Theatre of Tragedy「Aegis」


Theatre of Tragedy「Aegis」 (1998)

2010年に解散してしまったノルウェーのゴシックメタル・バンド、その3rd。現LEAVES' EYESのLiv Kristine Espenaes Krull(Vo)が2003年まで在籍、勿論このアルバムでも歌っています。

「ゴシックメタル」というジャンルにおける代表的なバンドですが、私が“ゴシック系”として認識して聴いた初めての作品だったと記憶しています。
後に山ほど登場する豪華なシンフォニック・サウンドに彩られた音を得意とするバンド群やノリノリ・ゴシック系と比べると、彼らの音楽は派手さに欠けます。淡々として沈み込むようなアンサンブルが冷たい感触を湛えているからですね。でもこれが気持ち良い。これこそが「正調のゴシックメタル」という感覚です。とは言え、今作から中心人物であるRaymond Istvàn Rohonyi(Vo)の歌唱がデスヴォイスからディープな囁き声/普通声にスイッチしており、メタリックさは後退してはいるんですが。それでも私の中ではこの作品が「ゴシックメタル」を聴く時の比較対象として常にある感じですね。

傑作だと思います。今振り返ると、いきなり凄いアルバムからこのジャンルに入ってしまったな、とも思います。
楽器陣はまったく勢いに頼らないでドヨヨ~ンと演奏し、男性Voが呟くように抑え気味に歌い、そこに人間離れしたような神秘的な女性Voが降りてくる。美の演出方法にこういうのがあるのかと、“目から鱗”状態で驚いた覚えがあります。
決して人付き合いが良いような音ではありませんが、本作が彼らのキャリアの中では特に聴き易いアルバムであることも幸いしました。語弊があるかもしれませんが、前作までの作風と比べると意外なほどノリがいい。勿論、ノリノリ・ゴシック系の「ノリ」とはまったく種類が異なりますが、歌詞カードを見ながら聴いていてもドコ歌ってるか分からなかった前作から一気に洗練されて、ヴォーカルを中心に据えた「歌モノ」としての魅力が前面に出てきたことが大きいですね。メリハリが効いてる。メインの女性Voが歌っている横で同時に男声Voがまったく違うラインをポエトリーリーディングの如く囁くという手法も新鮮に映りました。

しかし、Liv Kristine(今とは別人のようなルックス)の声は素晴らしい。「エンジェリック・ヴォイス」とも形容されますが、歌唱力うんぬん以前の時点でその“声”の響きによって勝利は確定しているようなもんです。歌メロがクッキリしてきたことで、その声の魅力を完全に味わえるのがまた良いですね。
曲名、歌詞の世界観まで統一されたイメージも美味しい、隙の無い一枚。


日本盤のライナーノーツはBURRN!誌の前田記者が書いてるんですが、その冒頭の独白がまた凄い。本作の音楽的な説明よりもそっちの方が長いし。いきなり「どうして、どうして俺をこんな気持ちにさせるんだ!?」ですから(笑)
私のブログの妄想っぷりなんてその足元にも及ばないと確信できます(笑)

【お気に入り】
⑦Poppaea
コケティッシュな美旋律乱舞。
①Cassandra
オープナーであるこの曲のインパクトは凄かった。今聴くと特別この曲が秀でているわけではないけれど。
⑤Siren
⑥Venus
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COMMENT 4

kazz_asai  2013, 11. 07 [Thu] 21:27

蠱惑の囁き

彼らが活躍していた頃…もう15年近く前なのですね…私もゴシックメタルにだいぶ傾倒していました。
とにかくLiv嬢のVoが絶品です。
ただゴシックとしての耽美的感触という要素からすると、どうしても2ndを推してしまいますが、歌曲としての側面から見ればこの3rdの方が勝っていると言えますね。
いずれにしても1stも含め、ゴシックメタルの理想型を樹立したバンドであることは疑いを容れないでしょう。

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ヒゲ・スカイウォーカー  2013, 11. 10 [Sun] 21:29

kazz_asaiさん、

浅井さんがゴシックにハマっていたとはちと意外。でもブラックとかメロデスとかの欧州暗黒系サウンドに向かうと自然とゴシックには触れるのだから、そう考えると意外じゃないかも(笑)

確かに今でも一番有名なのは2ndのような気もしますね。ジャケのせいかもしれませんけど(苦笑)

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山崎パンイチ夫  2013, 11. 14 [Thu] 13:17

ぐはっ。個人的には懐かしいですTheatre of Tragedy。何をトチ狂ったか昔に1st買って聴いてました。記事の作品とは違うんで多少の違いは有るのかな?と思いつつ、彼らの表現する世界に、"淡々として沈み込む様な…"っていう管理人様の文面そのままに、スラッシュ好きな私でも気持ち良く浸れてたなあと記憶してます。だからっつってもゴシックを主食とする事もなく今に至りますが。記事内の"人付き合いが良いような音ではない"って表現が秀逸だな~。
それと、ノリノリのゴシック、ってのがこの世にはあるんですね。知らんかった。

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ヒゲ・スカイウォーカー  2013, 11. 14 [Thu] 20:35

山崎パンイチ夫さん、

コレの方が1stよりだいぶキャッチーですね。

ノリノリゴシックは例えば、TO/DIE/FORとかLULLACRYとかそんな感じですね。ゴシックが出自だからそう表現してるだけで、実質はメランコリックなHRやハードポップだったりしますが(笑)

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