ケン・フォレット『大聖堂』

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ケン・フォレット『大聖堂』 (矢野浩三郎 訳、ソフトバンク文庫、上・中・下)

ケン・フォレットによる中世イングランドを舞台にした歴史小説、『大聖堂』を読みました。
続編も出てますけど、その最初のやつです。

いつかこの手で大聖堂を建てたい―果てしない夢を抱き、放浪を続ける建築職人のトム。やがて彼は、キングズブリッジ修道院分院長のフィリップと出会う。かつて隆盛を誇ったその大聖堂は、大掛かりな修復を必要としていた。折りしも、国王が逝去し、内乱の危機が! 十二世紀のイングランドを舞台に、幾多の人々が華麗に織りなす波瀾万丈、壮大な物語。

本院の修道院長となったフィリップに任命され、トムが大聖堂建立に着手する日がやってきた。トムの緻密な計画のもと、大聖堂の普請は着々と進んでいった。が、新しいシャーリング伯となったハムレイは、フィリップに敵対する司教と組み、執拗な嫌がらせを仕掛けてくる。自領に比べてキングズブリッジの繁栄に嫉妬したハムレイは、やがて町に焼き討ちを!

トムの死後、息子が引き継いだ大聖堂が建築途中で崩れ落ちた。焼失に崩壊……大聖堂は呪われているのか? 一方、職人の才能を開花させたトムの弟子のジャックは、ヨーロッパで修行しながら旅浪していた。新しい建築技術を取得した彼は、フィリップと大聖堂を救うべく町へ帰還、物語は感動のクライマックスへ。


ケン・フォレットのイメージって『針の眼』であり、スパイ小説/冒険小説なんですよね。それがこういう歴史小説も書くんだなぁ、と少々意外でした。
でも国内作家で、冒険小説の書き手が年齢を重ねてから歴史モノに行くってパターン、けっこうありましたね。


以下、人によっては「ネタバレ」と感じる部分があると思いますので、ご注意ください。
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これ、『渡る世間は鬼ばかり』ですよね?
渡鬼観たことないのでテキトーに言ってますけど。


建物を建てる話、しかもそれが上中下巻3冊の長さって、そんなの楽しみながら読めんのかよ?って半信半疑でした。でもそれは勘違いでした。良くも悪くも。
大聖堂建立や建築に関わる描写もありますけど、それは物語の本筋ではありません。大聖堂はこの物語を象徴するモチーフとして機能している感じですね。
メインディッシュは、政治ですよ、政治。権謀術数と金と人気取り。どうやって金を集めるか、どうやったら相手を出し抜けるか、そんなことばかりが何十年にもわたって何百ページにもわたって繰り広げられます。宣伝文句から想起されるロマン風味は無いわけじゃないけど、ごく薄口な印象です。

嫌がらせや妨害されてそれを乗り切ったらすぐに次の難題、みたいなそんな流れ。ヤな奴らがほんっっっとしつこいんですよ。かといって、ヤな奴らじゃない“主人公”側の登場人物が聖人君子かというとそんなこともない。
「正義」の側というか、『スターウォーズ』でいうところのジェダイ側の人物が、個人的にはあまり魅力的ではなかったです。フィリップもトムも、その他の人々も、俗っぽいというかふつー(と言っては怒られちゃうかもしれないけど)の人たちなんですよね。というか、作者の語り口がそう感じさせるんだ。

管理人としては、ここまでの長丁場におよぶ壮大なスケールの物語だと、もう少しヒーローっぽい要素がないと読み進めるのがキツかったです。キャラ萌えのパワーで押し切る部分がないとページをめくる手が止まっちゃう。
面白さとつまんなさの波が交互にやってきます。だから、読了を諦めることはしなかったけど、時間は掛かりました。
で、読み終わってから気づきましたけど、この物語の“主人公”って、フィリップやその周りの人たちじゃなくって、キングズブリッジを巡る歴史そのものだったのだなー、と。


ちなみに私、最初は人の名前を覚えるのが大変かなーと感じてました。先王ヘンリーとか弟のヘンリーとかヘンリー司教とか、それらが全部別人とか。戦乱の世なので、時代背景を把握するのに各陣営の説明があったりして、そこで色々と名前が出てきて。
でも、ほどなくして主要な登場人物は絞られていったので、その点は大丈夫でしたね。


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