月村了衛『機忍兵零牙』

月村了衛_機忍兵零牙
月村了衛『機忍兵零牙』 (ハヤカワ文庫JA)

月村了衛の『機忍兵零牙』を読みました。

凡そこの世に非ず、別の世界より来たる者を忍びと云う――数多の次元世界を制する支配者集団「無限王朝」と戦い続ける、伝説の忍び「光牙」。その一人、零牙に与えられた任務は亡国の姫と幼君の護衛であった。亡命の旅路を急ぐ一行の行手に、無限王朝麾下の骸魔忍群が立ち塞がる。激突する機忍法、その幻惑の奥義の数々よ。生き残るは果たして光牙か骸魔か。絢爛たるゴシック世界、生と死の無明の狭間に展開する死闘の粋。


見よこの中二病くさい宣伝文句を。


以下、人によっては「ネタバレ」と感じる部分があると思いますので、ご注意ください。
 ↓



A「○○がやられたようだな…」
B「フフフ…奴は六機忍の中でも最弱…」
C「光牙にやられるとは骸魔のツラ汚しよ…」


みたいな感じです。

世界観としては、時代劇と特撮アクションとSFファンタジーとミステリが合体したような雰囲気で、パーツパーツはあちらこちらから拝借したムードが濃厚ですが、その組み合わせと作者の手腕で独特の世界を構築しているのがなかなか面白い。それほど長くはない尺の中で、語るべきことはコンパクトにまとめ、同時に細かい設定をあまり説明しないことでミステリアスな空気を生んで、というバランスの取り方はさすが脚本家といったところでしょうか。素晴らしい安定感です、月村了衛。

タイトルは「零牙」ってなってますが、ヒーローたった一人の孤独な闘いではありません。仲間の忍びがいて、それぞれ別種の技を使います。…なんて説明をしながらも、少年マンガぽいなぁ、などと半ば苦笑しながらニヤニヤしちゃうような外連味が、本作にはあるわけですね。
『仮面の忍者 赤影』なんて感想がWebには並んでいます。しかし、いまいち『赤影』を覚えていない私が思い出したのは、『銀牙 -流れ星 銀-』ですな。「霊魔軍 vs 黒狼軍」みたいな。そのまんま忍者(忍犬?)の伊賀甲賀設定出てきますし、抜刀牙なんて正に忍術じゃん、という。そういう意味でも本作は少年ジャンプ的な匂いがプンプンする。

そんな活劇中心の物語となる中、「忍びは別の世界(=元の世界)の記憶を持たない」という悲哀の設定を上手く活かし、かつ後半にはミステリ的どんでん返しを巧みにキメる様がなかなか爽快です。必殺技の説明には何を言ってんだかよう分からんものもありますが、それを強引に押し切る勢いと一種独特の空気がある。だって少年マンガに出てくる必殺技の原理を説明しろなんて無粋なことは言えんでしょうふつう(笑)


読後にズシリと残るものがあるタイプの小説ではありませんが、良い意味でのこのバカバカしさは◎。
いやー、面白かった。ラスト、ちょい涙ぐんじゃったもんな。


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