イアン・ランキン『黒と青』

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イアン・ランキン『黒と青』 (延原泰子 訳、ハヤカワ文庫、上・下)

イアン・ランキンのリーバス・シリーズの8作目、『黒と青』を読みました。表紙画、カコイイ。
案の定、『ミレニアム2』を読む気にはならず、別の本へ手が伸びたのですよ…。

椅子にくくりつけられ頭部にポリ袋をかぶせられて建物から墜落した男の死体が発見された。男は北海油田で働く塗装工。その死には犯罪組織の関与が疑われた。男はなぜ殺されなければならなかったのか? リーバスは事件の背景を探るために、油田の最寄りの都市である北海沿岸のアバディーンへと赴いた。捜査を開始するリーバス。やがて彼は、深入りはするなといわんばかりの、歯を折られるまでに手荒い警告を受けるが……

塗装工殺害事件の前から、リーバスはある事件を追っていた。1960年代にスコットランドを震撼させた伝説の絞殺魔バイブル・ジョンを思わせる連続殺人事件だ。ついに逮捕されることのなかった犯人が帰ってきたのか、あるいは模倣犯か? 折りしもリーバスがむかし担当した事件で、警察の内部調査が開始されることになる。四面楚歌の状況下、果たしてリーバスは……英国推理作家協会賞ゴールド・ダガー賞受賞の傑作警察小説


このシリーズは『影と陰』のみ読んだことがあり、非常に面白かった記憶があるのですが、本作は如何に…。


以下、人によっては「ネタバレ」と感じる部分があると思いますので、ご注意ください。
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このリーバス警部、警察組織の一員ではあるものの一匹狼なので、必然的に「警察小説」としての色は薄まり、私立探偵モノのハードボイルドっぽい雰囲気に包まれます。エジンバラから管轄外の遠き北海油田にまで足を伸ばしちゃうくらいの自由さ。

このシリーズ、かっこよくてスタイリッシュなハードボイルドじゃなくて、その反対、綺麗じゃないハードボイルドですね。「綺麗じゃない」って言っても悪徳警官モノってわけじゃないのよね。欲望の赴くまま、ってだけで。でも本作でのリーバスは酒を飲みたくって飲みたくってしょうがないんだけど我慢するような場面もあって、ちょっと禁欲的かな?
リ-バス警部の人物造形がステレオタイプなハードボイルド主人公ではない点がイコールこのシリーズの魅力に直結しているような気もします。筋が通っているようでいて流されやすい面もあり、執拗に事件を追っかけるかと思いきや怠惰だったり、なんだか人間臭くって嫌いになれない。

過去の伝説的な殺人鬼とその模倣犯、マフィア組織と地方警察の汚職、ページから滲み出てくるようなスコットランドの鬱屈した雰囲気…。読み応え抜群の大作です。ただ、ちょっと長過ぎるように思います。あと登場人物の多さと主要人物以外の印象の残らなさは気になりましたね。途中で「コイツ、どこのどいつだっけ?」「なんでこの筋で事件追ってるんだっけ?」ってなったり。

『影と陰』の方が面白かったですね。
このシリーズ、まるで順番に従って読んでないんですけど(日本で刊行されてないものも多い)、7作目の『血の流れるままに』は買ってあるので期待します。
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