今野敏『初陣 -隠蔽捜査3.5-』

今野敏_初陣
今野敏『初陣 -隠蔽捜査3.5-』 (新潮文庫)

今野敏の『初陣 -隠蔽捜査3.5-』を読みました。竜崎伸也警視長の隠蔽捜査シリーズのスピンオフもの。短編集。

警視庁刑事部長を務めるキャリア、伊丹俊太郎。彼が壁にぶつかったとき頼りにするのは、幼なじみで同期の竜崎伸也だ。原理原則を貫く男が愛想なく告げる一言が、いつも伊丹を救ってくれる。ある日、誤認逮捕が起きたという報に接した伊丹は、困難な状況を打開するため、大森署署長の竜崎に意見を求める(「冤罪」)。『隠蔽捜査』シリーズをさらに深く味わえる、スピン・オフ短篇集。

今野敏の作品の中では、この『隠蔽捜査シリーズ』が一番好きだなぁ。


以下、人によっては「ネタバレ」と感じる部分があると思いますので、ご注意ください。
 ↓

全8編、これめっちゃ面白い!元々好きだったシリーズがますます好きになる一冊ですね。

主人公の刑事部長・伊丹俊太郎ですが、一読すると小者にさえ感じられます。まぁそれが逆に竜崎の存在感と性格を際立たせるための道具となっているのですが、注意して読むとそこかしこにキャリアたる切れ味の鋭さも垣間見れて安心(←伊丹ファン)。(竜崎とは異なる)彼なりの美学や悩みも吐露されていて、それも興味深いですね。また、竜崎と伊丹のほかにも、御馴染みの面々が出てきてニヤリとさせてくれます。

各編の基本的な流れは以下の通り。
 ①伊丹のところに難題が持ち込まれる。
 ②伊丹、大いに困り果てる。
 ③伊丹「竜崎、助けてー」
 ④竜崎、(無愛想に)何らかの解決策を提示する。
 ⑤これにて一件落着!

非ッ常ーに乱暴ですが、こんな感じです。
この流れ!この予定調和!正に時代劇だ。「竜崎=印籠」「竜崎=桜吹雪」「竜崎=余の顔、見忘れたか!?」ですよ(笑)。だが、それがイイ。

伊丹が竜崎に電話を掛けるシーンのやりとりはもはや漫才。
 伊「元気でやってるか?」
 竜「忙しいんだ。用がないならまたにしてくれ。切るぞ」

 伊「おい、ちゃんと聞いているのか?」
 竜「聞いている」

 竜「何を悩んでいるのか分からない」


時系列に並んだ本作品8編を読むことより、同時に長編3作の裏側も辿ることが出来るという仕掛けも素晴らしく、特に『疑心 -隠蔽捜査3-』の舞台裏を描いた「試練」は読み応え抜群。また、伊丹と竜崎の小学校時代の“いじめ”についても触れた「静観」が“幼なじみで同期”という(不思議な)二人の関係を爽やかに描いていて、素晴らしい幕引きになっています。
私は短編はあまり好きではない方ですが、本作は素晴らしかったですね。長編たる本編を補完するという意味でも、かつ単独の作品としても秀逸な短編が揃っている一冊だと思います。
スポンサーサイト

COMMENT 0