新堂冬樹『銀行籠城』

新堂冬樹_銀行籠城
新堂冬樹『銀行籠城』 (幻冬舎文庫)

新堂冬樹の『銀行籠城』を読みました。初めての新堂冬樹。

うだるような猛暑の七月十五日午後三時、あさがお銀行中野支店で惨劇は起こった。閉店寸前の行内に押し入った男が、男性客と案内係を次々に射殺。人質にとった行員と客を全裸にし、籠城した。何ら具体的な要求をせず、阿鼻叫喚の行内で残虐な行為を繰り返す男。その真の目的とは何なのか? 現代社会の歪みを描ききったクライムノベルの最高傑作!


以下、人によっては「ネタバレ」と感じる部分があると思いますので、ご注意ください。
 ↓
犯人・五十嵐が銀行に籠城して行員&客を支配下に置く序盤の流れと鬼畜な描写はなかなか面白く、見事な出来と言えます。

しかし、だ。
もう一人の主人公たる警察側の説得係、鷲尾警視が登場してからは不満点・疑問点が次々と浮かんでくる。
・鷲尾のメンタリティ、自分を責めすぎじゃね?
・なんでこの警察は異動が全然ないんだ?
・お手柄刑事が連日TVや雑誌を賑わせるという描写に無理がある。
・交渉係として鷲尾が来る事は五十嵐に予想できないでしょ。
・犯行の動機とその方法の結びつきが希薄。
等々…。

最大の不満点は作者の描写というか、語り口。こういうシチュエーションの時はこういう表現をするんだろ、と言わんばかりのステレオタイプな文章表現がどうも苦手。しかし、表現がありきたり・典型的だからこそ、サラリと読め、状況が分かりやすくて、その場面がスッと理解できるという面もあります。(警察の)キャリア組と叩き上げ組の対立というか立場の違いが分かりやすく浮き彫りになっているのは、その効用の一つ。あんまり褒めてませんが(苦笑)…。

良かった点は、
・ラストシーン、やや唐突に終わらせるのは余韻を残すようで私は好き。
・中西課長が素敵よ。

Web上の書評を見るとどうもこの作品、新堂冬樹の作品の中では“薄味”なようで…。別の作品を読んでからまた(この作家について)判断しようかなぁ…。
スポンサーサイト

COMMENT 2

sarusuberi666  2012, 10. 20 [Sat] 21:19

不満点・疑問点で仰られた通り、
設定がかなり強引ですよね。
新堂作品はそういうパターンが多いです。

それでも良作は面白いと思えるパワーが
あるんですけどね・・・。

確かに本作については薄味だと思います。
ただ、濃いのは人に勧めると人格を
疑われそうな内容のものが多いんでwww。


もし興味を持って頂けたなら
仕事柄もありますが金融業を描いた
「炎と氷」・「底なし沼」がオススメです。


Edit | Reply | 

ヒゲ・スカイウォーカー  2012, 10. 21 [Sun] 08:18

sarusuberi666さん、

どうもありがとうございました。
今作における“薄味”の部分が、新堂氏なりの暴力描写の部分が薄いのか、全体の構成とか完成度が薄味なのかによって変わってくるのですが(笑)、もし前者なら作品の為に必要な描写は私は“濃い”のでもイケると思います。後者なら歓迎。

挙げていただいた作品、「炎と氷」は面白そうですね。あとは「無間地獄」とかも代表作のよう。機会があったら試してみようと思います。CDと同じく本も積み本だらけなので(笑)、いつになるかわかりませんが…(汗)

Edit | Reply |