快進のICHIGEKI「快進のICHIGEKI」

快進のichigeki_快進のichigeki
快進のICHIGEKI「快進のICHIGEKI」 (2011)

バンド自ら『-江戸前四重奏・band of edo style-』を標榜する快進のICHIGEKIの1stフルアルバム。マスタリングはなんとあのTed Jensenだ。有名アーティストのマスタリングはほとんど手掛けてるんじゃないかと錯覚したくなるほど仕事しまくリングなあのTed Jensenだ。いちインディーズバンドである彼らにどんなコネや金や経緯があったのやら…?

上手く言えないし何の説明にもなってないような気もしますが、快進のICHIGEKIの音楽に触れた時の感覚は、石田衣良の小説『池袋ウエストゲートパークシリーズ』を読んだ時の感覚に近いものがありました。一見チャラいけど真摯な登場人物、粗暴な様でいて繊細、表裏一体玉石混交のごった煮感覚、攻撃性、古いものから新しいものが生まれてくる時の「節目」の感覚等々…。何だかリズム感が似てる。小説の方はやや薄っぺらい内容に感じましたが、ICHIGEKIの方はむしろ「厚い」。そして、熱い。暑苦しい(笑)

その「厚い」音楽性は一言で言うなら、ミクスチャーロックでしょうか?いかがわしい和製英語ですが、一般的に使われる「ラップを取り入れたようなロック」の事じゃなくて、言葉そのまんまの意味での「ミクスチャー」した「ロック」。ミックスの原料は、HR/HM、ハードコア、J-POP、歌謡曲、ヴィジュアル系等々。HR/HMの要素だけに着目しても、70~80年代の伝統的なHRからデスメタルやメタルコアまで含む広範囲なもの。その様々な要素をミックスした上でまとめあげる能力はかなり高い。
いや、そもそもメンバーには“異なるもの”と“異なるもの”を意図的にまとめてる感覚は無いのかもしれません。例えば、若いメタルファンの多くがメタルを聴き始めた時には、既にデスヴォイスがごく自然にそこにあったと思います。それと同じような感覚で、「異なるジャンルのごった煮」が常態ならば、出てくる音も自然とそうなっちゃうかも、という感じ。「バンドやろうぜ」ってなった時に、意図的に一つのジャンルを選ぶわけでなく、(自分達が影響を受けた)好きなことを全部放り込んじゃったらこうなっちゃった、みたいな。その音楽性がボーダーレスなだけに面白いですが、その反面、どのシーンで活動するかってのはなかなか難しいかも、とも思ったり。
因みに、「江戸前」ってほどに“和”の音楽要素が感じられるわけではないのですが、歌詞を含めて楽曲から、そしてバンド全体からそこはかとなく立ち上ってくるのは“和”のイメージと香り、ってのが不思議。

ICHIGEKIの音楽で印象に残るのは、リズムですね。とにかくリズミック。ライブだと余計にその事が目立ちますが、リズム隊の潤(Ba)と佑一(Dr)は、その安定感と躍動感が素晴らしい。重さを保ちながらも跳ねるプレイが光っていると思います。でもリズムを司っているその2人だけじゃなくて、久雄(Gt)のプレイとコータ(Vo)の歌唱全てが一丸となって、バンド全体として“リズミック”な感じ。
ギター大好きっ子のワタクシは久雄のプレイが一番気になるわけですが、バンドイメージに比べるとそのギター・プレイは非常にオーセンティック。リフとソロ、どちらかがより得意というんじゃなくて両方のバランスが良いかな。
コータのヴォーカルは様々な“声”を使い分けするスタイルであるものの、例えば2種類の声の落差を際立たせるようなものではなく、ハードコアっぽいシャウト/グロゥル/朗々とした歌い上げ/早口詰め込みVo/囁き声等々をシームレスに繋げるスタイルであるように思えます。その「繋げ方」が実に自然で無理がないところが特徴であり、武器でもある。一つ一つの歌唱法については第一人者ではないですが、様々な歌唱法を咀嚼し自分のモノにしたそのスタイルは素晴らしいと思いますね。それが訓練の賜物なのか才能なのか分かりませんが。彼の声自体はさほど好みではない私も、彼のVoの“自由自在っぷり”には魅かれます。あと、彼の声は歌詞が聞き取りやすい。独特の言葉選びが特徴のICHIGEKIの音楽ですから、ソコ重要ね。

以下に気になる曲をカキカキ。
②音座芸夢はPVにもなっている彼らの代名詞と言うべき曲です。私はとりわけこの曲が気に入っているというわけじゃないのですが(苦笑)、彼らの音楽性の大部分が1曲の中にほぼ網羅されていて、かつ各メンバーの活躍が均等、という点で名刺代わりには相応しいのではないでしょうか。キャッチーだしね。ライブで非常に盛り上がります。
①絶体絶命の愛の結晶はオープニングに相応しい、ヘヴィで引っ掛かりのあるトリッキーなリフを持つ曲。リズム隊主導による爆発力、ピロピロ挿入されるGt、ライブを想起させる熱きVoパフォーマンス。
⑤どんでん返スキャンダルは明るくメロディが迸る激キャッチーな佳曲ですが、とにかく歌詞の乗せ方・ハマり方が気持ちいい!リズムと一体となった、軽妙で小気味良いフレーズの連続に完敗。特に「パパ&ママ&japan悪いコでゴメンね。」の部分のノリ。これ、歌えるのなかなか凄いよ。本作で一番好きな曲。
⑦感動スナイパーは畳み掛けるリフと次々と吐き出される言葉が緊迫感を高める、本作一シリアスかつメタリックでスラッシーな曲。中間部のうねるパートの挿入も効果的で、そこからGtソロへの流れも秀逸です。
ストリングスが入ったバラードの⑫乳母車。素直で真っ直ぐな歌メロと「祈り」の詩、繊細さかつダイナミックなコータの歌唱が素晴らしいです。丁寧に音を紡ぐ前半、泣きの後半というドラマを感じさせるGtソロも◎。


上に挙げたのは主に歌メロが(も)気に入っている曲ですが、上記の曲以外でもヘヴィな③メガギガテラタリラ⑧江戸っ恋Honey Bで、Gtソロがいきなり正統的でメロディアスに切り込んできてハッとさせられたりするから油断ならない。
私の嗜好から外れるハードコア色強めな曲や、歌メロや歌唱がツボにはまらない曲もありますが、総じてバンドの地力が感じられる作品ですね。

②音座芸夢のPV → コチラ。

【お気に入り】
⑤どんでん返スキャンダル
⑫乳母車
⑦感動スナイパー
①絶体絶命の愛の結晶
②音座芸夢
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