神家正成『深山の桜』

神家正成_深山の桜
神家正成『深山の桜』 (宝島社文庫)

『このミス』大賞受賞作、神家正成の『深山の桜』を読みました。

日本から約一万二千キロ、アフリカ大陸。国際連合南スーダン派遣団の第五次派遣施設隊内では盗難が相次いでいた。定年間近の自衛官・亀尾准陸尉と部下の杉村陸士長が調査に乗り出すが、さらに不可解な事件が連続して発生する。果たして相次ぐ事件は何を意味するのか。日本から特別派遣されてきたオネエの警務官・植木一等陸尉も調査に加わり、事件の謎に挑む。『このミス』大賞優秀賞受賞作!

『このミステリーがすごい!』のランキングは参考にしているけど、宝島社等が主催している『このミス』大賞の受賞作はあんまり読んでないのよね。何作か読んでみたけど合わなかったので。まぁコンテスト全体からイメージされるものより、1作1作別物として評価されるべきところでしょうけども、どうも雑な作品が多い印象なのよ。
ただ本作は、自衛隊、それも海外派遣された陸上自衛隊という、珍しい題材と舞台設定による物語だったので、興味を引かれました。


以下、人によっては「ネタバレ」と感じる部分があると思いますので、ご注意ください。
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筆者は実際に陸上自衛隊に所属していた経歴を持っている人だということで、組織の内部事情・自衛隊を囲む環境等についての分析や描写は迫真です。説得力の強さが違う。同時に、小説としては痒いところに手が届かないもどかしさをあちらこちらで感じるのが残念な点かな。

必要な描写を読者に分かり易い形で提示しないと思えば、「それはもう分かったから!」と言いたくなるほど同じことを繰り返したり。文章の並びがおかしいために、思考の流れが中断されたり、一瞬意味が通じない文章だったり…。そもそもミステリ的な謎解きの部分と、登場人物達が抱える秘密や過去にまつわる謎、双方が上手く噛み合っているように感じられません。ラスト付近も広げすぎた風呂敷を急いでたたんでいくような乱暴さが目立ちますし。デビュー作だけに色々と盛り込み過ぎちゃった感じですねぇ。

(ミステリ)小説としての出来はともかく、ここまで重いテーマを据えた作品に、詳細な知識と共に触れることができたというのは、大きな収穫です。


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