ローレンス・ブロック『慈悲深い死』

ローレンスブロック_慈悲深い死
ローレンス・ブロック『慈悲深い死』 (田口俊樹 訳、二見文庫)

ローレンス・ブロックの「酔いどれ探偵マット・スカダー」シリーズの長編7作目、『慈悲深い死』を読みました。

酒を断ったスカダーは、安ホテルとアル中自主治療協会の集会とを往復する日々を送っていた。ある日スカダーは、女優を志してニューヨークにやってきた娘の行方を探すように依頼される。ホームレスとヤク中がたむろするマンハッタンの裏街を執念深く調査した末に、彼が暴いた真相とは?異彩を放つアル中探偵を通して、大都会ニューヨークの孤独を哀切に抽く人気ハードボイルドの最新作。

「酔いどれ探偵」とはいいつつ、本作でのマットは断酒してるのでまったく飲みません。で、DREAM THEATERの一連の作品でもお馴染みのAAの集会に足繁く通うのです。


以下、人によっては「ネタバレ」と感じる部分があると思いますので、ご注意ください。
 ↓

「マットと言います」「私はアル中です」
「ヒゲスカと言います」「私はリア充です」

…ごめんなさい。嘘つきました。


上記「マットと言います~」のくだりは『八百万の死にざま』のラスト、涙を振り絞る名シーンでの台詞ですが、禁酒生活続行中の本作でのマットもAAの集会の場で「私はアル中です」と言い続けます。それくらいアルコール中毒の人がそれを克服して、再び「逆戻り」しないでいるのは難しいことなのかもしれません。事件を追うマット自身も酒を口にする一歩手前でギリギリ踏みとどまるような場面が幾度となくありますし。正に“Out on the Cutting Edge”(原題)状態か。

私立探偵で(マットは無免許ですが)酒飲みというとジェイムズ・クラムリーの作品が思い浮かんだりしますが、まるでピンとこなかったクラムリーの数作に比べて、このシリーズはやはり好み。ただ飲んだくれてるだけのミロ(『酔いどれの誇り』等)になんざまるで魅かれませんが、マットとその周りの人々との会話、そして彼らが住むニューヨークの描写はめちゃめちゃ面白い。そして哀しい。

マットの日々の生活の描写が延々と続き(それはそれで面白い)、「アレ、事件の行方は?」となったところで明かされる結末は、このシリーズにしてはややトリッキーでしたね。唐突かと思いきや、それまでの何気ない生活描写の中に伏線が潜んでいたというマジック。
力作。
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