B'z「RISKY」


B'z「RISKY」 (1990)

スタジオ・フルアルバムとしてはこの年(1990年)2枚目のリリースとなる、4th。

初期デジロック路線の完成型であると共に、アナログ的なロックへの憧憬を滲ませ、ハードな感触が強まった作品。初期はギターよりも打ち込みシーケンスの方が曲の中で目立っていましたが、本作からグッとギターの重要性が増してきました。彼らのキャリアの中でも転換点となる一枚でしょう。

ミックスを担当したのは、DURAN DURANMADONNAを手掛けたJason Corsaro。作業は、マスタリングと合わせてニューヨークで行われたようです。Jasonさん、実はSOUNDGARDENDANZIGBUCKCHERRYSOULFLY等々、HR/HM畑の仕事もしてる人なのよね。
このアルバム、楽曲の多くが初の映像作品であるPV集「FILM RISKY」(VHS仕様!)に収録されていることもあり、個人的印象はそのPVが撮られたニュ-ヨークの風景とダイレクトに結びついています。前作「BREAK THROUGH」の都会っぽさが東京のイメージだったのに対して、こちらはアメリカのイメージ。ニューヨーク。行ったことないけど。

洗練されました。
いや、今の若い人からしたら多分に時代掛かっていてダセぇのかもしれませんけど、以前と比べりゃあグッと大人っぽくなりましたよ。色気増し増し。歌唱と歌詞、その両面で稲葉節とも言えるスタイルが完全開花していることが大きいと思います。
アルバム前半の完成度たるや驚異的で、一切隙は無し。反面、後半は意欲的に幅を広げようという意志が感じられ、実験的な曲が並びます。一枚通して捉えると、歪さがある。でもそれがいいし、雑多な要素全てをB'zという名の胃袋に飲み込まんとする食い意地と勢いを感じます。


①RISKY
イントロ。女性のエロい吐息といい都会的な雰囲気といい、一気に大人っぽくなったなこりゃ。
(前作が子どもっぽかっただけとか言うな)
ブーーンッ。「りすきぃ、うぇあどぅうぃ、ごぅ」は口真似したくなるね。次曲のぱぱらぱっ!ぱぱらぱっ!まで含めて。


②GIMME YOUR LOVE -不屈のLOVE DRIVER-
ホーンの華やかさが印象的な超絶バブリッシュ・ナンバー。チャラチャラした曲なんですが、松本のギターは叫びを上げており、ハードさとのバランスが見事な佳曲です。
歌詞の冴えが凄まじいことになってますね。言葉のチョイスは勿論、メロディへの乗せ方/詰め込み方がジャストにハマっており、キビキビした稲葉の歌唱スタイルと完璧に呼応してる。ハッ!とかアォ!とかンー!とかフゥ!とかウッ!とかオゥ!とかいちいちうるさいくらい、いきみ声を捻じ込んでくる様がサイコーです。「二人ガードレールと CRUSHしても なんかおまえだけ助かりそう…」の部分は、「僕」と「おまえ」の関係性と心理的な優劣、強気の裏に潜む弱気を表現したキラー・フレ-ズ。譜割りも完璧でしょ。
華というか、アーティストとしての“格”が一段上がったことを高らかに宣言するような、理想的なオープニング。

③HOT FASHION -流行過多-
フゥ!
前曲の勢いをさらに加速させる超絶バブリッシュ・ナンバーその2。歌詞の冴えが凄まじいことになってますパート2でもある。この曲での稲葉節は正にレッドゾーンに振り切れており、意味があるようで無いような言葉の羅列が奇跡的に連なり、結果、刹那的な時代の流れを描写することに成功していると思う。初めて聴いた時、唐突に「ランボオ」なんて人物名が挟まれることにも驚いたが、言葉のハマり方にほんとびっくりさせられた。ちょっとでもノリがズレたら瓦解しそうなスリリングさは、彼らの数多い楽曲の中でも屈指。ハードなGtワークも聴きどころな名曲です。

④EASY COME, EASY GO!
先行シングル。ナナナナ~ナというみんなで歌えるコーラス・パートが存在することもあり、ライブでよく披露される人気曲ですね。前曲からの入り方がなかなか鮮やかです。まぁここだけじゃなくて、このアルバム(特に前半)は曲の繋ぎ方がしっかりと考えられていると思います。
派手じゃないからでしょうか、当時はあんまり好きじゃなかったような気がする曲ですが、年齢を重ねるにつれてだんだんと沁みてくるようになりました。「昔 卒業の寄せ書きに 書いたことのあるクサイ言葉 『逆境にくじけるな』と 今自分に言い聞かせて」B'zの中でもかなり有名なフレーズでしょうけど、シンプルながらとても良い詞だと思います。「昔」と「今」の両方がすっきりと表現されているからでしょう。
シングルのヴァージョンよりも先に、Jason Corsaroがミックスしたこちらのヴァージョンがあって、「ハード過ぎる」からシングルの方はミックスしなおされたというのは有名な話。アルバムで聴くことが多いからか、私はこっちのVer.の方が好きかな。曲調に比してDrがやかましいですが、それも微笑ましい。でも一旦気になってくると、やっぱドッカンドッカン、ウルセーな(笑)
Gtがソロ以外の短いフレーズでもよく歌っているのもチェックポイントですな。

⑤愛しい人よGood Night...
TVドラマ『代表取締役刑事』のために急遽シングルカットされた曲。基本に忠実なベッタベタのバラードですが、これがもうアタマからケツまで完璧。年間ベスト記事でもランクインさせました。二段構えのサビと訥々と言葉を置いてゆくような稲葉の歌唱が沁みるし、松本のGtソロは名演。Gtトーンに後のHR期に通じる適度な歪みがあるのも好みです。
で、代表取締役の刑事ってのは一体全体どんな役職というか職業なんですかね?w

