柚月裕子『孤狼の血』

柚月裕子_孤狼の血
柚月裕子『孤狼の血』 (角川文庫)

日本推理作家協会賞を受賞、各ミステリ・ランキングの上位にランクインした、柚月裕子の『孤狼の血』を読みました。
役所広司・松坂桃李・真木よう子・江口洋介…etc…で映画化され、今年5月に公開予定とのこと。

昭和63年、広島。所轄署の捜査二課に配属された新人の日岡は、ヤクザとの癒着を噂される刑事・大上とコンビを組むことに。飢えた狼のごとく強引に違法捜査を繰り返す大上に戸惑いながらも、日岡は仁義なき極道の男たちに挑んでいく。やがて金融会社社員失踪事件を皮切りに、暴力団同士の抗争が勃発。衝突を食い止めるため、大上が思いも寄らない大胆な秘策を打ち出すが…。正義とは何か。血湧き肉躍る、男たちの闘いがはじまる。

こりゃあ面白い。
硬派なハードボイルドを平易な文章で表現。細かい部分で気になるところはありますけど、漂うムードが抜群に素敵ィなのでさほど気にはならない。


以下、人によっては「ネタバレ」と感じる部分があると思いますので、ご注意ください。
 ↓




物語の時代設定がまず良いですね。昭和末期、暴対法成立以前、携帯電話普及前。
解説では本作に影響を与えたであろう数々の映画が挙がられています。広島が舞台ということもあって、中でも『仁義なき戦い』に通じるものは大きいようです。管理人は同シリーズを観ていないので、菅原文太や松方弘樹のイメージを思い浮かべつつ、薄ぼんやりと想像するのみですけども。

主人公・大上の捜査方法は宣伝文句で「大胆な秘策」って謳われるほど大胆じゃないし、全体的にミステリとしてのカタルシスを得られる作風ではありません。コレ系の小説をそれなりに読んでいれば予想できちゃう範囲内。また、さほど長い作品でもないこともあり、同時代の世相の掘り下げもさほどされていない。広島の一地域のみで話が完結している感じ。それよりは人物造形と各陣営の絡み方で魅せる小説だと思います。
常に大上の部下である日岡目線で話を進めてゆく構成が効いていますね。ちょっと安易な結末のようにも思えるんですが、作品全体を覆うムードになんとなくヤラれちゃってジ~ンと感じ入っちゃうんだから不思議。

読んでいると、やたら似非広島弁を喋りたくなる逸品。すっきりとまとまっているので、ずっしりとした骨太さはそれほどでもありませんが、あまり読書慣れしていない人でもサクサク読むことのできるのでは。続編の『凶犬の眼』も楽しみです。



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