陰陽座「迦陵頻伽」

陰陽座_迦陵頻伽
陰陽座「迦陵頻伽」 (2016)

妖怪重金属・陰陽座、2枚同時発売となった「風神界逅」「雷神創世」に次ぐ、13thアルバム。
今までで一番キャッチーさが薄く馴染みのない語感のアルバム・タイトルですが、「迦陵頻伽(かりょうびんが)」とは極楽浄土に住む半人半鳥の生き物で、非常に美しい声で鳴くんだそうな。迦陵頻伽った黒猫さぁん(Vo)をフィーチャーしたジャケがまた美しいですね。かつ、つよそう。HPとMP高そう。

11&12thの感想で、
 ・2枚ともややおとなしめの作風。
 ・瞬火のヴォーカル・パートが少ない。

と書きましたが、その特徴は本作でも踏襲されています。

迦陵頻伽という美声を持つ伝説上の生き物をテーマに設定したことで、「迦陵頻伽=黒猫」という図式が容易に見えてきますし、それに則った作風なればこそ上記特徴は納得いきます。ただ、収録曲の硬軟/動静のバランスとしては、「風神」よりは「雷神」に近いですかね。おとなし過ぎるわけじゃない。

あと、重要なポイントは、引き続き“シンフォニック路線”を堅持してるってことでしょうね。前作&前々作と同様、阿部雅宏さん(サポートKey)大活躍。Keyはかなりの分量と重要度を以って使用されていますが、ロック・バンドとしての演奏がそれに食われていない。シンフォの向こう側に、妖怪重金属の「重金属」たる部分がしっかりと息衝いていることに気づきます。陰陽座はそこが信頼できるんですよね。
今回もリフは強力ですし。さすが稀代のリフ・メイカー=瞬火(Vo&Ba)。いや、リフ・メイカーというか、リフ・リサイクラーというか(?)。

全曲瞬火作詞作曲ということで、新鮮味は少ないかもしれません。
でも、この完成度を前にしてはぐぅの音も出ません。
それくらいの傑作だと信じます。コンセプト・アルバムである「鬼子母神」(2011)を別にすれば、個人的には久しぶりに「コレだッ!!」という強烈な出応えを感じた作品で、最高傑作と評する人がいても全くおかしくない出来。能天気な(と敢えて言いますが)お祭り曲が無いのも好みですね。

新鮮味は少ないと言っても、陰陽座の場合、(以前にもどっかで書いたように)既に音楽性の幅はめいっぱい広がっているわけです。どんな音楽ジャンルの要素を注入しようとも、その曲を妖怪重金属色に染め上げちゃうんじゃないかと思わせる個性と手腕こそが驚異的。すると逆に、散漫にならないこの統一感こそが凄ぇという感想にならざるを得ません。
しかもこのバンドの場合、すげーのは「歌モノHR/HM」という路線をガッチリ堅持した上での幅広さっていう点ですよね。例えば、BETWEEN THE BURIED AND MEとかPROTEST THE HEROみたいなアヴァンギャルドで何でも有り、雑多性こそが肝である音楽性ならともかく、陰陽座はインスト面より明らかに黒猫が歌うメロディを重視してますし(←演奏を蔑ろにしているって意味では勿論ない)。
そんな中にも、テーマの掘り下げや歌詞の組み立て方、楽器周りの試行錯誤等々、チャレンジングな姿勢が垣間見えるし、またそれがしっかりと結実してるってのがやばい。やばいって言葉すら生ぬるい。


聴いていると、何度も何度も鳥肌が立つ。
とにかくメロディが強力だし、フックの設けられた箇所が多いというか、「おぉこの展開ィ!」みたいに琴線に触れるパートがあちこちにあります。隙の無さでは彼らの作品の中でもトップクラスでしょう。めちゃくちゃ丁寧に作られてるのが分かるし。
そして、まだこれ以上巧くなる余地があるのかと驚愕する、黒猫の表現力の高さよ。本作ではファルセットを使う場面がやや多いように感じますが、その説得力には唸らされるばかりです。HR/HMというジャンルではとりわけ使い方の難しい歌唱法だと思いますが、そこに確とした必然性があるのが彼らの楽曲。そしてそれに完璧に応えるのが稀代の歌姫・黒猫。「姫」と呼んでいいかの妥当性はともかくとして(笑)

