今野敏『廉恥 警視庁強行犯係・樋口顕』

今野敏_廉恥
今野敏『廉恥 警視庁強行犯係・樋口顕』 (幻冬舎文庫)

今野敏の警視庁強行犯係・樋口顕シリーズの4作目、『廉恥 警視庁強行犯係・樋口顕』を読みました。

警視庁強行犯係・樋口顕のもとに殺人事件の一報が入る。被害者は、キャバクラ嬢の南田麻里。彼女は、警察にストーカー被害の相談をしていた。ストーカーによる犯行だとしたら、警察の責任は免れない。被疑者の身柄確保に奔走する中、樋口の娘・照美にある事件の疑惑が……。警察組織と家庭の間で揺れ動く刑事の奮闘をリアルに描く、傑作警察小説。

安定の面白さ。
様式美ですね。


以下、人によっては「ネタバレ」と感じる部分があると思いますので、ご注意ください。
 ↓


『リオ』『朱夏』『ビート』というこのシリーズの3作は、今野敏の作品の中でも最初期に読んだものです。当時はどれも新鮮で面白く、その後、隠蔽捜査シリーズを読んだ時には、(主人公の)竜崎伸也の人物造形が(本シリーズの)樋口顕に似てるな、と思ったものです。そんな中での14年ぶりの樋口シリーズ復活作。この次の『回帰』も2月に単行本が出たようで、これは嬉しいですね。

さっそく3ページ目で、娘の心情を測りかねている樋口が妻に「俺は、照美に嫌われているのか?」と尋ねるくだりで、お帰ってきたな、と感じ、殺人事件の現場に着いた時の「突然に死を迎えた人間は、たいてい糞尿を洩らす。老若男女の区別はない」で、今野敏の警察モノにお馴染みのやつキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!ってなりました。

様式美。
だいたい裏表紙の説明文(↑に掲げたやつ)を読んだだけでも、本筋がストーカーに関わるものじゃないってのは予想できちゃうのが作者の警察モノ。そして、そんな時代劇的お約束に則っていたとしても、面白く読ませることができるのが作者の手腕。

警視庁捜査一課の樋口は位置付けとしては、キャリアの竜崎と、所轄署強行犯の安積班(シリーズ)との間のようなもので、双方の特徴の折衷という感じですね。現場で動き回る部下の顔までは描かず、幹部による事件の筋読みと樋口の心模様を中心に、そこに家族問題を絡めるというのが大まかなところ。自分(=樋口)の班のメンバーの名前さえ出てきませんからね。そこが安積班シリーズとは大きく違います。
シリーズを何冊か重ねると女性メンバーを投入するのも定石で、本作では警察庁から来たストーカー事件に詳しいという若い女性キャリア(刑事指導官という肩書)が登場します。この女性キャリア小泉がなかなかええ仕事しまっせ今回は。

正直言って物語の進め方はいつも通りだし、斬新な何かがあるわけでもないし、捜査本部の面々がこんなに揃いも揃ってミスディレクションしちゃうのなんて説得力ゼロだったりするんだけど、それでも面白いんだよなぁ。事件の行方とかトリックとかじゃなくて、作者の描く人間模様が。
いつか、竜崎伸也と樋口顕と安積剛志が同じ事件で共演してくれたら、あまりのキャラ萌えに私は死んでしまうかもしれない。


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