KAMIJO「SYMPHONY OF THE VAMPIRE」


KAMIJO「SYMPHONY OF THE VAMPIRE」 (2014)

活動休止したヴィジュアル系メタル・バンド、Versaillesの親分兼司令塔ことKAMIJO兄貴の(ミニ)アルバム。アルバム1枚で1つの協奏曲というか交響曲というかソタナというか(違いが分かんねぇw)、そういう感じの構成です(タイトルに「SYMPHONY」と謳っているから交響曲でいいのかな)。

フランス国王・ルイ17世をテーマにしたコンセプト作です。ルイ17世といえば、マリー・アントワネットの子供ですね。
マリー・アントワネット!
オスカル!
アンドレ!
宝塚!
薔薇はッ!
美しくッ!
散るゥ!
(キリッ


…ということで(?)まんま『ベルばら』、Versaillesの世界でございます。
背景となるストーリーは、、、
フランス革命が勃発、国王一家は修道院タンプル塔に監禁されてしまう。父と母の処刑後もルイ17世は監禁されたまま、わずか10歳でその生涯を閉じることになりますが、その死には疑問符が付きまとい、「生存説」なんてものまでが浮上する始末だったようです。詳しく知りたい方ははウィキペディってでもいただければ幸いです。

さて、そのルイ17世の死の謎の存在。
そこでKAMIJO兄貴は、
「ルイ17世は吸血鬼になって生き延びていたんだよッ!!」

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という、MMRや年末恒例『ビー○たけしの超常現象スペシャル』もビックリのトンデモ説を持ち出して架空のストーリーを組み立てます。

そのストーリーについては収録曲の流れに沿って軽く後述することにして、まずは音楽的な面に着目すると、ソロ・デビュー・シングルから比べるとかなりメタル度は上がっていますね。シングルを聴いてKAMIJO兄貴のアレンジセンスには「さすがだなぁ」と唸らされ、「帰ってきた!」という事実は嬉しかったものの、メロディと曲調自体にはそれほど興奮を覚えなかったんですね。
しかし、今作ハ違ウッ!まずレコーディング(とMVへの)参加メンバーが凄い。Gtは摩天楼オペラのAnzi、BaはGACKTVAMPS等数多のアーティストのサポートを務めるJu-ken、DrはDEAD ENDのサポートを務める山崎慶という布陣。単純に“ヘヴィメタル”を想起させる人選ではないですが、HR/HMに近い、そして薔薇の末裔的な音を期待させるには十二分な感じ。
全編ロマンティックなKAMIJOワールド全開なメロディに覆われていて、もうウハウハ(?)です。全体的に疾走感に溢れた作風ですが、一曲丸々メロスピというよりは起伏のある曲展開で物語を綴る、という印象。それがここぞというところでのフックあるクサメロをより効果的に目立たせています。まるで飽きることなく一気に聴かせるドラマ性と統一感がありますし、(Voだけでなく)器楽的聴き処も有り。傑作だと思いますね。
疾走パートにおける山崎のDrは、メタル的視点から言うとあんまり合っているとは思えないんですけど、その多彩さとドタバタ感によって、曲調と物語が醸し出す切迫感に拍車を掛けてるとは言えるかも。


①第一楽章「Presto」
いきなりのキラー・チューン。この曲のテーマ・メロディは素晴らしいですね。まんまVersaillesのようなアップテンポのシンフォニック・クサメロにガッツポーズもの。
一連の物語のあらすじを紹介するような歌詞で、「生き延びたのか?蘇生したのか?あるいは不死の身を得たのか?」というラインにヴァンパイアというテーマがよく表れています。


②第二楽章「Sacrifice of Allegro」
前曲からの勢いをそのまま、いや、さらに増して畳みかける攻撃的な曲。Drが生み出す切迫感が凄いですね。テクニカルな演奏はこの曲の大きな聴き処ですが、胸を締め付けるような哀しきサビメロも絶品。
幽閉されたルイ17世の様子、母親の死の描写とともに、最後には影武者の存在を匂わせる一節が。
「仕組まれた身代わりに誰も気づけない」


③第三楽章「Royal Tercet」
場面展開の為の小曲。描き出すのは、幽閉される前のかつての暮らしと、密かにタンプル塔から連れ出されたルイ17世の姿。
BARKSによるKAMIJO兄貴へのインタビューによると、この第三楽章と次の第四楽章との間に、吸血鬼(=ヴァンパイア)としての目覚めを描いたシングル曲・Louis ~艶血のラヴィアンローズ~が位置するそうです。