演奏面でいうと、曲によってはさらなるチューニングの下げを敢行していることですかね。あと7弦ギターの導入。5弦ベースは前からだったかな? ともあれ、ヘヴィさへの追求は引き続き行われています。前述のシンフォとのバランスも良好。まぁダウン・チューニングや低音弦を使用したとしても、単純に聞こえ方が重くなるわけじゃないのが陰陽座ですけどね。
あと本作、ツインリードはやや控えめかな、と。


以下、1曲ずつ頻伽らせていただきます。

①迦陵頻伽
薄いヴェールの向こう側から聞こえてくるような黒猫の声が、今まさに卵から孵らんとする迦陵頻伽の様子を歌った、シンフォニックでミステリアスな曲。オープニングのヴィジュアル喚起力、じわじわと丁寧にメロディを編み上げてゆきエンドGtソロへと辿り着く展開に、瞬火の、そして黒猫の、イメ-ジを具現化する能力の高さが現れています。そしてそれこそが、15年以上バンドを牽引してきた強力な武器であることがよく分かる。
黒猫が迦陵頻伽を演じるだけでなく、迦陵頻伽が陰陽座というバンドそのものであるということをも表明した歌詞に、ファンならば感ずるところがあるのでは。

②鸞
鳳凰が歳を経ると鸞になるとも言われるんですと。
前曲からの繋ぎ方が異様にカッチョいいアップテンポの曲。典型的な妖怪重金属曲ですね。今までに何曲も発表してきたタイプですが、クオリティを維持しながらこういう曲を量産できることもまた才能でしょう。

③熾天の隻翼
まず曲名カッチョ良過ぎだろう、と。
この曲のヘヴィなメタル・リフと厳粛な弦の響きが互いに絡みつくイントロを聴いて、「このアルバムもしかして凄いんじゃなかろうか!?」と思いました。というか、凄いと確信しました。「雷神」収録の天獄の厳霊に通ずるテーマを持つ曲だそうですが、曲調も似ていますね。キラーッ!
睥睨しているような、突き放しているような黒猫の歌唱に漂う威厳レベル(?)は尋常ではなく、サビのファルセットの崇高な響きはこりゃあ何事だッ!? 「少し 黙りおれ」のところは最高。はい、黙ります。

④刃
と来て、この曲に至るまでの怒涛の畳み掛けよ。しなやかに駆ける、メロディックな胸キュン・チューンです。彼らの名曲群の中でも屈指のサビメロだと思いますね。バックのキラキラとした和音階も効いてます。もう切なすぎてたまんねぇ!
刃♡ はぁ…好き♡

⑤廿弐匹目は毒蝮
上で新鮮味が少ないとか書きましたけど、この曲のリズムはなかなか新しいかも。(サポートDrの土橋)誠氏大変そうね。執拗に刻み倒すリフ+前曲とは別人のようなふてぶてしいさを醸し出す黒猫のVo+掛け声系コーラスが緊迫感をもたらす、スラッシュとジャパメタを合成させたかのような曲。招鬼と狩姦のGtが絡み合いウネリまくる間奏もクール極まりない。
毒蝮♡ はぁ…好き♡

⑥御前の瞳に羞いの砂
リフ物ハードロックに乗せて歌うは、砂かけ婆っす。しかもその乙女心っす。言葉遊びも楽しい。こういうタイプの曲だと招鬼がソロを弾きそうな気もしますが、ここでは狩姦が流麗な技巧をキメていてフックになっています。
ラストの「やん!やん!やん!」が可愛すぎだろオイ!
砂かけ婆♡ はぁ…好き♡

⑦轆轤首
このイントロというかリフで思い出したのは、組曲「九尾」~玉藻前ですね。ダンサブル歌謡曲。このメロディ展開は天才的だと思う。また、歌詞の言葉選びがキャッチー極まりないんだ。ラスサビ前の「間抜け面した~」パートの声音が新鮮な空気を吹き込んでいるのもいい。
あぁこの曲も切なすぎてたまんねぇや! あと、ラストの嬌笑と「ン…フフ♡」ね。
轆轤首♡ はぁ…好き♡

⑧氷牙忍法帖
忍法帖かくあるべし!!!
久しぶりだなぁ、疾走チューンである忍法帖シリーズは。こうでなきゃ。
神鳴忍法帖の主人公である女忍者をテーマにした曲。キラーっすよ。狩姦による忍法ソロも(氷河だけに)クールにキマってます。なんだか陰陽座に出会った頃のトキメキを思い起こすわぁ(笑)
ホーロドニースメルチ!!

