小泉喜美子『血の季節』

小泉喜美子_血の季節
小泉喜美子『血の季節』 (宝島社文庫)

小泉喜美子の『血の季節』を読みました。
作者の名前はどこかで聞いたことあるようなないような~でしたが、『弁護側の証人』を書いた人だ。読んだことないけど。翻訳家でもあって、そちらはいくつか読んでますね。P・D・ジェイムズ『女には向かない職業』や、ジェイムズ・クラムリー『さらば甘き口づけ』。

青山墓地で発生した幼女惨殺事件。その被告人は、独房で奇妙な独白を始めた。事件は40年前の東京にさかのぼる。戦前の公使館で、金髪碧眼の兄妹と交遊した非日常の想い出。戦時下の青年期、浮かび上がる魔性と狂気。そして明らかになる、長い回想と幼女惨殺事件の接点。ミステリーとホラーが巧みに絡み合い、世界は一挙に姿を変える。1982年発表。復刊希望が相次いだ、幻の名作がついに復刊。

1982年の作品で、作者のキャリアの中では中期というか真ん中辺りに位置する作品です。1982年というと、島田荘司がデビューしてすぐくらいの時期。2作目の『斜め屋敷の犯罪』がちょうどこの年だから。スティーヴン・キングでいうとダーク・タワー・シリーズが始まった頃。超大作『ザ・スタンド』はすでに上梓してますし、もう超大物じゃないすか。
なんでシマソウとキングを例に出すかってところですけど、ミステリの年表みたいのを考えるにあたって、私にとっては分かり易い目安になるのよね。


以下、人によっては「ネタバレ」と感じる部分があると思いますので、ご注意ください。
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恩田陸による帯タタキ文句、「吸血鬼+サイコパス+警察小説。彼女はもう、この時すべてやっていた」というのが強烈です。そんなネタバレしてるような宣伝文句を前にしても、いささかも減ずることのない魅力がありました。
面白い!

昭和50年代に起きた幼女惨殺事件の捜査と、戦前~太平洋戦争下に掛けての被告人の回想。この2つが交互に並び、物語は進行してゆきます。ミステリとホラー、現実と幻想を、どう折り合いをつけてまとめてくるのかがポイントであり、終盤には少なからずミステリ的どんでん返しがキマるんですけども、実はそんなこたぁどうでもいいほど作品から立ち上ってくる雰囲気が素晴らしいです。むしろ、ミステリを期待して読むと、肩透かしを食らうんじゃないかな。
吸血鬼モノが本来持つ耽美性・後ろ暗さ・美しさ・エロティックさを、それほど古さを感じさせない文章で鮮やかに描いています。そこに戦時下の閉塞した空気を持ち込みつつも、破綻していないところがまた良いですね。作者の経歴に印象を左右されてるような気もしますが、海外の翻訳物を読んでるような感じも受けました。

読みやすくも格調ある作品。


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