HELLOWEEN「STRAIGHT OUT OF HELL」

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HELLOWEEN「STRAIGHT OUT OF HELL」 (2013)

オリジナル・アルバムとしては14枚目となる、HELLOWEENの新作。ジャケの色使い、好き。
先日、初聴後にやや興奮した記事を書きましたが(“やや”じゃねぇよ/笑)、その時から繰り返し聴いた今日まで感想は変わってないです。また、その時には敢えて書かなかった(些細な)マイナス面もそのままの印象です。

デビュー以降、多少の浮き沈みはあれどHELLOWEENがメタル・シーンの(ほぼ)トップ・アーティストとして活躍できているのはどうしてかと言ったら、たまたま時流に上手く乗れたからでも、ライブで物凄いパフォーマンスをするからでもなく、単純に「曲の良さ」、これに尽きると思います。「曲の良さ」というのも人によって様々でしょうが、やはり「分かりやすく、印象に残るメロディの存在」かなと私は考えます。この「分かりやすい」というは「親しみやすい」と言い替えてもよいですね。そして、その良曲を「量産」できること。「量産」出来なければ、ただの一発屋だったり“才能の枯渇”とか言われちゃうわけで、この量産能力こそ最大の重要事項です。
またHELLOWEENは、メロディック・パワー/スピードメタルの始祖のように捉えられるバンドでありながら、その実それら一連のフォロワー群よりもポップな資質を持ち、幅広い曲調を得意とするアーティストであると思います。

親しみやすく印象に残るメロディを持つ、
バラエティ豊かな良曲を、
安定して供給する能力


何だかスタンドの能力(by JoJo)だか企業理念のようにも感じられる文句ですが、まとめると上記の内容こそが私の考える「HELLOWEENの強み」です。そして、その「HELLOWEENの強み」が最近の作品の中で最も高いレベルで具現化されてるのが本作「STRAIGHT OUT OF HELL」だと思うんですよあたしゃあ!!


「HELLOWEEN=ヴァイキー(Micahel Weikath)」という呪縛(と敢えて言いますが)に未だ囚われている人もいるかと思います。しかしずっと彼らの音楽を追いかけている人ならご理解いただけると思いますが、新譜制作集団としての今のHELLOWEENは、Andi Deris(Vo)を中心としたソングライター・チームです。特に「BETTER THAN RAW」以降はその傾向が顕著かなと感じます。勿論、バスケット・ボールで言うところの3ポイントシュートを(最も)期待されているのは、今もってヴァイキーですが。
元々Andiとヴァイキーは非常に優れたソングライターですが、本作の充実ぶりを考えるに、Markus Grosskopf(Ba)とSascha Gerstner(Gt)の作曲能力が(急にではなく徐々に)上がってきて、HELLOWEENというチーム全体の作曲能力の均一化・底上げが為されたのが大きいと感じますね。MarkusとSaschaがAndiとヴァイキーのレベルまで追いつきつつあるというか…。以前も書きましたが、バンドの一体感としては現在のラインナップが最高だと思ってますので、そのバンドの良好なムードがストレートに表出した作品かな、と。楽曲の隅々まで意識が行き届いている、非常によく練られた作品だと思います。

「HELLOWEENらしさ」という点から言うと、本作の(音楽的な)特徴は、ポジティヴで疾走感に富んでいてバラエティ豊かで、ってことになると思います。ただし、疾走感は高いですが全てが全て疾走しているのではなく、ツーバスで走りっぱなしな曲は少なめです。リズムチェンジとそれがもたらす展開が気持ちいいし、飽きさせない。バンドの卓越したアレンジ能力によって、各曲が最も輝くような装いに仕上げられているかのようです。