⑨人魚の檻
タイトルからしてそれと分かる、プログレメタル的緊張感を湛えた大作。7分ちょい。
愛する伴侶との死別を受け容れられず、妻に人魚の肉を食わせて不老不死にさせてしまった男。速度/温度/明度の異なる様々なパートを、物語に合わせてスムーズかつダイナミックに繋げるといういつもの手法でありながら、いや、いつもの必殺パターンだからこそ、瞬火のストーリーテラーっぷりと、バンドの物語構築術が結実した名品に仕上がりました。喜怒哀楽、4つの感情だけでは描くことのできない人の心の機微を、ここまで的確に捉えて楽曲に投影することのできるバンドがどれほどあるのかって話っす。

⑩素戔嗚
音の質感でいうと本作で最もヘヴィな曲ですかね。リフを後ろから煽り立てるシンフォも実に重く、同時に神々しい。黒猫の歌唱由来のゴシカルな感触もありますね。5分半に満たないランニング・タイムですが、楽曲展開も込められた感情も起伏が大きくドラマティックで、聴き応え抜群。

⑪絡新婦
黒猫の表現力が全てを持っていってしまう、美しいバラード。2nd「百鬼繚乱」(2000)収録の歪む月に通じるような激情を感じて、歪む月っ子としては「哭きながら 逝く」しかない。歌詞の美しさも白眉。

⑫愛する者よ、死に候え
アルバム終盤の印象をメロディック・メタル側へと一気に寄り切るキラー・チューン。山田風太郎の『甲賀忍法帖』、およびコミック『バジリスク』をテーマにした楽曲で、同じテーマである甲賀忍法帖がヒロイン・朧の視点からの曲だったのに対し、こちらは主人公・弦之介から見た曲。視点が逆だからサビは瞬火ね。
荒々しさを剥き出しにした彼のVoは、同時に耐え忍んでいるかのようなやりきれなさを秘めています。その歌が、激しさを前面に出した曲調ではなく、逆に端正なメロディに乗るからこそ、弦之介の心情がより強く聴き手に伝わってくるという仕掛け。すげぇ。この曲のみならず他の曲でも言えることですが、黒猫だけでなく瞬火も超一流のヴォーカリスト/表現者ですからね。つよい。
バックの黒猫のファルセット・コーラスがまた効いてるんだ。

⑬風人を憐れむ歌
どうせこの曲で扇子振るんだろ的な存在。ただし、所謂“お祭り曲”ではなく、歌詞にファンのことを絡めたほんわかピースフルなポップ・チューンです。
アルバム後半は重く暗い心模様を映した曲が続きますが、この曲がフッと気持ちを持ち上げて終わってくれるので、必要以上にドンヨリした聴後感にならないことはポイント。繰り返し聴こうって気持ちになりますから。


正直言って驚きました。
13曲も入っているのにこのダレなさ。この完成度。
凄いよこれ。

孤高。

【お気に入り】
⑦轆轤首
④刃
⑫愛する者よ、死に候え
③熾天の隻翼
⑧氷牙忍法帖
⑨人魚の檻
⑪絡新婦
⑤廿弐匹目は毒蝮
⑩素戔嗚


あぁ…ほとんどだ…(笑)


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COMMENT 2

DD  2016, 12. 22 [Thu] 17:28

 瞬火のコーラスが少ないのはタイトルも相まってのことでしょうし、どうせliveでは十分と言っていいほどフィーチャーされるのですから、それも踏まえてのこと、とみるのですが。

 それでも、かなりの範囲を網羅してる彼らの音楽性の範囲で、ダブりがないのもすごいですね、13曲出ても。

 序盤緩く始めて、2,3とスピードチューンが来る展開は、「魑魅魍魎」の展開に、最近の2,3作の雰囲気をまぶしている感もありますよね、それでも他の追随を許さない表現を示してるのですから、さすが陰陽座、を示してますね。

 年末はとりあえず全曲やって、来年はそれから絞り込んでやっていくんでしょうね、今までの傾向を考えると。

 お気に入り・・1,2,4,7,9,11,12(現時点で、また変わるかいくつか加わりうるのでしょうが)

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ヒゲ・スカイウォーカー  2016, 12. 25 [Sun] 19:29

DDさん、

そうなんです、13曲とも違う印象である点が凄いですよね!かつ、トッ散らかっていないという。
さすがです。この完成度には恐れ入りました。

来年上半期にはツアーをやるそうですけど、そこでは本作から曲を入れ替えつつ、過去曲からも色々織り交ぜてやってくれると思います。

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