ジャン=パトリック・マンシェット『眠りなき狙撃者』

ジャンパトリックマンシェット_眠りなき狙撃者
ジャン=パトリック・マンシェット『眠りなき狙撃者』 (中条省平 訳、河出文庫)

フランスのロマン・ノワール作家、ジャン=パトリック・マンシェットの遺作となった『眠りなき狙撃者』を読みました。

引退を決意し、新たな世界を希求する殺し屋に襲いかかるさまざまな組織の罠、そしてかつての仇敵たち―「現代フランス文学の極北」といえるほど、限界まで贅肉をそぎ落とされ張りつめた文体が描く、荒涼たる孤独と絶望のドラマ。ロマン・ノワールの旗手・マンシェットの遺作にして、最高傑作。ピエール・モレル監督により映画化。

2015年にショーン・ペン主演で映画化されたようで。
タイトルは『ザ・ガンマン』
なにその安直さ(苦笑)


以下、人によっては「ネタバレ」と感じる部分があると思いますので、ご注意ください。
 ↓


スナイパー物の小説って好きなんですよ。
…って言うほど数多くは読んでいないんですけど。
スティーヴン・ハンターの“ボブ・リー・スワガー”シリーズ、面白いよね。

本作もそんな主人公が狙撃手であるドキドキ&ヒリヒリ感を味わいたくて手に取ったんですけど。

コレ、スナイパー物じゃねぇ。

殺し屋を描いた物語ではあるんですけど、遠くから標的を狙撃ッ!!って感じの話じゃありませんわな。スナイパー物のロマンってのは、この「遠くから」っていう対象との距離、そして殺人者の孤独な環境から生まれ出るものですからね。私の勝手な思い込みによると。

ただ、スナイパー物ではありませんでしたが、なかなか面白かったです。
「限界まで贅肉をそぎ落とされ張りつめた文体」というのはその通りで、裏返せばぶっきらぼうで不親切な文章でもあり、数行読み進めてから何の描写をしていたのかようやく分かるような箇所があちこちにあるので、読み手を選ぶ小説/作家ではあるんでしょう。
また、登場人物は(主人公も含めて)変わり者や敬意を感じることの出来ない人ばかり。心理描写を排し、台詞と人物の動きだけで以って進行する脚本のような文章は、読者の感情移入を阻んでいるようにさえ思えます。
そんな文体が、全く先の読めない緊張感とヒリヒリした空気を生んでおり、そこが大きな魅力ですかね。淡々としたそっけなさが冷徹さに繋がっています。それが気持ち良く感じるってことは、あたしゃあドMなのかもしれませんがまぁしょうがない。ラストシーンに漂う詩情とやりきれなさは白眉で、これどう考えてもハリウッド映画とはアンマッチな感覚だと思いますね。事実、前述の『ザ・ガンマン』は原作である本作とはかなり設定を変えているようで…。私は観てないんですけど。怖いもの見たさで観てみたい気持ちはちょっとだけ、ある。

ところで、主人公が失語症になったのって、愛人の裏切りに伴う心理的ショックからなの? 「敵」を欺くための演技だと思ってたんだけど。どう欺けるのか知らんけどw


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