デーモン閣下「うただま」

デーモン閣下_うただま
デーモン閣下「うただま」 (2017)

なんと2017年2枚目のアルバムである。
ジャケとブックレットのイラストは、お笑い芸人/イラストレーターの鉄拳によるもの。

久しぶりのソロ作リリースとなった前作「EXISTENCE」(感想は→コチラ)は、GRAND ILLUSIONのAnders Rydholm親方の主導による、大雑把に言うとハードロック/ハードポップ色の強い作品でした。本作はまたガラリと趣向が変わって、カヴァー曲が中心の企画盤になっています。
元々は、年内に作風の異なる2枚の作品をリリースすること、そして本作の「やさしい歌」というコンセプトが決まっていたとのこと。選曲とアレンジは、閣下のVoに焦点を当てた、懐かしさを感じさせるものになっています。

以下、収録曲を。

01. 少年時代 (井上陽水)
02. 砂漠のトカゲ (NHK「Eテレ2355」おやすみソング)
03. 見上げてごらん夜の星を (坂本九他)
04. 千秋楽 -雅楽・盤渉調古典曲をモチーフとした独自楽曲- (雅楽)
05. やつらの足音のバラード (かまやつひろし)
06. Interlude -人-
07. 今も翔ぶ -From The New World- (ドヴォルザーク『新世界より』)
08. Zutto (セルフカヴァー)
09. Interlude -地-
10. 故郷 (文部省唱歌)
11. 君が代 (国歌)
12. toi toi toi !! -うただま編- (NHK「Eテレ0655」)
13. Interlude -天-

なんとなく「古き良き日本」とか「原風景」という言葉が浮かんでくる楽曲群とムードです。オッサン的にいうと小学校の頃のイメージが思い浮かぶ。これで蛍の光があったらあまりの郷愁に悶えてしまったでしょう(笑)
とはいえ、原曲をそのまんま忠実にカヴァーすることはなく、その実、かなり実験的な作風ですね。実験しているのは、歌ではなく、演奏やアレンジ。曲そのものを壊して再構築するというよりは、アレンジと演奏で遊ぶことで原曲の新たな魅力を探求して提示してくる、そんなスタンス。

各曲とも、シンプルな編成の楽器隊による演奏の拘りや斬新さが光っています。いわゆるロック・バンドで用いられる楽器はほとんど登場しません。そもそも電子楽器自体が少ないのかな。ピアノやヴァイオリン/ヴィオラ/チェロといった馴染み深いところから、三線、二胡、リュート、アコーディオンといった珍しい楽器まで、生々しい響きを大切にした録音になっています。また、閣下が長年探求している邦楽器とのコラボは、ここでも大フィーチャーされています。雅楽器、筝、尺八、篠笛等。

①少年時代の途中でパッヘルベルのカノンが挿入されたり、ピアノと歌だけで(ほぼ)一発録りした③見上げてごらん夜の星をの親密さ、⑦今も翔ぶ -From The New World-の重厚なストリングス、リュートの響きが異国風の切なさを掻き立てる⑧Zuttoチャラン・ポ・ランタンの小春によるアコーディオンが曲のムードを決定づける⑩故郷と、閣下のVoと同等以上に演奏に魅かれる場面は多いです。マニアックで繊細な演奏を、閣下の歌声と原曲の親しみやすさが中和しているとも言えるし、反対に、演奏がスパイスになっているとも言えそう。
ただやっぱり、注意して聴かないと演奏面での拘りが感じることができなかったり、(良くも悪くも)スーッと流れていってしまう心地良さのある大人しい作風ですので、刺激に乏しいっちゃあ乏しいですね。閣下の歌唱はサイコーですけども。


地球を征服した悪魔こそが、芸能に関わる他の誰よりも日本の歴史や文化に対して真摯に向き合い、こんなに心優しい歌を歌っているというのは不思議なもんですね。例の如く、初回限定盤に付いているDVDには、本作とその収録曲について事細かに語った映像が収められており、ファンならずとも必見。制作の裏側まで赤裸々に喋ってくれる閣下の語り口は、メインのCD音源よりも興味深いかもしれません。
個人的には、ライブでアドリヴ気味に入れてくる「トイトイトイ~」のフレーズをずっと不可解に思っていたんですが、その正体がNHKの番組で使われた挿入歌のtoi toi toi !!だと判明して、ようやくすっきりした次第です。

①少年時代のMV → コチラ。砂絵のパフォーマンスが実に素晴らしい。

【お気に入り】
⑦今も翔ぶ -From The New World-
⑧Zutto
③見上げてごらん夜の星を
⑩故郷
④千秋楽 -雅楽・盤渉調古典曲をモチーフとした独自楽曲-


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