SAVATAGE「GUTTER BALLET」


SAVATAGE「GUTTER BALLET」 (1989)

米国フロリダ産のドラマティックHMバンドの6thアルバム。出世作。前作からプロデューサーとしてPaul O'Neillが参加、続く本作にてそのケミストリーは劇的に発動&燃焼しました。

さて、SAVATAGEはアメリカのバンドらしからぬ湿ったメロディと劇的な曲展開を持つメタルという印象ですが、そのサウンドは冷徹というか「冷たい」感触がします。彼らの出身地のフロリダといえば「白い砂浜、ビキニのお姉さん、マイアミ・バイス」なわけですが(←勘違い)、そんな場所からどうしたらこんな冷たい印象のサウンドが生まれてくるのか、不思議でなりません。彼らの出すサウンドの「冷たい」印象を担っているのはピアノです。メタル界広しと言えども、ここまでピアノをメタル・サウンドに絶妙に絡ませてドラマを演出するのに長けているバンドは少ないのではないでしょうか。Jon Oliva(Vo&Piano)がプレイする、その凛として気品に満ちた音は絶品です。
また、ピアノの導入は音の温度を下げるだけでなく、都会的で知的な雰囲気を発する助けにもなっているようです。能天気なバンドが多いように感じるアメリカ(偏見か?)において、この偏差値の高さは特筆すべきかと。故Criss Oliva(Gt/Jonの弟)がプレイする鋭いギターもそれらの印象を強めています。

演奏の「冷たさ」「気品」に相反する要素として、Jonのヴォーカルが挙げられます。悪声と言ってもよい彼独特のクセのある声が、バンド・サウンドを丁度良いくらいに汚し、熱を帯びさせます。しかしそれも熱血!というほどではなく、「冷めた熱情」って感じでしょうか。矛盾しているような言い回しで、表現が難しいんですが…。この声で例えばスラッシュ・メタルとかプレイしてればハマったかもしれませんが、逆に面白くはないでしょうね。声質はともかく、Jon、表現力はあるので劇的メタル路線で大正解!

本作を彼らの最高傑作に選ぶ人がいるほど、収録曲は粒ぞろいです。名曲と言えるものからジワジワ癖になる曲までバラエティに富んでおり、私自身も手に取る機会は非常に多いですね。
ヘヴィでどこか粘着質でヘンテコなリフを持つ①Of Rage And Warが愛想の欠片もないオープニングで逆に嬉しくなってしまいます。とっつきにくいけどクセになる。そして「SAVATAGE=ピアノ」を決定付けた名曲②Gutter Ballet!(例えば)RHAPSODY等のド派手なシンフォニック・メタルに慣れている耳には一聴して衝撃の走る曲ではないかもしれません。しかし、ヴォーカルとピアノとバンド・サウンドと曲展開だけを以って、しかもベッタベタなクサメロではなく端正なメロディ使いで、ここまでの劇的チューンに仕上げてきたのは驚異的です。軟弱にならずしっかり“メタル”してるもんなぁ。
個人的に最高に好きなのは、Crissの泣きのプレイが冴えるインスト③Temptation Revelationに導かれて始まる④When The Crowds Are Goneです。もう15年程ひたすらこの曲の粗を探してきましたが、一向に見つかりません。完璧なんです。この曲に秘められた激情を前にして歌唱力があるとかないとか関係ないんです。それくらい激泣きな超名曲。歌詞及びメロディが、この曲からBelieve、そしてAlone You Breatheへと継承してゆくという、彼らのレパートリーの中でもひときわ重要な曲でもあります。
引っかかるリフと切迫感のあるヒステリックなVoが特徴の⑥She's In Love、ドラマティックな曲調の中を駆け巡るCrissのギターが美味しい⑦Hounds(特にエンド・ソロは白眉)、完全に欧州調の美しいメロディで疾走する(ギャロップする部分はメイデンっぽく、歌メロはヘン)⑧The Unholyと佳曲が続きます。このアルバムがクセになるのはここら辺の曲の出来が良いのが要因ですね。
本編を締めるバラード⑩Summer's Rainは儚く美しいメロディ・ラインを持つ曲ですが、サビの絶唱とギター・ソロの劇的さが印象に残ります。名曲。Jonはバラードでの表現力は特に素晴らしいよなぁ。自分の声の使い方が分かってるというか。ダメな人にはとことんダメな声質だと思いますが…。
⑨Mentally Yoursは、美しいピアノをバックに歌いだして「こ、この曲、名曲かも!?」と思わせておいて、ウネウネとヘヴィな演奏に展開、ヴォーカルも煮え切らないメロディをなぞる、アルバム一の怪曲。だが、何やらほっとけない(笑)

【お気に入り】
特に、
④When The Crowds Are Gone → PV。
②Gutter Ballet → PV。
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COMMENT 2

kazz_asai  2012, 08. 04 [Sat] 20:31

デビューアルバムの「Sirens」やミニ「Dungeons are Calling」は、スラッシュメタルとして宣伝されてましたね。が、今聴くとどこがスラッシュなの?という感じです。
それはともかくSAVATAGEといえばこのアルバムです。アレンジに頼らずドラマティックなメタルを創作したという点で殊勲に値するバンドです。

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ヒゲ・スカイウォーカー  2012, 08. 04 [Sat] 22:08

kazz_asaiさん、

私はPaul O'Neill期から彼らを聴き始めたので、それ以前の曲はベストに収録されているのしか聴いたことないんですよね。昔はパワーメタル系とスラッシュ系がごっちゃだったんでしょうか。METAL CHURCHとかVICIOUS RUMORSとか…。

私は次作が一番好きですが、本作はそれに次いでお気に入りです。このバンド、ピアノとかKeyのオーケストレーションは使えど、そのおかげでドラマティックなんじゃなくて、楽曲そのものの作りが既にドラマティックですよね。大好きなバンドです。

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