宮部みゆき『模倣犯』

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宮部みゆき『模倣犯』 (新潮文庫、1~5)

今更ながら宮部みゆきの『模倣犯』を読みました。買ってあったけど積んだままでした。藤田新策氏によるカバー画の雰囲気が抜群。氏の絵のタッチは大好き。

墨田区・大川公園で若い女性の右腕とハンドバッグが発見された。やがてバッグの持主は、三ヵ月前に失踪した古川鞠子と判明するが、「犯人」は「右腕は鞠子のものじゃない」という電話をテレビ局にかけたうえ、鞠子の祖父・有馬義男にも接触をはかった。ほどなく鞠子は白骨死体となって見つかった――。未曾有の連続誘拐殺人事件を重層的に描いた現代ミステリの金字塔、いよいよ開幕!

鞠子の遺体が発見されたのは、「犯人」がHBSテレビに通報したからだった。自らの犯行を誇るような異常な手口に、日本国中は騒然とする。墨東署では合同特捜本部を設置し、前科者リストを洗っていた。一方、ルポライターの前畑滋子は、右腕の第一発見者であり、家族を惨殺された過去を負う高校生・塚田真一を追い掛けはじめた――。事件は周囲の者たちを巻込みながら暗転していく。

群馬県の山道から練馬ナンバーの車が転落炎上。二人の若い男が死亡し、トランクから変死体が見つかった。死亡したのは、栗橋浩美と高井和明。二人は幼なじみだった。この若者たちが真犯人なのか、全国の注目が集まった。家宅捜索の結果、栗橋の部屋から右腕の欠けた遺骨が発見され、臨時ニュースは「容疑者判明」を伝えた――。だが、本当に「犯人」はこの二人で、事件は終結したのだろうか?

特捜本部は栗橋・高井を犯人と認める記者会見を開き、前畑滋子は事件のルポを雑誌に連載しはじめた。今や最大の焦点は、二人が女性たちを拉致監禁し殺害したアジトの発見にあった。そんな折、高井の妹・由美子は滋子に会って、「兄さんは無実です」と訴えた。さらに、二人の同級生・網川浩一がマスコミに登場、由美子の後見人として注目を集めた――。終結したはずの事件が、再び動き出す。

真犯人Xは生きている――。網川は、高井は栗橋の共犯者ではなく、むしろ巻き込まれた被害者だと主張して、「栗橋主犯・高井従犯」説に拠る滋子に反論し、一躍マスコミの寵児となった。由美子はそんな網川に精神的に依存し、兄の無実を信じ共闘していたが、その希望が潰えた時、身を投げた――。真犯人は一体誰なのか? あらゆる邪悪な欲望を映し出した犯罪劇、深い余韻を残して遂に閉幕!


やっぱ、凄いね。


以下、人によっては「ネタバレ」と感じる部分があると思いますので、ご注意ください。
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宮部みゆきってどうも肌に合わないというか、あまり熱心に読んでないんですよねー。『火車』と『龍は眠る』はめっぽう面白かったんですが、「なんじゃこりゃ金返せ!」みたいに好きになれない作品もあり、しばらく食わず嫌い状態に。

ですが、メタラーたるもの「超大作」って要素には弱いに決まってます(?)し、このダークな装丁に魅かれないわけがあろうかって具合で、この『模倣犯』は読んでみたかった作品でした。因みに同作品の映画は見てません。←職場の先輩がめっちゃコキ下ろしてたな(笑)

長い、とっても長い、
…がその長さがちゃんと生きてる作品。
フーダニットは勿論、ホワイダニットに関しても正直どうでもよく、主眼は事件の余波を描くことのようにも感じます。非日常や恐怖が目の前に立ち現れた時に、市井の人々はどう感じ、どう考え、どう行動するのか。
スティーヴン・キング的な要素も感じますね。キングの信奉者はここ日本では何故か女性作家に多いような気もしてますが(恩田陸とか小野不由美とか)、宮部みゆきもそうでしょう。特にこの『模倣犯』ではそれを感じました。キングの、恐怖を媒介にして人間そのものを描いているところ。ピース=網川の異常さに主要登場人物が徐々に気付いてゆくくだりなんて正にそんな感じだし。
そのキングよりも細やかかで丁寧に感じる人間描写も◎。何気ないエピソード/シーンの積み重ねが沁みる。娘を殺された豆腐屋のオヤジ・有馬義男に向かって常連客の主婦が「負けちゃ駄目よ」って言う場面、フリーライター・前畑滋子が夫から離縁を言い渡される場面のやりきれなさ、刑事・武上が一家殺人事件の被害者・塚田真一に掛ける言葉等々…。
特に、かつて真一を受け止めてくれた有馬を今度は反対に真一が抱きしめ返すラストは白眉。ここまでお涙頂戴に陥らず被害者に(それだけじゃないが)目を向けた作品はなかなか無いのでは?
傑作。


しかし4月はずっとコレ読んでたなぁ。読む速度が相当落ちててちょい焦る。
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