⑥HOLY NIGHTにくちづけを
ここからアルバム後半。キャリア初のクリスマスソングです。B'zのクリスマスソングというと圧倒的にいつかのメリークリスマスが有名ですけど、あれと異なってこちらは明るいです。前向きです。「宇宙も二人のため」ですから。Don't hesitate, Honeyじゃねぇよっていう(笑)
「出会ったばかりの北風の中~」からのブリッジ・パートはトレンディ・ドラマのようなバブリーさが全開ですけど、ここがこの曲で最も哀愁のあるセクションなのでこれで良いんです。一転してサビは明るすぎてあんまり受け付けないんですけどね。裏のバッキングもなかなかチャラい。

⑦VAMPIRE WOMAN
カッティングの鬼、光臨。
とりわけ目立つ曲じゃありませんが、聴きどころは多い。ギャグ一歩手前(手前じゃなくて一歩奥か?w)の韻を踏んだ歌詞、猫ちゃんSE、ジゴロ稲葉と吸血鬼ウーマンによる小芝居、多彩なGtワーク。特に全編刻み倒す松本のカッティングは白眉で、曲のイメージを決定づけています。猫の鳴き声を真似たかのようなウィ~~ン!ってのもイカす。あと、「気絶しそうな電光石火スマイル」の言い方すき。
因みに吸血鬼役の女性は坪倉唯子。B.B.クィーンズの人ですけど、このユニットはビーイング出身の才人集団だからねぇ。ちゃんと聴いたことないけど。
アオーンッ!

⑧確かなものは闇の中
バラード。本作一の地味曲でしょう。ただ、この曲が最も成熟した姿を感じさせてくれるかもしれない。歌詞は得意のザ・不倫なんですが、言葉選びが秀逸ですね。閉塞感漂う「ホテルの部屋は 逢うたびに狭く、狭くなってゆく」のくだりなんて素晴らしい表現だと思います。この曲もと同じく、ブリッジが一番哀愁あるメロディなのよね。バックのGtの刻みがまた良い仕事してる。イントロとアウトロのサックス、アコギによるソロも◎。

⑨FRIDAY MIDNIGHT BLUE
何はともあれ、この曲は歌詞。B'zには具体的なシチュエーションを描写したり固有名詞をそのまんま出してくる曲は多いですが、その中でもこの曲は飛び抜けて異質です。「家賃不当値上げ」なんてフレ-ズはそうそうないでしょ。「タクシーの運ちゃんは絵描き」という謎の設定は実話ならではのもので、正に「事実は小説よりも奇なり」を地で行きます。あと、2番サビの「反省!」の言い方についてですけど、調べてみると猿回しの反省猿が社会現象になったのってズバリ1990年だから、このアレンジは最先端から加速するやつだったのかもしれない(笑)。当時生まれていなかった若いおともだちのみんなは、「反省猿」で検索してみよう。

⑩It's Raining...
アイデアの勝利でしょう。淡々としたバラードに英語の語りと稲葉による電話の会話をジョイント、これが見事にアルバムのクロージング・ナンバーとして機能していることが凄い。では相手役の女性を立てましたが、こちらは完全に稲葉の一方的な独り語りになっており、もしかしたら電話の向こう側の電話相手は女性じゃなくて男性かもしれないし、誰もいないかもしれない(笑)。歌詞カードにはこの語りの部分は記されていないわけですけど、役に立たないことに心血を注ぐのは楽しいもので、管理人はこの稲葉の台詞を全て暗記しようとしたことがある。ってゆうか、普通やるよな男子ィ?
電話の向こう側とこっち側では天候が異なるようなので遠距離恋愛って設定なんでしょうけど、この曲も昔っから不吉なものを感じるんだよな。全体的に少しずつすれ違いを感じるやりとりなんだけど、特に3番。David Bowie(のCD)を借りたまんまだと言うのに続いて「いいの?」っていうのは“返さなくていい”とか“あげる”って言われてるんだろうし、その後に映画の話をしても反応薄そうだし、思い出の品であろう「あの絵」「もうウチにはない」し、そして雨は止まない、という…。


前作「BREAK THROUGH」「感性が誘惑された。創造力が突き抜けた。」(←キャッチフレーズ)と言いつつも、本当にB'zが突き抜けたのは本作からでしょう。これも名盤。特に前半は完璧ですな。
この年の年間ベスト記事の順位の通り、私は前作の方が好きです。…が、こうして1曲ずつまとめてゆく過程で、順位をもうちょっと上にしたくなってきた(笑)

【お気に入り】
⑤愛しい人よGood Night...
④EASY COME, EASY GO!
③HOT FASHION -流行過多-
②GIMME YOUR LOVE -不屈のLOVE DRIVER-
⑦VAMPIRE WOMAN
⑩It's Raining...

【お気に入りの歌詞】
「二人ガードレールと CRUSHしても なんかおまえだけ助かりそう…」(②)
「昔 卒業の寄せ書きに 書いたことのあるクサイ言葉 『逆境にくじけるな』と 今自分に言い聞かせて」(④)
「気絶しそうな電光石火スマイル」(⑦)
「ホテルの部屋は 逢うたびに狭く、狭くなってゆく」(⑧)
③の歌詞全部

【お気に入りの台詞】
「ほっといてよ」(⑦)
「あの絵?もうウチにはないよ」(⑩)


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