神林長平『アンブロークンアロー - 戦闘妖精・雪風』

神林長平_アンブロークンアロー
神林長平『アンブロークンアロー - 戦闘妖精・雪風』 (ハヤカワ文庫JA)

神林長平の戦闘妖精・雪風シリーズの3作目、『アンブロークンアロー - 戦闘妖精・雪風』を読みました。
1作目、『戦闘妖精・雪風<改>』の感想は → コチラ。
2作目、『グッドラック - 戦闘妖精・雪風』の感想は → コチラ。

地球のジャーナリスト、リン・ジャクスンに届いた手紙は、ジャムと結託してFAFを支配したというロンバート大佐からの、人類に対する宣戦布告だった。ついに開始されたジャムの総攻撃のなか、FAFと特殊戦、そして深井零と雪風を待ち受けていたのは、人間の認識、主観そのものが通用しない苛酷な現実だった―。『戦闘妖精・雪風(改)』『グッドラック』に続く、著者のライフワークたる傑作シリーズ、待望の第3作。

うぉぉぉおおお難解だぁぁああ!!
でもすんげぇ面白い。


以下、人によっては「ネタバレ」と感じる部分があると思いますので、ご注意ください。
 ↓



前作から10年ぶりの3作目ですが、ストーリー上はほぼ間断無く続いております。
過去2作以上に哲学的な、意識がどうだとか無意識がどうだとかとか、並行宇宙がーとか、○○とは何だーとかいう形のないものに対する議論が、時間と空間を超えた舞台で繰り広げられます。オイラのアタマが悪いのか想像力不足なのか、はたまたその両方なのか、はっきり言って何言ってるのか分からない場面も多いです。いや、説明されている字面は分かるんだけど、その内容を脳内でどうもイメージ化できないというか…。。。
「哲学的な思考が対ジャム戦に有効だ」「人類がこの戦争に負けないためには、こちら人類側も、まったく新しい概念を構築することによってジャムを理解し、同時にジャムの理解を妨げ、反撃するしかあるまい」等、それだけ取り上げると“戦い”を描いている物語に出てくるセリフだとはとても思えませんが、この世界の中ではごくごく自然なこと。

雪風はもはや戦闘機ではなく、自立した“個”として特殊戦のメンバーと“会話”を繰り広げます。少しネタバレしちゃうと、本作って雪風の視点から捉えられた世界を描く場面が多いんですが、第1作と比較するとちょっと違う地平が見えてきた感もあります。零と雪風の関係も新たな局面に突入しますし。時間軸でいうと、500ページに及ぶ本作でほとんど進んでいないという、『ドラゴン○ール』のような展開ではあれど、今後の戦況をガラッと変えるような段階になってきてる(ような気がする)のは興味深いです。

この難解な世界と概念を読者に“翻訳”してくれる、エディス・フォス大尉の存在は登場シーンこそ少なめになったものの引き続き大きいです。また、プロローグとエピローグにしか登場しませんが、“地球人”ジャーナリスト=リン・ジャクスンもしかり。
ラストシーンでの零とリンの短い「邂逅」が湛えるリリシズムと希望には思わず涙出そうになります。

またもや、傑作。


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