ヤなことそっとミュート「BUBBLE」

ヤなことそっとミュート_bubble
ヤなことそっとミュート「BUBBLE」 (2017)

「ヤナミュー」こと、ヤなことそっとミュート
4人組アイドル・ユニットの1stアルバムです。

新しい音楽を知る機会はTwitterから、っていうパターンがほんとうに多くなっているのがMy音楽生活ですが、このユニットもそう。最初は「変わった名前だな」くらいの認識だけで、管理人はあまり気軽にYouTubeを試聴/視聴する人間でもないため、しばらくはそのまま放置していました。ただオフィシャルHPの冷たくアーティステッィクな雰囲気は、他のアイドルとは一風異なっており、強く印象に残りました。

その後も何回か名前を見掛けてはいたんですが、決定的だったのはTLに流れてきた③LilyのMVを何故だか知らんがチラッと観てしまったこと。 →コチラ
その美しさと切なさにガツンとくらいました。
そんな折りにちょうどよいタイミングでライブを観ることになったのが、4月のParty Rockets GTの主催イベントだったんですよね。レポは→コチラ。


さて、本作。
HPを見て感じていた期待は、ここでも裏切られることはありません。
見よ、このジャケのアートワークを。この美意識。このストイックさ。とてもアイドルのCD、それもデビュー作の“顔”だとは思えんぜよ。真っ黒いからベッタベタと指紋の跡が目立つんだぜ。

音楽性は、グランジ/オルタナティヴを通過したロック、エモコア、ポストハードコアといったあたりでしょうか。そこに、儚くメランコリックな歌メロを乗せたスタイル。ゴリゴリした演奏を突如静寂パートに突き落とすことで、その落差を強調する手法が常套です。Gtの轟音で覆い尽くすパートにはシュゲイザーっぽいところもありますかね。
「パソコンで作られた音楽」といった、デジタルな感覚はほとんどありません。音像はロック・バンドのそれ。実際に演奏部分は、ロック/パンク/エモ系のバンドがそのまま担当している曲もあるようです。

(アイドルじゃなくて)バンドでやればいい音じゃんと言われれば、まぁ確かにバックの演奏はその通り。アイドルちっくなVoを乗っける必要は無いかもしれません。ただし、歌メロのラインとコーラス・ワ-クが多重であることの必然性を強く感じさせるので、やっぱこの組み合わせじゃなきゃ!ってなるんですよね。


冒頭3曲の強力さに驚かされます。
ヤナミューの音楽性を示す名刺になるであろう①morningと、VoワークとGtワークが交錯する②カナデルハの2曲。それがキラーチューン③Lilyに続くという贅沢さ。
の美しさの正体ってのは何なのかと突き詰めてみると、これは余計なものを削ぎ落としていった結果の「引きの美学」なんじゃないかと思うわけです。派手じゃないけど、聴く度にジワジワ染み入ってくる叙情。1番の後、2番の歌い出しに入る前のリフの刻みだけで切なくなる。ラスサビでフェイク気味に歌うところは、まだまだ表現力不足で板についていないんですけど、それすら微かな瑕疵にしかならんから問題無し。この曲、ヘビロテしないマンである管理人が何回も繰り返し聴いているという、珍しい現象が発生しております。

最初に数曲聴いた時に感じたことですけどね、この感覚はfra-foaですわ。
fra-foaの1stを軽やかにさせて、尖ってるところをちょっと丸めて、寂寞感を減じて、もっと現代的に寄せたサウンド。気怠さをやや控えめにして、浮遊感は強めに。
熱いんだけど冷めてる。不愛想なわけじゃないんだけど、どこか超然としたところがあるというか、距離を感じるサウンド。「媚び」を感じさせない音。これはライブの時と同じですね。もしかしたら、ライブの感覚に引っ張られているのかも。畠山凌雅が書く歌詞の役割も大きいでしょう。
ノリが良くってスピード感を感じさせる曲もあるんだけど、まるでアッパーに感じません。むしろ気怠くて儚くて切ない。そこに面白さがあります。⑥Just Breatheとか⑦orangeとか⑩sputnik noteとかね。

ドゥームかドローンかよと言いたくなるヘヴィな冒頭から美しく切ないバラードへと変貌する⑫ホロスコープ(泣きのGtが◎)や、展開を積み重ねていくにつれて緊張感と切なさを増してゆく⑬No Knownあたりの曲に至っては、これは随分とマニアックな音だなーという驚きもあります。

バンド演奏に比して、Voだけを目立させる音作りにしていないことも特徴でしょう。轟音の中にわざと埋もれさせるようなVoワークを使ったりしますし。でもそんなバンド・サウンドから時折光が覗くようにVoが突き抜けて来るのにドキッとさせられるのよね。そういう時のVoって、多くは(メンバーの)なでしこの声なんだけど。彼女の声にある芯の強さはとても良いと思う。他のメンバーの声との対比という意味でも。
現時点では歌唱力や表現力に物足りなさがあります。ですが、それが壊れモノを扱うような危うい魅力を感じさせるのも確か。キュートさや元気の良さを前面に押し出していないところも好みです。むしろ正反対だしな。


作り手の拘りが透けて見える作品というのは面白いですね。
組み合わせの妙が、美しい調和を保っている力作。
いいよこれ。

【お気に入り】
③Lily
②カナデルハ
①morning
⑦orange
⑬No Known
⑫ホロスコープ MVは→コチラ。
⑩sputnik note
⑥Just Breathe


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