原田マハ『本日は、お日柄もよく』

原田マハ_本日は、お日柄もよく
原田マハ『本日は、お日柄もよく』 (徳間文庫)

原田マハの『本日は、お日柄もよく』を読みました。
『楽園のカンヴァス』が面白かったので、別の作品を読んでみようと思い、ベストセラー(なのか?)のこれを。

OL二ノ宮こと葉は、想いをよせていた幼なじみ厚志の結婚式に最悪の気分で出席していた。ところがその結婚式で涙が溢れるほど感動する衝撃的なスピーチに出会う。それは伝説のスピーチライター久遠久美の祝辞だった。空気を一変させる言葉に魅せられてしまったこと葉はすぐに弟子入り。久美の教えを受け、「政権交代」を叫ぶ野党のスピーチライターに抜擢された! 目頭が熱くなるお仕事小説。

かなり読みやすくサクサクと進むし、面白いんだけど、説得力に欠ける作品。


以下、人によっては「ネタバレ」と感じる部分があると思いますので、ご注意ください。
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困難に向かい合ったとき、もうだめだ、と思ったとき、想像してみるといい。三時間後の君、涙がとまっている。二十四時間後の君、涙は乾いている。二日後の君、顔を上げている。三日後の君、歩き出している。

本作中に出てくる言葉ですけど、これを読んだときに「むむ、コレどっかで読んだことあるぞ…」って思いましてね。誰かのセリフの引用か!?と思ったんですけど、おそらくは電車の中に貼ってあった本書の広告のコピーですね。
てっきり刊行されて間もない作品かと思ったら、2010年に出版された作品なんですね。それがWOWOWでドラマ化されたということで、ここにきてようやく管理人の目にも留まったみたいで。因みに、主人公・二ノ宮こと葉役が比嘉愛未、伝説のスピーチライター・久遠久美役がハセキョー、主人公のライバル役・和田日間足が速水もこみちなんですと。変わった名前のイケメソをもこみちが演じるって、そのまんまじゃねーか。

2010年ということは、2009年の民主党による政権交代のすぐ後ですね。日本の政党や政治家の固有名詞については勿論オリジナルのものに変えられていますが、「バラク・オバマ」とか「ヒラリー・クリントン」なんて名前はそのまんま出てくる。物語としては2007年くらいを想定して描かれているような。

結婚披露宴での印象的な導入部からして、見事に引き込まれます。
こと葉のおばあちゃんによる「言葉の力を、あなたも信じてみたらどう?」や、もこみち ワダカマによる「言葉は書くものでも読むものでもない。操るものだ」等、印象に残るセリフと登場人物の魅力で以ってグイグイ引っ張ってゆきます。作者の人物描写の巧さも光っています。私は読んでいて、あちらこちらで涙腺を刺激されました。

作者は一貫して言葉の持つ力について言及しており、その眼差しは温かいものですが、物語中盤から政治が絡んできて、やがてそれがメインの筋へと「昇格」すると、ちと萎えてきます。理想と現実、どちらを描いた小説かと問われれば、本書は圧倒的に「理想」に決まってるんですけど、それが政治、特に選挙という舞台にぶっ込まれた途端、「理想」が「非現実」に姿を変えてしまうようなところがあります。
なんかですね、無理筋だと感じる場面が多いんですよね。そんなに上手くいくわけないだろう、と突っ込みながら読んだ場面が多々。私は現実感に乏しくとも、その世界観の中で納得のいく話であれば、万々歳な読み手なんですけど、本書の場合ちょっと説得力が足りなかったような気がします。
反面、この全てがハッピーエンドへと突き進む様は、なるほどドラマ向けかも、とも感じたり。


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