ジョー・R・ランズデール『ボトムズ』

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ジョー・R・ランズデール『ボトムズ』 (北野寿美枝 訳、ハヤカワ・ミステリ文庫)

ジョー・R・ランズデールの『ボトムズ』を読みました。

80歳を過ぎた今、70年前の夏の出来事を思い出す―11歳のぼくは暗い森に迷い込んだ。そこで出会ったのは伝説の怪物“ゴート・マン”。必死に逃げて河岸に辿りついたけれど、そこにも悪夢の光景が。体じゅうを切り裂かれた、黒人女性の全裸死体が木にぶらさがっていたんだ。ぼくは親には黙って殺人鬼の正体を調べようとするけど…恐怖と立ち向かう少年の日々を描き出す、アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞受賞作。

重厚。


以下、人によっては「ネタバレ」と感じる部分があると思いますので、ご注意ください。
 ↓
シリーズ物の一作である『罪深き誘惑のマンボ』は同じく黒人差別を扱った傑作でしたが、同時に軽妙な感触もある作風でした。本作で描かれる黒人差別はそれと比べるともっと容赦ないものになっています。舞台は1930年代のテキサス東部。地域設定としても差別の強かった場所なのかな?KKKによる魔女狩り的な、連続殺人犯決めつけリンチのシーンがあったりしますからね。

差別問題を絡めながらも、ミステリ部分としては女性連続殺人遺棄事件の行方を主人公の少年ハリーが妹のトムと「おばあちゃん」と一緒に追っていくという筋。
保安官も務めるハリーの父はその捜査の過程で挫折を味わい、無気力人間になってしまいます。その結果急激に荒んでゆく家族を救うために、ハリーは犯人と目される“ゴート・マン”の恐怖に立ち向かってゆく、そういう少年の成長小説の要素が非常に強いです。実際、本作のミステリ的側面である種明かし(フーダニット)はそれほど驚きのあるものではありませんし。
伝説上の怪物として伝わる“ゴート・マン”という要素を取り入れたことにより、作品に幻想的な雰囲気が添加されていることも特筆すべき。“ゴート・マン”、スティーヴン・キングの小説のよく出てくる“ブギーマン”に似た感じでしょうか?

しかし、無慈悲な作風だ。後日談であるエピローグを読めば、あっけらかんとした楽観とは無縁なことが分かる。少年の日常と非日常を瑞々しい筆致で描きだし、その時代その場所の空気が行間から湧き出てくるような力作。
ちと、長いけどね。
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