京極夏彦『ルー=ガルー 忌避すべき狼』

京極夏彦_ルー=ガルー
京極夏彦『ルー=ガルー 忌避すべき狼』 (講談社文庫、上・下)

京極夏彦の『ルー=ガルー 忌避すべき狼』を読みました。私が読んだのは分冊文庫版。装丁がメチャメチャかっこいい。

私、京極夏彦が大好きです。
京極夏彦といえば、京極堂の百鬼夜行シリーズや巷説百物語シリーズ等、時代小説のように舞台設定が過去のものが多いわけですが、本作の舞台は近未来です。期待とちょっとの不安を覚えながら読みましたが、まんま京極節。安心しました。そして安定したクオリティです。ただ、百鬼夜行シリーズのような緻密に構築された謎を丹念に時に大胆に解きほぐす、といった趣向は薄めです。

舞台設定をごく簡単に列記すると、
国民一人一人携帯端末を持つ、動物を食料にせず肉魚の代わりに合成食材、人はネットワーク越しにコミュニケーションをとり現実の接触はまれ、……。
私が説明すると実に面白くなさそうだが(笑)、実際舞台設定を説明する部分もなかなか面白い。

以下、人によっては「ネタバレ」と感じる部分があると思いますので、ご注意ください。
 ↓
主要な登場人物はほとんど女性です。少女。
リアル接触の極端に少ない社会での連続殺人事件が一応の謎になるのですが、それは置いといて(置いとくな)、この少女達の活躍が読んでて面白い。また、彼女らを担当するカウンセラーと事件を捜査する刑事が登場して、この二人の20世紀を引きずった価値観と少女らの価値観との違いが示されるとこも読みどころ。

自分を天才と言い放つ少女・美緒のセリフが本作の雰囲気をよく表しています。
「あたしがよく見る大昔のムーヴィーはさ、大抵そうだぞ。誰かのために闘ってさ、死んだりするとみんな褒めるのな。バカ。しかも無謀な闘いの方が褒められるの。無謀なら無謀なほどイイの。軍隊相手にひとりで闘うとか。単なる馬鹿。勝ち目なし。大バカ。んで、また勝つのな」
最高だ。
厳しく過酷な状況下で、このあっけらかんとした物言い。
そんなこと言ってた美緒が、友人達を助けに「待たせたね」とド派手に(無謀に!)登場するシーンがかっこいいことよ。

そして美緒とは正反対の歩未のセリフ、
「祈れば何とかなるとか、願えば叶うとか、思えば通じるとか、信じればできるとか、僕は思わないから。だから-心配する暇があるなら何かする」
「人の心はこうやって箱に入ってる。外から何が入ってるかは想像するしかない。互いに想像し合って、それで通じたような気になってるだけだ」

この世界観と登場人物の考え方等々……、何かに似てると思ったら、打海文三の『応化戦争期シリーズ』(←超弩級ウルトラ悶絶傑作)だ。あれに似てる。と思う。
登場人物が魅力的なので何を書いても面白いという正のスパイラル。

とにかく少女達の会話と活躍にワクワクドキドキしながら読むのが楽しかったです。
喜ばしいことに続編も出ており、今から読むのが楽しみ(もう買ってあるもんね)!
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