倉木麻衣「Smile」

倉木麻衣_smile
倉木麻衣「Smile」 (2017)

前作「OVER THE RAINBOW」(2012)から5年ぶり、11枚目のオリジナル・アルバム。



※以下、彼女の熱心なファンの皆さんは読まない方が良い気がします。



倉木麻衣はデビュー時から好きなんですよ。
といっても私の「好き」の部分はちょっと偏っているような気はしていて、付け焼刃的な匂いがプンプンする(失礼)R&Bテイストの楽曲はあんまり好きじゃないです。デビューの時期や巨人・宇多田ヒカルの存在、彼女と比較したような売り出し方のせいで、R&Bアーティストのイメージがついてます(ついてました)けど、要はビーイング系ですからね。根っこは洋楽風アレンジの歌謡曲です。ビーイング系の音といったら管理人の原点みたいなものなので、そりゃあ好きなタイプですよ。特に、デビュー時に立て続けにリリースされた、大野愛果が書いた楽曲に完全に持っていかれたものです。

歌謡曲ですから、歌い手の個性と楽曲の出来&方向性がそのままダイレクトに(個人的な)評価に繋がるわけですけど、ビーイング職業ライター陣が書いた楽曲と共に鷲掴みにされたのが彼女の声。圧倒的な声量の無さ(笑)を以って繰り出される、儚げな歌唱。そこに纏わりつく暗いトーン。これです。

ずばり彼女の最大の強みは、薄幸そうな声音だと思うんですよ。
というか私が魅力を感じている部分がそうだってことですけど。
守ってあげたくなる。俺が支えてやらなけりゃ、ってなる。 ←

私は保有しているCDを管理をするのにExcelでまとめているんですけど、そこにはタイトルやリリース年やお気に入りの楽曲名と共に、そのアーティストのおおまかなジャンルが登録してあります。それを見ると、倉木麻衣の項目は「打ち込み薄幸ポップス」ってなってますからね(笑)。なんじゃそれっていう。

そんな薄幸系シンガーの麻衣さんですから、「Smile」なんてタイトルの作品は似合わないと(私は)思うんですけど、こういった前向きな姿勢のテーマや一緒に盛り上がろう系の曲は結構多いんですよね。Feel fine!とか「Come on DJ あのメロディーが聴きたいんだ(アハン)」とか言ったってどうしても陰りを引き摺っているし、「軽く口笛を吹き 思いきりアハハと笑ってみようよ」なんてそんなのムリムリ。私なんぞはそこに無理してる感を嗅ぎ取るわけです。いや、実際は無理してないでしょうし、全くもって根暗な人ではないと思うんですけど、彼女の声質がそういう妄想を私に植え付けてしまうんだからしょうがない。曲調が如何に明るかろうと、それを抑え込む薄幸オーラがある。


で、本作。
カラフルな作品ですね。初期からお馴染みの徳永暁人(doa)が3曲提供していますが、あとは初めて関わる人ももしかしたら多いのでしょうか、顔ぶれは結構バラバラで、それぞれ1曲ずつ提供しました、っていうような状況。クレジットを眺めても見覚えのある名前が少ないです。従って、アルバム一枚を貫くようなトーンは感じられず、良く言えばバラエティ豊か、悪く言えば雑多で統一感のない作品です。彼女のファンであれば、いくつかは好みの曲が見つかりそうな気がするくらい、各曲の作風は散らしてあります。

ウチのブログ的には、彼女の薄幸ヴォイスが活かされた曲がどれだけあるかってことですけど、コナン君(~ザ・グレートの方じゃなくてチビメガネの探偵の方)テーマ曲の①YESTERDAY LOVEからしてなかなか。音量を小さめにして聴いてると、囁くようなVoが何歌ってるのか分からないほどの弱々しさなんですけど、そこからキャッチーなサビがグワッと立ち上がってくるので、印象はダイナミックで鮮やかです。Gtソロを担当しているのが若きテクニシャン・森丘直樹だったりして、往年の(GIZAレーベル誕生以前の)ビーイングの音を想起させる曲でもありますね。
この、なんとびっくりあの長戸大幸が作曲に加わっています。今でも曲作るんだ、この方。で、御大と共作しているのが、ヴィジュアル系ロック・バンドPurple StoneのVo・keiya(=久保田敬也)。ちょっと脱線しますけどこのPurple Stone、キャッチーなメロディセンスが光ってるバンドで、今はシングルしかないんですけど、アルバムが出たら買おうかと思ってます。つーかライブが楽しそうなのよね。

作曲クレジットを知らずに聴いても、「あぁこの曲良いかも…」って自分の琴線に触れてくるのは徳永が書いたものが多く、これぞ耽美派薄幸バラードの②ミステリー ヒーロー、かつてない力強さを感じさせるロック・チューン⑨Make that changeの2曲はなかなか強力です。後者は、爽やかさよりグイグイくる推進力と疾走感が新鮮で、その曲調に合わせたようにVoも「なんだこんなにパワフルに(彼女内比較)歌えるんじゃん!」と驚くという、珍しい異色曲。薄幸ヴォイスじゃないんだけど、これは◎。意外な一面でした。

薄幸的側面からみると③硝子の微笑が最強ですね。言葉を丁寧に置いてゆくようなこの歌唱、そして儚さと透明感こそが倉木麻衣。もうちょっと温もりを感じるタイプだけど、⑪My wayもなかなかだし、⑫きみへのうたも彼女らしい歌唱を聴くことができる佳曲だと思います。

アルバム中盤にはR&Bタイプの曲や明るめの曲が固まっているかな。
本作一無理してる感があるのは、やはり弾けちゃおう系の⑤SAWAGE☆LIFEでしょうなぁ。応援ソング的な⑦MY VICTORYもやたら前向きなんですけど、こちらは高音部のコントロールに彼女の得意とするところが出ている気がします。


買ったまま積んであるCDもあるけど、近作の中ではお気に入り度は高めです。
良作。

【お気に入り】
⑨Make that change
③硝子の微笑
①YESTERDAY LOVE
②ミステリー ヒーロー
⑫きみへのうた


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