④第四楽章「Dying-Table」
さぁさぁ、狩りの時間ですよ。
兄貴ノリノリです。オイオイ系コーラスまで飛び出すインダストリアル風味のあるメタルコアっぽい曲で、ルイ17世に乗り移ったかの如く吸血鬼を演じておられます。なんせ、「待たせたな 時間だ お戯れだ!」ですからね。何故かヴァンパイアとして目覚めてしまった主人公、血ィ吸いまくり飲みまくり状態のようです。
この曲が持つ他の曲とはちょっとベクトルをズラしたアグレッションと意外性、そして中盤への配置がアルバム全体の中で良いスパイスになっており、効果的。次曲への繋ぎも実に鮮やか。


⑤第五楽章「Sonata」
溢れ出るメロディと共に名曲キターッ!
これぞKAMIJO、これぞシンフォニック・クサメタルというべき曲で、サビ裏のピアノ乱舞がマジたまらんス。アコギ~エレキとバトンタッチされるGtソロと裏で弾むピアノもヤヴァい。
そしてそのサビの歌詞を括目せよ。
「愛し方もまだ知らない耽美主義者だから」
「殺し方もよく知らない耽美主義者だから」
なッ!何、この兄貴しか歌詞に用いなさそうな「耽美主義者」って単語は!?っていうか普通の曲じゃ使えないっしょ?
これは名フレーズ出ましたね。クる。今年クるね、耽美主義者(笑)。LUNA SEAANUBIS「殺された時の数だけ 美しくなれるなら」という歌詞を見た時も驚きましたが、これまたビックリですわ。もうWikipediaの「耽美主義」の項目にKAMIJO兄貴の記述を追加しなきゃいけませんね←

この曲、物語上の転換点となる最重要パートでもあります。冒頭で「ルイ17世は吸血鬼」という“大切なお知らせ”をぶちかました兄貴ですが、ここでさらにやってくれちゃいます。
それは……、、、
「実はベートーヴェンも吸血鬼だったんだよッ!!」

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という第2の爆弾投下です。
へ?なんでここでいきなりベートーヴェン?という唐突さはわきへ置いといてください。すっごく気になるかもしれませんが、とりあえず先に進むのです。
このベートーヴェン(Ludwig van Beethoven)、ルイ17世とは別の「もう一人のルイ(Ludwig)」として登場。「偉大すぎる友の教え 彼はすでにその耳を」の歌詞からも分かるように、主人公であるルイ17世とは昵懇の仲のようです。これは驚きです。「俺はフランス生まれ、クラシック育ち。血ィ吸う奴は大体友達」ってことでしょうか?ベートーヴェンはドイツ人ですけど。

この“マブダチ”ベートーヴェン先生の言葉がきっかけで、物語、およびルイ17世の運命は転換点を迎えます。
「密猟に明け暮れた 欲望に狂った私は その手が奏でゆく旋律に救われたのだ」
「さぁ友よ この狩りが終わったら 教えてくれ その力の秘密を」
「吸わないとでも言うのか? 愛した人間の為に」
「彼は言った『美しい旋律は血の代わりとなる』」

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ここで3度目の「なんだってェーー!!」である。

どうやら吸血鬼は血を吸わなくても、自分自身で「美しい旋律」を作っていれば、それを糧にしてお腹いっぱい、生きていけるらしい。
自家発電である。
光合成である。
(意味不明)
エコである。(意味不明)
じゃあ「美しくない旋律」しか生み出せなかったら吸血鬼に逆戻りな(ry


⑥第六楽章「満月のアダージョ」
この曲での語り手は“マブダチ”ベートーヴェン先生。
「無防備な愛に 傾倒した代償 もうこの耳は聞こえない」
「見ておけ これが人間を愛してしまった者の愚かな末路さ」
吸血鬼は人間を愛してはイカンと語り、さらにこう続ける。
「今全て話そう」
「そしてこの手で鉄格子の中の眠る少年を抱いた」
「あなたは私が連れ出し 未来へ繋いだ希望 最後の光」
「やがて時代を超えあなたが 王になる日の為に 全て捧げよう」
タンプル塔からルイ17世を連れ出したのは自分である、と。そしてここにきて、“王”の意味合いが変化していることにも着目ですね。当初は勿論フランス国王としての“王”でしたが、ここで「音楽を以って統治する、吸血鬼の王国における“王”」のような意味になってきていると思います。
私が買った初回限定盤Bには、この「SYMPHONY OF THE VAMPIRE」のフルMVが収録されたDVDが付いていましたが、ちょうどこの曲のシーンではベートーヴェンから演奏を習うルイ17世(=KAMIJO)の姿が確認できます。

耽美な感触のバラード系楽曲ですが、ヘヴィさは堅持。オケの響きも重いですね。ラストは兄貴の見事な歌い上げから~疾走する次曲へと繋ぎます。


⑦第七楽章「Throne」
ストーリー的にも音楽的にもハイライト。大団円。最高。

「犠牲となった 影武者の死を」
「死んだ身代わりや友の為 ついに私は決めた」
「Ah 綺麗な旋律が 体の隅々に流れ行く」
「それが血の代わりとなるなら 『これ』をくれてやろう」

