大沢在昌『魔物』

大沢在昌_魔物
大沢在昌『魔物』 (角川文庫、上・下)

大沢在昌の『魔物』を読みました。

北海道の小樽、地元やくざとロシアマフィアの麻薬取引の現場から逃走した運び屋は、銃撃を受けながらも血を流すこともなく、さらには素手で警官数人を殺害したという。麻薬取締官の大塚は、ロシア人ホステス・ジャンナの手を借りながら犯人の行方を追う。今、100年にわたり封印されていたイコンから魔物が放たれる!
みたいな話。

以下、人によっては「ネタバレ」と感じる部分があると思いますので、ご注意ください。
 ↓
かなりつまんねぇ。


つまんない理由を挙げてみると、
 ①大沢在昌にスーパーナチュラルな要素は合わない。
 ②ご都合主義
 ③やっつけ仕事

まず①について、麻取の大塚が捜査をする過程はいつもの大沢節ハードボイルドで面白いんですが、そこに「ロシアの教会に100年封印されていた肖像画」とか「突風と共にどこからともなく現れる超人的な力を持つロシア人」とかが入ってくると、どうにも居心地が悪いです。個人的にはSF的設定の『天使の牙』も受け付けなかったし。さらに大塚の上司として、新宿鮫シリーズ『無間人形』に登場した麻薬取締官・塔下(とうげ)が登場するんですが、こりゃいかんでしょ。新宿鮫ファンからすれば喜ぶべき要素なのかもしれませんが、これは舞台設定が同じ(日本)ということでしょ?将来、塔下が鮫島と再会して、「鮫島さん、お久しぶりです。いやぁ、先日変な事件がありましてね。肖像画から魔物が出てきてナニがアレしちゃったんですよ。信じられますぅ?」とか言っちゃう可能性がある訳です。いや、実際は大沢氏はそんなこと書かないから有り得ないんでしょうが、読者は(というか私は)大沢ワールドの統一性が損なわれる、そんないい加減な舞台設定は許せないんです。物語の後半、舞台が北海道から東京に移るんだし。

②について、“魔物”事件の解決と大塚の憎しみとの決別とを同時に一網打尽!みたいな流れが都合良過ぎる。かつ容易に予想出来てしまう。

③について、本作は元々新聞に連載していたものらしいですが、単行本にする際、および文庫化する際に校正してないのか?同じこと(例えば、北海道より東京には憎しみを抱いている人が遙かに多い、というくだり)を何回も何回も繰り返し過ぎです。おまけに、人気のない漫画が途中で打ち切られるかの如く、ラスト数ページで一気にストーリーを収束させているのは大問題。例えは悪いが、まるで夜逃げのよう。何の感慨も抱けないラストシーンも残念なら大塚とジャンナの恋愛模様も中途半端で残念。ロシアからはるばる来た司祭は役立たず。


こりゃ大沢在昌の汚点ですわ。残念無念。
大好きな作家なだけに厳しい感想を書いちゃいました。
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