高嶋哲夫『ミッドナイトイーグル』

高嶋哲夫_ミッドナイトイーグル
高嶋哲夫『ミッドナイトイーグル』 (文春文庫)

高嶋哲夫の『ミッドナイトイーグル』を読みました。因みに映画は見ていません。

米空軍のステルス爆撃機が北アルプスに墜落! その搭載物をめぐって男たちの死闘が始まった。報道カメラマン西崎勇次もその渦中に……。かたや週刊誌記者の松永慶子は、横田基地に侵入・逃走した北朝鮮の工作員に接触する。吹雪の北アルプスと東京。二つの場所で、男と女は絆を取り戻せるのか。渾身の国際謀略サスペンス。

なかなか面白い。


以下、人によっては「ネタバレ」と感じる部分があると思いますので、ご注意ください。
 ↓

面白い、
が、この種の小説の類型からまっっったくはみ出してない、安全パイな作品とも感じました。逆に、定石とも言える設定/手法/描写を重ねに重ねているからこその、この読みやすさなのかもしれません。例を挙げると、

・苦い思い出のある男女(双方、仕事に生きる系)
・2人の再生物語という側面
・過酷な自然環境(未曽有の吹雪の中の山行)
・アクシデントが起こって装備/武器が乏しくなる
・メカ類、特殊技術の説明がなかなか細かい(正確かどうかは別にして)
・謎の複数陣営が乱れる現場(誰が味方なの?)
・事件に対するジャーナリズムと政府の対応
・連れてこられた先でチョー偉い人と会見
・身近な人が実は特殊能力持っててビックリ
・困った時に助けてくれる人、登場
・タイムリミットの設定(時限爆弾)
・泣かせにかかるラスト

この極端さのまるでないところとご都合主義をどう捉えるかで評価は変わってきそうですね。私は、「体力は既に限界を超えている」みたいなのが序盤過ぎてスリルのペース配分ができてないなとは思いつつも、時限装置解除のくだりまではまずまず楽しんで読めました(自衛官・伍島、良い)。ですが、それ以降はかなり厳しかったです。
それまでと変わらず、西崎側(=天狗原)と慶子側(=首相官邸)を交互に描写しますが、ここで個々の葛藤をまるで描けていない。数少ない主要人物の内面をもっと抉ってほしいのに、事実描写のみを淡々と同じペースで積み重ねる群像形式で描いてるんだよなぁ、特に天狗原側。西崎と伍島と落合(と中国軍)しかいないのに3名にスポットを当てていないので、落合が死ぬ場面で何の感慨も浮かんでこないし、アノ重要な意思決定も淡々と行われているように感じられる。しかし、夫が死にかけている慶子に対して軽口を叩く編集長・宮田ってどうなのよ?

というわけで、こりゃ作者の力量不足でしょ。勿体ない。
破綻していたって強烈な求心力のある作品の方が私は好きですね。


と、読み終わって感想書いてから読んだ本の記録をつけてたら、驚いたことにこの本以前にも読んだことあったわ。それまでまるで気付かなかったです。はたして自分が耄碌しているのか、前回読んだ時にあまりにも何も心に残らなかったのか、どちらだ?(苦笑)
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