①Nabataea → PV。
Andi作、7分に及ぶ本作一長尺の曲。アイデア豊富なパーツパーツが淀みなく、でもフックに溢れた展開をもって進行します。強靭な演奏がリードする中盤から後半にかけてのドラマティックな流れ、そして様々な声を使い分けるAndiのパフォーマンスが素晴らしい。
②World Of War
Sascha作。これぞ南瓜たるイントロのツインリードの勇壮な響きでガッチリハート鷲掴み(死語?)のメロスピ調の曲。テンポを落としたモダンな感触のヴァース~ブリッジの流れがあることで、疾走一辺倒にならず、同時にアクセルをグッと踏み込んだかのようなサビのスピード感を相対的に印象付けています。間奏の超高速ツインリードに突入する直前のテンポダウンのアレンジも効果的。
③Live Now!
AndiとSaschaの共作。Andiらしさ溢れるキャッチーな曲。弾けるポップさと同時にツボを得た演奏のズ太さも感じさせる。サビ裏のKeyが効いてますね。
④Far From The Stars
Markus作。80年代南瓜の雰囲気を現代に伝えるのが彼の役目か?明るくポジティヴ、Keeperな匂いも感じさせるメロパワ佳曲。この胸がときめくような疾走感こそHELLOWEENだなぁと感じ入ることしきり。
⑤Burning Sun
日本独自先行シングル曲。感想は→コチラ。アルバムの流れの中で聴くこの曲、非常にイイネ!
⑥Waiting for The Thunder
Andi作。ピアノの端正な響きが印象的な、これぞAndiな佳曲。As Long As I Fallと似たタイプかな。丁寧に紡ぐ情感豊かなGtソロも素晴らしい。
⑦Hold Me in Your Arms
Sascha作。Andiの低音囁き系Voの映えるバラード。前曲と共にこの2曲が“箸休め”の曲になっておらず、しっかりとアルバム中盤でメロウ/ソフトサイドとしてのメインディッシュたる魅力を放っている事が非常に重要で、アルバム全体の流れの中で非常に有効に働いていると思います。
⑧Wanna Be God
シングルで聴いた時はさっぱりその存在意義が分からなかったこの曲。しかしアルバムの中に配置される事で、次曲へのイントロダクションになると同時に、アルバム中盤での折り返し地点として機能、気分をリフレッシュして次曲以降を聴くことができます。
⑨Straight Out Of Hell
Markus作。南瓜らしい美旋律が爆発する名曲。こりゃ、新たなアンセムとなりうるんじゃないの?ていうか、なれ。
⑩Asshole
Sascha作。ケツノアナ。サビのリフレインがキャッチーなミドルテンポのグルーヴィな曲。ラスト、サビを繰り返すところでリズムが躍動し始めますが、それを引っ張って次曲に繋げたらなお面白かったかも。
⑪Years
ヴァイキー作。歌詞が、サビの後にさらに大サビが来る展開が、曲から放出されるオーラが、高らかに&強烈にヴァイキー節を主張している、全世界1億人のヴァイキー・ファン感涙の佳曲。だが……、冷静に聴くとそのムードの大半を担っているのはKeyのメロディであるようにも思えてきます。なんだかアレンジによって曲をこのレベルまで持ち上げてきたような…。ヴァイキー・キラーチューンたる曲の骨格を、Gtが担っていないことに少々寂しさを感じます。あと、ラスト、何でサビを繰り返さないのよ!?
⑫Make Fire Catch The Fly
Andi作。彼の器用なソングライティング能力が発揮された曲だと思います。他の作曲者が作らないタイプの“隙間曲”(埋め合わせの曲という意味ではない)をサラリと作ってくるというね…。コンパクトでダイレクト、モダンだけどクサいメロというバランスに長けた曲。この曲と次曲がこの位置にあることでアルバム終盤が畳み掛けるような構成になっており、非常に好印象。
⑬Church Breaks Down
Sascha作。イントロと間奏に教会チックな荘厳メロ&コーラスを配した、切迫感溢れるドラマティック・チューン。Saschaってこういう曲得意だよなぁ。
⑭No Eternity
10000セット限定のDELUXE EDITIONのみに収録のボーナス・トラック。Markus作。無骨なイントロからは想像できないほどメロディの素晴らしいメタル・チューン。ブリッジ~サビの流れはこのアルバムで最も“クサメタリック”なパートではないか?この曲がベスト・チューンとの声があっても全くおかしくない佳曲。
⑮Burning Sun(HAMMOND VERSION)
ボーナス・トラック。故Jon Lord(ex:DEEP PURPLE他)に捧げたというハモンド・オルガン大フィーチャーヴァージョン。かなり、オルガンっすよ。


良い曲だらけだよコレ!


個人的には間違いなく傑作ですが、本作の弱点は2点あると考えます。
1つ目は、アルバムは傑作だと思いますが、それぞれの収録曲が過去の同タイプの名曲群を越えてはいない事。名曲だらけのアルバムではなくて佳曲だらけのアルバムって感じかな。佳曲佳曲ばかり言ってますが、南瓜としては佳曲、他バンドならキラー・チューンって出来の曲ばかりですよ。南瓜なりのネ申曲が欲しかったなぁ…というのは贅沢極まりない本音。
2つ目は、ギタリスト2人のエゴがもっと欲しいかな、という事。間奏の構築美が足りないですね。「こう来るか!?」という意外性とフックを備えたギター・パートをもっとおくれよ。間奏パートが「Gerstner/Weikath/Gerstner/Weikath/both」とか表記されててほしいですね(笑)

