デニス・レヘイン『ムーンライト・マイル』

デニスレヘイン_ムーンライトマイル
デニス・レヘイン『ムーンライト・マイル』 (鎌田三平 訳、角川文庫)

デニス・レヘイン(ルヘインと表記されることも)のパトリック&アンジー・シリーズの6作目、『ムーンライト・マイル』を読みました。
海外ミステリのシリーズもので、私が続きを楽しみにしてるのをざっと挙げると、
・ジェフリー・ディーヴァー『リンカーン・ライム・シリーズ』
・R・D・ウィングフィールド『フロスト警部シリーズ』 … あと残り2作か?
・エリック・ガルシア『恐竜ハードボイルド・シリーズ』 … 生きてる?

そして、デニス・レヘイン『パトリック&アンジー・シリーズ』といったところでしょうか。
でもこの6作目がこのシリーズの最終作に…(涙)…
ストーリー的には4作目『愛しき者はすべて去りゆく』の続編になります。このシリーズは傑作しかありませんが、本作も傑作でした。


以下、人によっては「ネタバレ」と感じる部分があると思いますので、ご注意ください。
 ↓

日本のミステリのレベルは非常に高いと思いますが、ちょっと物足りなく感じる面もあって、作品に複数の感情というか作風を盛り込むのがやや苦手かなと感じています。何を言ってるかというと、「喜怒哀楽」でいうと徹底的に「喜」の作品や「怒」の作品を書くのは得意。それは「哀」「楽」もしかり。でも「喜」であり「怒」でもあるという作品はやや不得意なのでは、と思うのです。増してや「喜」and「怒」and「哀」and「楽」なんていったらお手上げでしょう。上記の「作品」の部分を「人間」に置き換えてもいいです。本来人間は多面的な感情を持つ生き物でしょ。作中で色んな感情を上手く書き分けて欲しいと思うのです。
その点については海外には優れた作家が多いなぁと感じます。(※勿論感情の書き分けが得意な日本人作家も存在します。それについてはまた別途。)そしてデニス・レヘインはその第一人者といってもいいでしょう。パトリック&アンジー・シリーズには、どの作品をとってもユーモア、怒り、喜び、哀しみ、諦観、執着、憧れ、蔑み……といった様々な感情が溢れており、そのページの中にはパトリックが、アンジーが、ブッバが生き生きと存在しています。

過酷な事件ばかり(笑)を手掛けることにより、シリ-ズを追うごとにパトリックとアンジーは肉体的にも精神的にもボロボロになってきました。それでも“私立探偵”という生き方や危険に対して「中毒」になっている二人は別の道を選ばないで(選べないで)いました。しかし、本作では二人は結婚し、小さな娘もいる、“普通”の家庭を築いています。※アンジーのことを「妻」と呼ぶのに違和感が…

解説でも引用されている作者の言葉によると、
「シリーズ物には、しかるべき巻数というものがあると思っている。……最終巻が何巻目になるかはまだ分からないが、それが急速に近づいていることも事実だ。ただし、わたしは、最終巻で主人公たちが死ななければならないとは思っていない。彼らはただ、去っていくだけだ」

作者にとっても、愛着のあるパトリックとアンジーにしかるべき引き際を用意するつもりがあり、それが本作の結末になりました。最終章、特にパトリックの独白部分の文章がなんと素敵なことか。何行にもわたって引用したいくらいですが止めとく。
(P429~P430…個人的備忘録)
読者にとって次作が読めないのは残念なことですが、パトリックとアンジーが幸せになってくれるならそっちの方が良い。そんな風に作中人物に感情移入してしまうほど、デニス・レヘインの書く人物は魅力的です。いつかシリーズ6作をぶっ続けで読んでみたいな、と思います。
デニス・レヘインとパトリックとアンジー、お疲れ様でした。あと訳者の鎌田三平氏も。鎌田さんの訳は素晴らしかったです。

おしまい。
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