land
⑧I, Lament
が特に好きかな。


あ、SAKIの新しいkillerギター、超カッコイイよね。
スポンサーサイト

COMMENT 4

山崎パンイチ夫  2014, 09. 09 [Tue] 18:22

全曲解説付の力作記事、Mary's Blood聴く時には何度も読んで参考にさせてもらってますー。
凄いアルバムですね。DrのMARIさんの高いセンスと技量、全曲キラーチューンかよ!?って唸ってしまう充実した楽曲、そしてGtのSAKIさんの卓越した技術もさることながら、まだお若いだろうにどんだけ音楽センス貯め込んでやがんだ!?と平伏せざるを得ない、音楽的引き出しの豊富さに完全KOされております。私的にはARCH ENEMYの新作と肩を並べる好感触具合で。おっしゃる通り、次作が怖いくらいですね。
ちなみに何故か⑤のサビの終わりを聴くと、似ても似つかないハズなんだけど、LUNA SEA"IN MY DREAM(WITH SHIVER)"が頭を過ぎります。

Edit | Reply | 

ヒゲ・スカイウォーカー  2014, 09. 10 [Wed] 21:04

山崎パンイチ夫さん、

ありがたいお言葉です。
このバンドではSAKIが一番若いと思いますけど、彼女、めちゃめちゃ色々聴いて、吸収してますよね多分。
予想と期待を軽く超えてきたデビューフルでした。

Edit | Reply | 

ダニーボーイ  2014, 09. 17 [Wed] 13:04

化けましたね

いつも楽しく拝見させて頂いております。

"Marionette"のMVが公開された時から、最新作には期待しておりました。

で、期待以上の捨て曲無しの会心作になりましたね。
皆さんの成長ぶりには嬉しくなりました。

自分も、④Wings、⑩Promised Landの涙ものの疾走曲がお気に入りです。


いまだに、⑩Promised Landのラストのアコギの本編との繋がりが理解できないでおります。
もう少し、工夫してもらいたかったですね。


取り留めもない文章で失礼しました。

Edit | Reply | 

ヒゲ・スカイウォーカー  2014, 09. 18 [Thu] 20:23

ダニーボーイさん、

本作に関しては絶賛の評がとても多いですね。それに見合う傑作だと思いますが。
元々このバンドってちょい王道からは外れていて、マニアック/意外なことも盛り込んでくる印象(それでも本作はかなり王道寄りになったと思います)ですが、⑩のラストなんかはその最たるものかな、と思います。それが効果的かはさておいて(汗

Edit | Reply |