陰陽座「覇道明王」 (2018)妖怪重金属・
陰陽座、
傑作「迦陵頻伽」(2016)からわずか1年半という短めのスパンで放たれた14thアルバム。全作詞/作曲、瞬火(Vo&Ba)。
「覇道明王」というタイトルの響き、前作が黒猫(Vo)の歌に焦点を合わせたと思しきメロディックな作風でそこからの“揺り戻し”が予想できること、バンドの頭脳である瞬火のインタビュー等での発言、そしてジャケ。全てがあの7th
「魔王戴天」を想起させます。
こりゃあぜったいヘヴィでメタリックな作風やんけ!↑
これは歓迎のシャウトではなくてですね、むしろ嘆きの叫びです。ヘヴィでメタリックなのは良いんですけど、それに引っ張られ過ぎて、過剰に硬派で無骨な仕上がりになるんじゃないかと心配だったんですよ。なんせ
「魔王戴天」って管理人が唯一ピンとこない
陰陽座のアルバムですから。
しかしながらこれがすげぇ傑作でした。確かにヘヴィです。確かにメタリックです。それは
「魔王戴天」と同様。…というより、バンドの研鑽の成果や録音技術の進歩、多弦楽器の使用等によって、むしろそれらの印象はさらに強まっています。
ただし、ヘヴィでメタリックなだけじゃなくて、メロディが圧倒的につよい。無骨でもそっけなくもない。そして楽曲個々のキャラ立ちが抜群です。その点が
「魔王戴天」とは異なる(と個人的に感じる)ポイント。アップテンポの曲が多めなのも好印象です。
同じ轍は踏まなかったな。兄上、疑ってゴメンナサイ。
ここ数作、シンフォ要素が強めの作品を重ねてきましたが、音楽的方向性もあってか、今回はKeyは控えめです。それでもここぞというところで登場するし、その使い方が自然かつ絶妙なので、引き続いてサポートの阿部雅宏氏の存在感は光ってますね。この点も
「魔王戴天」とは異なるところ。
あと録音が良いです。特にDrの音。過去最高のドラム・サウンドが収められているんじゃないでしょうか。
全体的に頼もしい重金属感に満ちた作品。でもそれ一辺倒じゃなくて、瞬火なりのバランスがとられているのを感じます。
「迦陵頻伽」とはまた違った感触でかなりメロディックな作風だと思いますね。こりゃあすんごいことよ。
一点気になったのが、ファルセットを使う歌メロが多いことです。前作の記事でも「本作ではファルセットを使う場面がやや多いように感じます」と書きましたけど、今回も同様。黒猫(と
陰陽座)の場合、ファルセットを使うことに必然性がある、要は高音域が出ないから裏声に逃げるってパターンじゃないので、使い方としては信頼していますけどね。
①覇王陰陽座が得意とするジワジワ系のオープニング。冷たく重いリフと厳粛なピアノがただならぬ妖気を放つ一方、天から降りてくる黒猫のサビがあまりにも神々しく、鮮やかなコントラストを描きます。覇道を歩む様子を描写しているかの如きマーチング・バンド風のDrが特徴的ですが、淡々としている印象は無く展開は多め、プログレちっくな起伏に痺れます。
②覇邪の封印まず曲名カッチョ良過ぎだろう、と。
※前作記事からコピペあのオープニングならば2曲目はこうくるであろうという、アップテンポのメロディック・チューンです。何から何まで(彼らなりの)王道ですな。ゆえにガッツポーズものの手応え。サビで猫さぁんがところどころ語気(?)を強めつつ歌うのがかっけーの。キラーッ!
