スティーヴン・キング『ダークタワーⅣ 魔道師と水晶球』

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スティーヴン・キング『ダークタワーⅣ 魔道師と水晶球』 (風間賢二 訳、角川文庫、上・下)

スティーヴン・キングの『ダークタワー』シリーズの第4部、『ダークタワーⅣ 魔道師と水晶球』を読みました。
第1部『ガンスリンガー』の感想は → コチラ。
第2部『運命の三人』の感想は → コチラ。
第3部『荒地』の感想は → コチラ。

毒ガス、殺人ビーム、化け物が跋扈する荒地を疾駆する、知性を持った超高速モノレール“ブレイン”。列車VS人間の命がけの謎かけ合戦は、絶体絶命の最中、思わぬ形で終結を迎えた。危機を乗り越え、結束を強める旅の仲間たちに、ローランドは心の奥底に秘めた思い出を語りはじめる。彼が14歳で“ガンスリンガー”の試練を突破し、初めての任務についた時のこと。そして、過酷な人生で初めて、唯一愛した少女のことを…。

ガンスリンガーである父の密命を帯びたローランドは、陽気なカスバートと、冷静沈着なアランとともに故郷を出発し、小さな町ハンブリーを訪れる。そこで美しいスーザンに出会い、一目で恋に落ちるが、彼女はある契約のため自由に恋ができない身だった。そんな中、ローランドは、一見平和な町に漂う不穏な空気と陰謀に気づくのだが…。禁断の恋の行方は甘美でむごい―冷酷無比なローランドを誕生させた、壮絶な愛の物語。


あら素敵なジャケ画ですこと。


以下、「ネタバレ」してますので、ご注意ください。
 ↓




長いです。
単純な物語のヴォリューム=ページ数もさりながら、読んでて長~く感じる度合いが大きいのが本作。個人的には本シリーズの中で最も「長く」感じるのが、この第4部かもしれないなーと。実際読み終わるまでかなりかかってますしね。

時系列的にサンドイッチのような構造になっています。前編の続きである、超高速モノレ-ル=ブレインとのなぞなぞ合戦で幕を開きますが、それを「現在」とすると、ローランド14歳のときのエピソードが語られる「過去」を真ん中に配置、そして最後に再び「現在」に戻ってくるというつくり。
序盤のハイライトであるブレインとの勝負を経た<カ・テット>は、今までいた世界から弾き出され、別の世界にワープ(?)していることに気づきます(<ビーム>をもう一度見つける必要がある)。読者にはそこが、あの名作『ザ・スタンド』の世界だということが知らされて、鳥肌ッ!となること必至。
そこからローランドの「告白タイム」になるわけですけど、ここが長い。物語の進行がややゆったりしているのと、丁寧な語り口で当時の世界のありようを描写しているから。
この部分、スターウォーズでいえば、エピソードⅡですよ。アナキンとパドメいちゃいちゃしまくり、みたいな。ま、もちろん本作はそれだけじゃなんですけど。恋愛模様を描いた物語であると同時に、旧<カ・テット>とでもいうべき、ローランド+カスバート+アランの冒険譚でもあります。

この「長い」という感想は、もしかしたら管理人が恋愛小説を読み慣れていないからかもしれません。
ただし長いとは言っても退屈なわけでは決してなく、キングは恋愛小説を書いても抜群に面白いです。人の機微を掬い取る、その手腕の凄さね。もともと人間模様を描くことに秀でている人ですから、それも当然っちゃあ当然なんですけど。ローランドと出会ったばかりのスーザンの乙女な反応には、思わずニヤけますし、その後の2人の距離感の描き方の巧さときたら…ッ!

この恋愛小説部分、ただ単にキュンキュンしながら読むだけのものではなく(笑)、シリーズ全体を俯瞰したうえで大きな役割を果たしているセクションになっています。一連の出来事を通して、ローランドの人となりについて、読者がより深く知ることになるから。彼の人格形成や、塔への執着の理由等。
ローランドはいわゆる“スーパーマン”ですけど、完全無欠のヒーローじゃない。そこがいいんですよね。それゆえにこのシリーズは面白いし、そのステレオタイプじゃない主人公造形こそが大きなポイント。「ローランドはにやにやした薄笑いを浮かべると、いささか狂人じみて見えるのだ」なんて、主人公を評した文章とはとても思えませんよ。彼は“スーザンだいしゅきぃ♡”な腑抜けモードになっちまいますが(笑)、それに対してやきもきするカスバートとアランの葛藤が読者にビンビン伝わってきます。

物語の中で重要な役目を果たす存在が、タイトルにも掲げられた水晶球です。因みに魔女リーアと水晶球の関係、これは完全に『指輪物語』のゴラムと指輪の関係をオマージュしてますよね(「おお、我が愛しきものよ」)。
ローランドがこの水晶球を通して予言を得るシーンがありますけど、ここが物語全体の中でも超重要なシーンになります。初めて<暗黒の塔>の存在を“見る”ことになるから。断片的ではあれど、しかしなんと怖ろしい予言の内容か。

「おまえは自分の愛するものすべてを殺すことになるだろう」
「にもかかわらず、<塔>はおまえに対しては閉ざされるだろう」


その予言を得たあとのローランドは、それまでのローランドとは違う人物になっています。塔とスーザン、どちらかを選ばなければいけなかったから。
本編を読むことによって、これまでの第1~3部で語られてきた物語の細部に説得力が与えられます。それこそ第1部でジェイクをなぜ見捨てたかというところまで遡って。また、今まではぼんやりとしていた、変転する世界の変遷がよりはっきりと感じられるようになり、脳内で描かれるイメージは強固になります。黒衣の男の再登場にも興奮しますね。
そういえば本編の構造や物語全体の位置付けとしては、SWエピソードⅠっぽいところもあるなぁ。“悪”が勃興する、その初期段階を描いたものとして。正に「ファントム・メナス=見えざる脅威」。

第4部に限ったことではないですけど、登場人物が愛しいです。
旧<カ・テット>のメンバーであるカスバートとアラン。魅力的なヒロインであるスーザン。ローランドたちを助けるちょっと頭の足りない少年、シーミー。
とりわけシーミーの献身っぷりには涙するしかねぇ。
「最善をつくすのよ?」スーザンはきいた。
「うん、スーザン、パットの娘さん。おいらたちは、友達のために最善をつくすんだ。死にものぐるいでね」



本編によってダークタワー世界への読者の理解が深まるとともに、物語の中では<カ・テット>の団結がより強固になります。ラストで水晶球が見せる、ローランドの秘密の残酷さたるや。
魔道師マーテンであり、黒衣の男でもあるランドル・フラッグと再びあいまみえ、<暗黒の塔>へと導いてくれる<ビームの道>へと戻った<カ・テット>。旅は続く。


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