スティーヴン・キング『ドクター・スリープ』

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スティーヴン・キング『ドクター・スリープ』 (白石朗 訳、文春文庫、上・下)

スティーヴン・キングによる名作『シャイニング』の続編、『ドクター・スリープ』を読みました。

冬季閉鎖中のホテルで起きた惨劇から30年。超能力“かがやき”をもつかつての少年ダンは、大人になった今も過去に苦しみながら、ホスピスで働いていた。ある日、彼の元に奇妙なメッセージが届く。差出人は同じ“かがやき”をもつ少女。その出会いが新たな惨劇の扉を開いた。ホラーの金字塔『シャイニング』の続編、堂々登場!

「あの人たちが野球少年を殺してる!」少女アブラは超能力を介し、陰惨な殺人事件を「目撃」する。それは、子どもの“かがやき”を食らって生きる<真結族>による犯行の現場だった。その魔の手はやがてアブラへと迫る。助けを求められたダンは、彼らとの闘いを決意。そして次なる悪夢へと導かれる…。


あとがきでも触れられていますが…、
原作小説『シャイニング』の続編であって、映画『シャイニング』の続編ではないッ!!
ということ。
ここ重要。


以下、人によっては「ネタバレ」と感じる部分があると思いますので、ご注意ください。
 ↓




スタンリー・キューブリック監督の映画、あれはジャック・ニコルソン(と廊下のブシャーッ!!)の印象がやたら強い映画になっていて原作とは別物だし、キング自身が批判している逸話についても有名です。何が残念かって、原作にあった「アルコールに溺れても、狂ってしまっても、それでもまだ父ちゃんのことが好きなんだよ」という息子から父への愛情表現がスッポリ抜け落ちていること。あとジワジワ迫りくるカタストロフィへの緊張感がスポイルされていること。
…って、原作も映画もそれぞれ一度ずつしか通していないので、ざっくりとした印象だったりしますけども。

閉ざされたホテルという閉鎖空間でジワジワと恐怖を醸成した前作と比べると、本作の小説としての趣きは大きく異なります。作中の時間軸が10年以上(15年くらいだっけ?)と長いし、舞台もあちこちに飛ぶ。そして善と悪との対立構図が明確。
結果、前作の二番煎じに陥いることを回避できているわけですけど、純粋なシリーズ続編を書くのは初めてのキング御大のこと、その気合いの入れっぷりは半端なく、心憎いまでに絶妙な相関関係を描きます。

「人生は車輪、その唯一の仕事は回転することであり、だからこそ動きはじめた場所にかならずもどってくる」

クライマックスの舞台がかつてオーバールック・ホテルが建っていた土地ってのも震えるし、父親への愛・家族の繋がりというテーマが忘れずに盛り込まれている点もしかり。また、少年少女を描かせたら右に出る者のいない御大の凄みは、本作でも十分に発揮されてます。

有栖川有栖氏の解説にある、「決着がついたと思ったらついていませんでした、などと前作の余韻を損なったりせず」のくだりには、思わず膝を打ちましたよね。そうだ!正にその通りだ!と、打擲しましたよね。やたらめったら打ちすえましたよね。そうそう、そうなんです。だから本作が素晴らしい作品たりえているんす。
主人公ダン・トランスとビリー・フリーマンやケイシー・キングズリーとの友情、血の繋がりがもたらす残酷さや死にまつわる描写のほろ苦さが、本作をより味わい深くしているのも見逃せないす。


さすがキングだぜな力作でした。


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