③以津真天“和”をまき散らす爆走曲。重いけど軽快。…って矛盾してる感想だけどクッソかっこいいからいいの。黒猫のVoの下品で毒々しい面が押し出されているのがフックになってます。めっちゃ姐御調(笑)
④桜花忍法帖シングル曲。アルバムに合わせてミックスが変わっているそうで。シングルの感想は→
コチラ。アルバムの中でひときわ輝くシングル曲ではなく、アルバムの流れの中ですんなり馴染むシングル曲になってます。違和感なし。それどころか、どちらかというと地味な部類かな。この曲で感じたDrフレーズの多彩さ、録音の良さが
「覇道明王」全体に反映されているという面でも、「先行」らしいシングルだったのだな、と。
⑤隷本気と書いてマジと読む。時代と書いてトキと読む。宇宙と書いてソラと読む。隷と書いてシモベと読む。
「覇道明王」における大きな収穫のひとつではないかと思いますね。リフ・バンドとしても秀でた
陰陽座の数多い楽曲の中でも、そしてインテンスな印象が強い本作の中でも、この曲のメインリフの切れ味はひときわ鋭いです。
リフに翻弄される。目まぐるしい展開に翻弄される。山ほどたっぷりな要素がキメラの如く(いや、鵺のように、か)融合し、その存在感の強さに平伏す。異形の逸品。
⑥腐蝕の王まず曲名カッチョ良過ぎだろう、と。
※コピペ「覇道明王」における大きな収穫のひとつではないかと思いますね。
※コピペポップで切ない歌メロ、英語にも聞こえる響きの面白さと日本語の美しさを両立させた歌詞、上昇下降を繰り返すGtリフの面白さ、それぞれのパーツの組み合わせ方…etc…。なんという巧みな曲作りか。瞬火じゃないと書けない。黒猫じゃないと歌えない。
陰陽座しかなしえないキラーチューン。この曲が本作の中(それも真ん中の位置)にある意義はとてつもなくおっきいよ。
⑦一本蹈鞴いっぽんだたら。ふいごっす。ヘヴィでうねりまくるリフと力強いリズムによる推進力が、正にふいごを踏んでるイメージっす。Baソロのニュアンスも忠実にふいごってる。他曲と被らないユーモラスな雰囲気、それと歌メロのキャッチーさが光る。
⑧飯綱落としいづなおとし。『カムイ外伝』に登場する架空の技の名前だそうですが、管理人的には阿修羅マン。
「サタンクロスよ、あなたはさっき私の稲綱落としを数字の8と言いましたね。…それではその数字の8を横向きにしたらどうなりますか?」ム…、無限大 ∞!!妖怪重金属的には、
卍~
神鳴忍法帖~
氷河忍法帖に連なる“無敵の女忍者シリーズ”の最新作です。最強の敵の登場です。その敵こそが阿修羅マン(違う)。そして“抜け忍”である主人公くノ一=カミナリを追う“追っ手”が使う技こそが、
⑧飯綱落とし(違くない)。燃えるぜ。
②と並ぶ、問答無用の陰陽座流メロパワ/メロスピ。時間軸上では
氷河忍法帖の直後の物語となることもあってか、同曲に通じる雰囲気があります。かっけー。Gtソロまじかっけー。
⑨鉄鼠の黶てっそのあざ。京極夏彦の百鬼夜行シリーズ『鉄鼠の檻』でもおなじみ、鉄鼠の伝承に題をとった大作系の曲。歯切れ悪く「系」としたのは、彼らにしたらそこまで長くもない尺(6:50)によりますが、物語に沿った楽曲展開、様々な音楽要素のてんこ盛り、硬軟/動静激しく揺さぶられるドラマティック&エモーショナルな曲調等、いつもの大作チューンと同じです。インスト・パートではなく、2人のヴォーカリストが紡ぐ物語が曲を進行させるという点も同様。瞬火のブルージーな男泣き歌唱が冴え渡っていますね。Gtソロも泣っき泣き。
⑩無礼講ラストはお祭り雷舞曲。
喰らいあうをさらに明るく吹っ切ったようなハードロック。オルガンがめっちゃ気持ちいい。Drのパワフルさもあって、彼らのこの手の曲の中ではかなり手応えのあるものになったのでは。力強いアルバムの締めくくりには最高です。
楽曲個々のパーツパーツを取り出すと自己再生的匂いがプンプンするのに、最終的なアウトプットとしては新鮮な印象の曲が並んでいるのが素晴らしいですね。飛び抜けた名曲こそないものの、どれがお気に入りか迷いまくること必至、楽曲粒揃いの傑作になりました。
すげえよ兄上。
すげえよ
陰陽座。
【お気に入り】
⑥腐蝕の王⑤隷②覇邪の封印⑧飯綱落とし③以津真天⑨鉄鼠の黶⑩無礼講
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