ジャック・カーリイ『ブラッド・ブラザー』

ジャックカーリイ_ブラッドブラザー
ジャック・カーリイ『ブラッド・ブラザー』 (三角和代 訳、文春文庫)

ジャック・カーリイのカーソン・ライダー・シリーズの4作目『ブラッド・ブラザー』を読みました。
3作目『毒蛇の園』の感想は → コチラ。

きわめて知的で魅力的な青年ジェレミー。僕の兄にして連続殺人犯。彼が施設を脱走してニューヨークに潜伏、殺人を犯したという。連続する惨殺事件。ジェレミーがひそかに進行させる犯罪計画の真の目的とは? 強烈なサスペンスに巧妙な騙しと細密な伏線を仕込んだ才人カーリイの最高傑作。ラスト1ページまで真相はわからない。

このシリーズの切り札を出してきた感のある本作、その目論見は大成功。めちゃんこ面白い。


以下、人によっては「ネタバレ」と感じる部分があると思いますので、ご注意ください。
 ↓

カーリイ、巧いなぁ。どんでん返しを含むミステリ部分も、伏線の配置の仕方も、人物造形も、人間ドラマも。スタイリッシュ過ぎて優等生臭さが鼻につくかもしれませんが。

シリーズものに特有と言ってもいいマンネリ。本作にはそれを回避する為の道具立てが色々揃ってます。
例を挙げると、
・既知の人物を殺人事件の被害者として登場させるショッキングな冒頭。
・主人公を“ホーム”ではなく“アウェイ”に配置。
・“ホーム”にいる相棒との二点並列捜査。
・登場人物の過去をほじくり出す。
・シリーズのキーマン(=ジェレミー)活躍しまくりング。

シリーズを順番に読んでいることで、この「道具立て」がさらに効いてきます。とても面白い。読者を驚かせようという意図を感じるシリーズおよび作家ですが、例えばジェフリー・ディーヴァーほどそのやり方がこれ見よがしではないので、その分作者のテクニックの巧みさがジワジワと理解されてきて(遅効)、同時に飽きが来るのも遅い気がします。まだまだイケるよこのシリーズ。

主人公カーソンが自分の過去(とジェレミーとの関係)をNYPDの面々に知られないようにやきもきする場面、兄への思いを窺わせる独白等も本作ならではの読みどころですね。
僕の呼吸はひとつ残らずジェレミーの贈り物だ。
と考えつつも、
もしジェレミーが死ねば、僕はついに自由になれる。
カーソンのこの葛藤。

ミステリ的な仕掛けとしては、
①事件および過去の真相が明らかになる第一どんでん返し。
②事件の構図(仕掛け人の意図)が明らかになる第二どんでん返し。

この二段構えが非常に効果的。また、①と②の間に配置された手に汗握るテロル阻止の攻防がまたスリリングで素晴らしいですね。②を含むエピローグは一見(一読)爽やかな読後感に思えますが、こりゃあ恐ろしいですよ。そしてその事態に対しどうすることもできない諦念も滲んでいて秀逸。
あとがきも素敵でした。

本作で第1章を締めくくった感もあるような。
次作以降の展開も楽しみですね。
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