BRUCE DICKINSON「THE CHEMICAL WEDDING」


BRUCE DICKINSON「THE CHEMICAL WEDDING」 (1998)

IRON MAIDENのヴォーカリスト、ソロ5作目。
前作「ACCIDENT OF BIRTH」(1997)から引き続き、Roy Z(Gt)らTRIBE OF GYPSIESとメイデンでの盟友Adrian Smith(Gt)をバックに迎えた布陣です。
Bruceのソロ・キャリアにおける最高傑作であると共に、メイデン時代を含めてもこれが一番ドラマティックなんじゃないのか?、というほどの超名盤。コンセプト作であり、タイトルが「化学の結婚」というくらいだから、題材は錬金術だ。

重く、
暗く、
妖しく、
美しく。

成し遂げられたのは、モダンと伝統の“結婚”。
このアルバムの音像こそが正しく「ヘヴィ・メタル」だろ、と私は思うのです。

BLACK SABBATH的なリフ回しが、魔術的に冴え渡るリックが、重厚にウネリまくるリズムが、錬金術・オカルティズム・宗教色の濃い用語を散りばめた歌詞が、稀代の歌い手が描き出す物語が、全て、この陰鬱で崇高な空気を生み出す為に奉仕している。そんな風にも思える作風。
現代的なエッジがありながら(特にGt)、不思議と楽曲から立ち上ってくるオーラは中世ヨーロッパのそれ。しかも、その時代のアンダーグラウンド、ダークサイド的匂いが濃厚。…とか言いつつ、管理人はその時代からタイム・スリップしてきた人間ではないので適当ぶっこいてますが、そう描写したくなる魔術がここにはある。錬金術というテーマを辿ると、欧州から中近東、そしてエジプトへと至るわけで、そういう雰囲気を感じさせるメロディもありますね。
リフ偏重でもソロ偏重でもないツインGtの妙技は、派手なハモりがあるわけでもないのに琴線に触れまくってきますし、生っぽいDrと有機的なアンサンブルが生み出すヘヴィネスはテクノロジーとは無縁のもの。いや、無縁じゃなかろうがそう言いたくなるアナログ感がありますね。楽曲とメンバー自身の演奏によってもたらされたヘヴィさ。

メロディックだけどキャッチーじゃない。この微妙なニュアンスがお分かりいただけるでしょうか? まぁボーナス・トラックの⑪Return Of The Kingは比較的キャッチーだけど。
全編スロー~ミドルテンポの楽曲で締められているにも関わらず、ダレとは全く無縁。むしろ聴き易い。そして奥深い。これは驚異的なことですよ。その曲調と音の感触は、錬金術というテーマにベストマッチして知的好奇心を刺激する。
主役であるBruceは、自ら拘り抜いたこの題材を具現化するべく、ドラマティック極まりない歌唱を披露しています。Bruceって高音域でも声量が衰えることなく歌い上げられる名手ですが、その音域が連続するような歌メロだと抑揚に乏しくなる傾向があります。メイデンの「A MATTER OF LIFE AND DEATH」(2006)なんて特にね(好きな作品ではありますけど)。でも本作の歌メロは、その“声張り上げっぱなし”の手前で踏み止まっており、正に理想的。

1曲1曲を抜き出してもそれぞれ素晴らしい出来ですが、アルバムの中で各曲がお互いを高めあうという理想的な化学反応が起きていますね。特に⑤Book Of Thel⑥Gates Of Urizen⑦Jerusalemと続く、アルバム中盤の雄弁さと構成力が光っていると思います。前半、ヘヴィな①King In Crimson、メランコリックな②Chemical Wedding、サビメロが頭から離れない③Tower、攻撃的な④Killing Floorと様々な曲調で翻弄された後に、厳かで70年代HRやプログレッシヴ・ロックを思わせる明暗のコントロールが見事な中盤に辿り着くと、実に沁みること…。
メロパワ風のサビとウネリまくるヘヴィ・リフを違和感なく合体させた⑧Trumpets Of Jericho、オケが劇的に盛り上げるヘヴィ・バラード調の名曲⑩The Alchemistを配置した後半もまったくもって抜かりなし。終曲であるのラストに、タイトル・トラックのテーマメロに回帰するという仕掛けが悶絶モノですわ。

因みに、所々で、(ジャケにも使われている)ウィリアム・ブレイクの詩を朗読してムードを高めているのは、あのArthur Brownです。某Mのオーソン・ウェルズや某Rのクリストファー・リーのように、延々と喋くり散らさないのは好印象かつ効果的ですね(笑)


再度断言しておきましょう。超名盤!
錬金術は掘り下げてゆくとめちゃめちゃ面白いテーマですしね。

【お気に入り】
全編連続悶絶攻撃だが、特に、
⑩The Alchemist
⑧Trumpets Of Jericho
⑦Jerusalem
②Chemical Wedding
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COMMENT 6

グラハムボネ太郎  2015, 04. 24 [Fri] 11:20

おっと気になる

超名盤とまで言われるとそれは個人の趣味嗜好ではない世界なんでとっても気になります
ブルースのソロは買っては売るだったから多分このアルバムは買ってもいないかも

まずはYouTubeしてみます

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フライヤーズポンタ  2015, 04. 25 [Sat] 12:50

同感!!

こんにちは。
まったくもってして、同感です。
ソロってなかなか手を出しづらいものなんですけど、聴いて損はないアルバムであることは確かですよね。
ブルースには早くガンを克服してメイデンの最新作を作り上げてほしいものです。

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ヒゲ・スカイウォーカー  2015, 04. 26 [Sun] 21:27

グラハムボネ太郎さん、

個人的趣味も多分に入ってるかもしれませんが…(汗)
暗くて重いのがイケる人ならば、大いにアリな作風だと思います。あとは、1曲1曲聴く人よりアルバム単位で楽しむ人向けかもしれないですね。

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ヒゲ・スカイウォーカー  2015, 04. 26 [Sun] 21:32

フライヤーズポンタさん、

コレ発売当時はメイデン復帰なんて思いもよらなかったですしね。次作を出した時も、本家より好意的に受け取る人も結構いた感じですし。

治療の経過も良いようですし、新譜と来日を期待してます。震災で中止になって以来、ご無沙汰ですので…。

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koma  2015, 04. 29 [Wed] 03:32

なるほど

3月に参加したAN○RAセッションの打ち上げの席でどういう流れだったかは全く覚えていないのですが突然
「komaさん、ブルース・ディッキンソンのソロは聴いたことあります?」
と聞かれたんですよ。

「興味はあるんですけど、なかなか聴けてないですねぇ」
と答えると
「イイですから、ぜひ聴いてみてください」
と強烈にプッシュされまして…。

「では、どのアルバムがオススメですのん?」
と尋ねたら、私と話をしていた人だけでなく、周りの席にいた人達(おそらく合計4人ぐらい)が、声を合わせて
「Chemical Wedding!」
と言うもんだからそりゃもうビックリしましたわw

…と言いながらもまだ聴いてないんですけどねww
ヒゲさんのブログ読んで↑のエピソードを思い出させてもらったので今度こそ聴いてみます!

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ヒゲ・スカイウォーカー  2015, 04. 29 [Wed] 20:39

komaさん、

口々にこのアルバムを推すとは、なんて濃いメンツのセッションでしょうか(笑)。勿論、私もイチオシなんですが、同時に暗い作品でもありますのでね。
聴かれましたら、是非々々感想なんぞ呟いてみてくださいませ。

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