近藤史恵『エデン』

近藤史恵_エデン
近藤史恵『エデン』 (新潮文庫)

自転車ロードレースを描いた近藤史恵の小説、『エデン』を読みました。大藪春彦賞を受賞、日本推理作家協会賞候補作にもなった『サクリファイス』の続編になります。

あれから三年――。白石誓は唯一の日本人選手として世界最高峰の舞台、ツール・ド・フランスに挑む。しかし、スポンサー獲得を巡る駆け引きで監督と対立。競合チームの若きエースにまつわる黒い噂に動揺を隠せない。そして、友情が新たな惨劇を招く……。目指すゴールは「楽園」なのか? 前作『サクリファイス』を上回る興奮と感動、熱い想いが疾走する3000kmの人間ドラマ!

『サクリファイス』はスポーツ小説とミステリをウルトラC級の強引さで合体してしまった傑作で、私も「おもしれぇぇぇぇええええ!!」と非常の驚いた覚えがありますが、続編である本作もまた「おもしれぇぇぇぇええええ!!」


以下、人によっては「ネタバレ」と感じる部分があると思いますので、ご注意ください。
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『サクリファイス』での結末の“呪い”は本作でも主人公・白石誓をしっかりと絡め取っています。といってもどんなラストだったかいまいち正確には覚えてないんですけど。ただ、こりゃ凄いと思った記憶だけ残ってます(汗)。
で、そのようなトリッキーなテクは今回は使わず(使えず?)、より真っ当なスポーツ小説、自動車ロードレースを描いた小説になっています。それでつまらなくなっているかというとまるでそんなことはなく、物語の舞台が世界最高峰の自転車レース、ツール・ド・フランスということもあって、勝負の行方を興味深く追ってゆくことが出来ます。自転車レースそのものの魅力、コースの説明、各チームの戦略等々、説明クサくないくサラリと、でも引き込まれる描写で紹介してくれる作者の筆力は相当なものだと思いますねぇ。

主人公であり、物語の語り部でもある白石がレースではサポート役であり、かつ日本人という一種の異邦人であること、また謙虚な性格ゆえに冷静に周囲を把握している事等々、そんなファクターがあることで、この小説はレースのテクニカル面だけでなく、選手のメンタル面まで自然に描いてゆけます。
さらにはスポーツ以外のことにも通じるような含蓄のある言葉までさりげなく配置するという作者の文章、読みやすい上に読ませるなぁ。

しかし、この作者は残酷だ。前作の結末といい、今作といい。ただ両作に通じるのは、そこにしっかりと“救済”“希望”があることよね。
傑作。普段小説を読まない人にもサクッと読める手軽さと、物語を読む楽しさ、その両方を備えてます。オススメ(のシリーズ)。


勝てるかどうかはわからない。だが、はじめて知った。そのわからないことが希望なのだと。
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