スティーヴン・キング『ダークタワーⅣ-1/2 鍵穴を吹き抜ける風』

スティーヴンキング_ダークタワー412_鍵穴を吹き抜ける風
スティーヴン・キング『ダークタワーⅣ-1/2 鍵穴を吹き抜ける風』 (風間賢二 訳、角川文庫)

スティーヴン・キングの『ダークタワー』シリーズの第4部・番外編(?)、『ダークタワーⅣ-1/2 鍵穴を吹き抜ける風』を読みました。
第1部『ガンスリンガー』の感想は → コチラ。
第2部『運命の三人』の感想は → コチラ。
第3部『荒地』の感想は → コチラ。
第4部『魔道師と水晶球』の感想は → コチラ。

デバリアの町で起きた連続惨殺事件。それは、変身能力を持つスキンマンの仕業ではないかと囁かれていた。父に命じられ、調査に赴いたローランドは、父親を目の前で殺され、記憶を失った少年に出会う。彼は少年に、幼い頃読み聞かせてもらった、勇敢なティム少年が活躍するお伽噺を語りだす…。若き日のローランドの冒険譚と、母の思い出とともにある優しい物語が入れ子構造に。ファン熱望のシリーズ最新作が、本邦初翻訳!

刊行順序としてはシリーズ最新作になるものの、物語としては第4部『魔道師と水晶球』と第5部『カーラの狼』を繋ぐ位置にある本作。前の新潮文庫版には含まれていないため、この本こそが再刊の目玉だといっても過言ではありません。既に新潮文庫版を持っている身からすれば(どこにしまってあるか分かんないけど)、この1冊だけ追加購入するだけでもいいくらい。


以下、「ネタバレ」してますので、ご注意ください。
 ↓




過去のおはなしが中心。
第4部の続きからスタートします。現在の<カ・テット>であるエディ、スザンナ、ジェイク、オイに向かって昔話をするローランド。時系列的にはちょうど『魔道師と水晶球』の話のあと、ギリアドに戻ってきたローランドに与えられた新たな任務。その冒険譚に挿入されるかたちで、彼が昔母親から聞かせてもらったおとぎ話が語られます。

その入れ子構造の最奥部にある物語について、
「おとぎ話」とは書きましたし、本編中でも牧歌的な雰囲気のまま語られるストーリーではあるのですが、そこはキング、そしてダークタワーの世界、到底眠る前に子どもに話して聞かせるような物語にはなっておりません。首都機能を有する(ように描かれる)ギリアドに対して批判的な視点からの物語だというだけでも「おとぎ話」らしからぬところですし、全編を覆う気味悪さ、ドメスティック・バイオレンス、男女関係の生々しさ、虐げられた種族を通して描かれる差別…etc…と、子守唄として聞かせるのに全くそぐわない話やんけっていう。宣伝文句にある「優しい物語」という側面は確かにある(母を想う子という構図)ものの、決してそれだけの話じゃありません。
そして「おとぎ話」の中にまで浸食してくる、暗黒の塔と黒衣の男。

そういえば、<契約者の男>として登場する黒衣の男の台詞で印象的なものがありました。次のようなもの。
「(アメリカのことを指して)玩具愛好家のアホでいっぱいの国だ。―(中略)―おまえたちの子どもたちに語りつげ。つまり、おまえたちはとても不幸なので魔法を持つことができないのだ。しかるべき手にかかれば、いかようなものでも魔法となるのだぞ。とくと見ろ!」


個人的に最も心動かされたのは、母親を救うために魔法使いマーリンを探しにいく少年と、ポータブル・ガイダンス・モジュ-ル(品名:ダリア)との奇妙な「友情」ですね。ダリアは、中間世界ではおなじみ、ノース・セントラル・ポジトロニクス社製の案内用の機械。初めは機械らしく杓子定規な応答しかしない“彼女”が、しまいには内部に組み込まれた指令内容に違反してまで少年を助ける。そんなダリアの“最期”には涙するしかねぇ。

泣けるといえば、読者の涙を振り絞るのが最後の最後。
母と息子の歪んだ関係と悲劇的な結末については『魔道師と水晶球』で語られているところですが、本書ラストのローランドの告白に至り、読者は彼がそれらをどう乗り越えたのかを知り、心震えるのです。
“救い”にまつわる、母と息子の物語なんだ本書は。


スポンサーサイト

COMMENT 0