上記のような文句はあります。しかし、それぞれの収録曲が互いを高め合い、その相乗効果が「こいつ凄ぇな!オラ、ワクワクすんぞ!」的な良質のムードでアルバムを包み込んでおり、その点において傑作。HELLOWEENというバンドのチームワークの勝利だ。
本作はAndi加入後の最高傑作だとは思いませんが、最も聴く回数の多いアルバムにはなるかもしれません。なんせ、繰り返し聴いてても飽きないし、楽しいよこれ。

【お気に入り】
ほとんど全部っす。敢えて挙げると、
⑨Straight Out Of Hell
⑥Waiting for The Thunder


因みに「Andiの歌唱が苦しそう」なんて事は弱点には数えてません。まぁ概ねいつもそうだし(苦笑)。それより今回はさほど素っ頓狂なヴォーカルは聴かれませんし、様々な歌唱法を操る表現力豊かなプラス面が目立つと思います。←Andiファン。

最後に、この記事全体に私の「南瓜大好きバイアス」がかかっていることをお知らせしておきます。
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COMMENT 6

kazz_asai  2013, 02. 06 [Wed] 00:36

会心の一撃

HELLOWEENを知悉しているヒゲスカさんでなくては書けないと思われる、委曲を尽くしたレビューと掌をさすような考察に感服いたしました。
正直なところ、私は「Rabbit Don't Come Easy」以降はそれほど彼らに熱中してはいませんでした。前作までにみられたヴァイキー作の「決め」となる曲を欠き、またウリ・カッシュの脱退は、アグレッシヴな面に関しても過去の作品に一歩を譲る結果に至ったというのがその主たる要因でした。
しかし本作がいかに近年の作品の中で充実しているか、これは誰も否定しないでしょう。何よりもましてサシャとマーカス作の曲の完成度の高さ、そしてアンディのいつもながらのヴァラエティ豊かな作品群には嘆賞の念を禁じ得ません。ただヴァイキー作品に関しては過去の名曲群に比べて生彩を欠くと思えるのが私にとっては唯一の瑕疵ですが、なんとマーカスがそれを補って余りある、良い意味でのヴァイキー的な力作を2曲も提示したのは本当に驚かされます。バンドとしての充実という視点からすれば、本作は「BETTER THAN LAW」以降最大の収穫と思われます。

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ピッペン  2013, 02. 06 [Wed] 22:16

素晴らしいアルバム

いや~、疾走曲もポップな曲もバラードもいいですよねぇ。
個人的には、"Waiting For The Thunder"、"World Of War"、"Make Fire Catch The Fly"、"Years"が大好きです。というか、本当に捨て曲なしで最高ですよね。新たな名盤を生んでくれてうれしい限りです。

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ヒゲ・スカイウォーカー  2013, 02. 07 [Thu] 01:00

kazz_asaiさん、

お褒めいただき大変恐縮ですが、私は詳しいというよりただHELLOWEENが大好きなだけで(笑)

現DrのDaniが「ドドドドド!」だとするとUliは「ドッカンドッカン!」って感じで迫力ありましたね。Daniはライブで観ると粒がそろっていて凄いです。

本作は、仰る通りヴァイキー曲が(彼にすると)それほど冴えている訳ではないのですが、アルバム一枚の充実度はかなりのものですね。

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ヒゲ・スカイウォーカー  2013, 02. 07 [Thu] 01:03

ピッペンさん、

お気に入りの曲を選ぶのにも迷ってしまうほど粒揃いのアルバムですよね。
お互い、カボチャ党の党員として嬉しい限りの新作ですね!

GAMMA RAYとのライブが非常に楽しみです。

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DD  2013, 02. 11 [Mon] 20:16

 佳曲が多い、といいますが、1,2曲だけ名曲があって後は駄曲ばかりな作品よりははるかにましだと思うのですが(同系統のバンドだって、そういうのを作るのに、バンドが終わるまでできないのも多いし)。

 6って、むしろAndiが以前いたPC69の「Talk To The Moon」「Shadows Are Falling」等の系統につながるような気がしますが(3rdの曲をあげなかったのは、Andiがもはや絶縁状態にあるA.Kofflerの粗いプレーで曲がおかしくなった、と見ていそうなため、Helloweenの「The Dark Ride」でも似たことが起きてますよね)。

 これは、前にもいいましたが、今後に期待を持たせるのに十分な作品を提示したな、と感じます。

 ライブが楽しみですね(もしかしたら、日ごとにセットを変えるかも、それだけの曲がありますから)。

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ヒゲ・スカイウォーカー  2013, 02. 12 [Tue] 19:35

DDさん、

これだけの傑作を仕上げてきたのですから、バンドのこの良い状態が長く続くことを祈っています。

DDさんの仰るようにライブでセットリスト変えてきてほしいんですよね。それを願って東京公演2日間のチケット取りましたー。

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