“これ”というのはルイ17世自身の心臓。フランス王家の墓があるサン=ドニ大聖堂に眠る、ルイ17世のものと断定された心臓のミイラ。その存在にまつわるミステリ的な“解決”までしっかり提示して、こりゃ「聴く耽美主義推理小説」(?)ですな。

音楽的には、①第一楽章「Presto」と歌詞&メロディの両面で呼応したドラマティックかつクッサクサなシンフォ・メタルで、最後の最後に最大のキラー曲の登場ですわ。
切迫感を煽りまくる複雑なパターンのDr、包まれるシンフォニー~Gtソロへの流れ、自分の声とキャラを知り尽くしたKAMIJO兄貴が高らかに歌い上げる珠玉のメロディ、そしてラストにクライマックスとなる峻烈なエンドGtソロ。完璧やんけ。
「遺されたロザリオ 王冠なき王の為に」
「夢を見ていた 少年を待つ未来は 悲しいだけではない」
「彼は雄偉な王となった」
では単なる状況説明にしか思えなかった歌詞が、ここまでストーリーを追ってきたことにより「あぁ、こういう経緯でこうなったのか」と腑に落ち、そのことが音楽的な感動を助長するという正のスパイラル。この威力は凄いですね。


音楽的側面にのみ着目しても素晴らしい作品ですが、歌詞との噛み合いがさらに上のレベルへと持ち上げる傑作。Versaillesのどの作品にも増して、一枚の作品としてのまとまりは良好です。
2014年のMy年間ベストには間違いなく食い込んでくるでしょう。

【お気に入り】
KAMIJO兄貴が1枚で1曲って言ってるから、Symphony Of The Vampire1曲丸々がお気に入りとなりますが、敢えて挙げると、
⑦第七楽章「Throne」
⑤第五楽章「Sonata」


前述のフルMVは、アニキに視線が堪らん30分をどっぷり味わえ、かつ曲の世界観が映像とともにすんなり入ってきて最高ですね。ゲスト演奏陣もカコイイ。
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COMMENT 8

matrock  2015, 03. 11 [Wed] 13:26

傑作でしたね

ご無沙汰しております。
この作品では友人がピアノ弾いていたので(友人はPVでもすこーし映ってます)、かなり思い入れが強いんですよ。この作品の後いろいろあってボスとの契約解除というかクビというかになってしまって・・・・・なのでHEARTは若干色合いが違うと思っています。
メロディックメタルにピアノが絶妙のアレンジで組み込まれて、サイジェラ的な様式美に溢れてると思うんですよね。それだけに続かなかったことが残念です。この路線で突き進んでほしかったなと


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ヒゲ・スカイウォーカー  2015, 03. 12 [Thu] 23:20

matrockさん、お久しぶりです。

コメントありがとうございます!
この作品はトータリティに溢れた傑作でした。年間ベスト記事でも選びましたし。
御友人とは…なんと!確かに仰る通り、「HEART」は少し色合いが変わりましたね。あの尺で、かつ本作の作風で行ったら、若干濃過ぎたかもしれない、とは思いますが。

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matrock  2016, 06. 30 [Thu] 13:36

お久しぶりです。Ancient Mythの新しいのが、バンパイア路線の音まっしぐらですよー。歌の好き嫌いはあるかもしれませんが。サウンドはもう。


解説にはそのあたりになった理由が少しわかると思いますが

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ヒゲ・スカイウォーカー  2016, 07. 02 [Sat] 11:22

matrockさん、

Ancient Mythは以前から「雰囲気好き・Vo苦手」の典型例です(笑)
ヴァージョンが3種類あって、欧州でもリリースされるようですね。

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matrock  2016, 07. 06 [Wed] 21:33

「雰囲気好き・Vo苦手」全くもって同意です(苦笑)

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ヒゲ・スカイウォーカー  2016, 07. 07 [Thu] 20:31

matrockさん、

あ、matrockさんもダメ派なんですね(笑)
実力者であるGtとKeyがチェンジしたようで。

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matrock  2016, 07. 12 [Tue] 21:47

そのチェンジして新加入するkeyがsymphony of the vampireでピアノやってたり、Volcanoでエンジニア兼キーボードやってたりの彼なんですよ

そういえばピートクラッセンも屍忌蛇さんのカヴァーアルバムで歌ってましたよね。

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ヒゲ・スカイウォーカー  2016, 07. 14 [Thu] 20:07

matrockさん、

おー、池田泰智!
どうやらVersaillesの時から関わっているようですね。

屍忌蛇周りも含め、どうもジャパメタ界隈には疎いです。
興味薄いのかもしれません(笑)

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