皆川博子『開かせていただき光栄です - DILATED TO MEET YOU -』

皆川博子_開かせていただき光栄です
皆川博子『開かせていただき光栄です - DILATED TO MEET YOU -』 (ハヤカワ文庫)

皆川博子の『開かせていただき光栄です - DILATED TO MEET YOU -』を読みました。
タイトルがイカす。
ジャケ画がイカす。

18世紀ロンドン。外科医ダニエルの解剖教室からあるはずのない屍体が発見された。四肢を切断された少年と顔を潰された男。戸惑うダニエルと弟子たちに治安判事は捜査協力を要請する。だが背後には詩人志望の少年の辿った恐るべき運命が……解剖学が最先端であり偏見にも晒された時代。そんな時代の落とし子たちが可笑しくも哀しい不可能犯罪に挑む、本格ミステリ大賞受賞作。前日譚を描いた短篇を併録。解説/有栖川有栖

ハヤカワの文庫本のサイズってほぉ~~んの少しだけ他社よりも大きいよね。その微妙な大きさが、電車の中で読むときに、片手でページをめくることができるか否かを左右するのだ。



以下、人によっては「ネタバレ」と感じる部分があると思いますので、ご注意ください。
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どこか翻訳モノを読んでいるような感覚なんですよね、本書。
海外を舞台にしていても、登場人物がカタカナ名ばかりでも、日本人作家が書くとどうしても“日本っぽさ”が漂うことが多いですが、なんでしょう、本書の、皆川作品の翻訳モノっぽさは。

解剖学、複数の変形死体、墓あばき、奴隷制度、ギャンブルと詐欺、陪審員裁判、政権批判活動、詩人、身分違いのロマンスに、果てにはボーイズ・ラヴまで、いかがわしい要素もたっぷりの本作です。でもトッ散らかることなく、どこか幻想的な浮遊感と退廃感、そして気品に彩られているのは、この作者ゆえ。
物語の語り口や時代背景の描写だけでなく、登場人物が魅力的なのが強いですね。先が気になってページを繰るスピードが速くなるタイプの小説というよりは、読んでいると自然と物語に深く浸ってしまうタイプというか。

本格ミステリど真ん中系のトリックが炸裂しますし、そもそも本格ミステリ大賞を受賞、各ミステリ・ランキングの上位に入った本作なんですが、読み終わってみると強く心に残るのは、トリッキーな部分ではなく豊かな物語性です。18世紀ロンドンの片隅で生き生きと動き回っている、解剖教室のメンバー達だったり、盲目の治安判事チームといった。
傑作でしょう。

続篇の『アルモニカ・ディアボリカ』も読まねば。


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