伊坂幸太郎『モダンタイムス』

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伊坂幸太郎『モダンタイムス』 (講談社文庫、上・下)

伊坂幸太郎の『モダンタイムス』を読みました。先日感想をアップした『魔王』の続編にあたる作品ということで、連続読み。

恐妻家のシステムエンジニア・渡辺拓海が請け負った仕事は、ある出会い系サイトの仕様変更だった。けれどもそのプログラムには不明な点が多く、発注元すら分からない。そんな中、プロジェクトメンバーの上司や同僚のもとを次々に不幸が襲う。彼らは皆、ある複数のキーワードを同時に検索していたのだった。

5年前の惨事――播磨崎中学校銃乱射事件。奇跡の英雄・永嶋丈は、いまや国会議員として権力を手中にしていた。謎めいた検索ワードは、あの事件の真相を探れと仄めかしているのか? 追手はすぐそこまで……大きなシステムに覆われた社会で、幸せを掴むには――問いかけと愉しさの詰まった傑作エンターテイメント!


うん。相変わらず面白いけど文句もちょっと、ある。


以下、人によっては「ネタバレ」と感じる部分があると思いますので、ご注意ください。
 ↓

賛否両論ある作品のようですし、もしかしたら「否」が多いのかな…?
伊坂作品の特徴に「リズム感」があると思うのですが、その「リズム感」がちょっと他の作品とは異なるような気もしますね。

ページ・ターナー、つまり…ドキドキワクワク引き付ける展開を以って読者がページをめくる手を止めさせないというのがありますが、それよりも伊坂作品は独特のリズム感の冴えを以って意識せずともトントン拍子に話が進んでいく、そんな印象の方が強いような気がします。「あ、ここでこのフレーズ持ってくるんだ!」「このシーンでそのセリフ言わせるんだ!」という軽い驚きとニヤリとさせられる仕掛けを次々に用意してストーリーを転がしていく。

そんな、驚異的にリズミックな感覚が本作はちと乏しいような気もします。元は漫画誌上での連載だったということも関係しているかもしれません。その長さと、やや行き当たりばったり感とご都合主義を感じるところが原因となって得意のリズム感が少し損なわれているかもしれません。

まぁそれでも、勧善懲悪の分かり易い構図ではなく、国家が存続する為に重要なのは「システム=蟻のコロニー=“そういうふうになっている”こと」であるという事を噛み砕いて、さらにユーモアを交えて描写しているのは見事だし、やはり作者の書く登場人物の魅力は抗いがたいので「伊坂ファンキャラ萌え派」である私にとっては本作もまた面白いですね。
特に、主人公の友人で(作者と同じ音を持つ)井坂好太郎のキャラ立ちっぷりは素晴らしい。
井坂好太郎という人間の発言は、窮地に立たされた国会議員の答弁よりも心がこもっておらず、しかも、美女の発する、「わたし、もてないんですよ。そんなことを言ってくれるのは、あなたくらいです」という台詞よりも当てにならない。

長尺でやや間延びしている感もありながら、登場人物の言動を追いながらパラパラめくってみると、「あぁこんな面白い場面もあった」と楽しい発見も多々有り。いつか再読しよう。


因みに本作の内容は『魔王』(と『呼吸』)の数十年後の話にあたり、一部登場人物とアノ特殊能力に共通点があります。
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