ピエール・ルメートル『傷だらけのカミーユ』

ピエールルメートル_傷だらけのカミーユ
ピエール・ルメートル『傷だらけのカミーユ』 (橘明美 訳、文春文庫)

ピエール・ルメートルの『傷だらけのカミーユ』を読みました。
「カミーユ・ヴェルーヴェン警部」シリーズの3作目にして、完結編。
1作目『悲しみのイレーヌ』の感想は → コチラ。
2作目『その女アレックス』の感想は → コチラ。

カミーユ警部の恋人が強盗に襲われ、瀕死の重傷を負った。一命をとりとめた彼女を執拗に狙う犯人。もう二度と愛する者を失いたくない。カミーユは彼女との関係を隠し、残忍な強盗の正体を追う。『悲しみのイレーヌ』『その女アレックス』の三部作完結編。イギリス推理作家協会賞受賞、痛みと悲しみの傑作ミステリ。

あれれ、前に「ピエール・ルメートル」のWikipediaを見た時と情報が書き変わってるな。このシリーズ、全5作くらいあるように書いてあったと記憶してるんだけど。だからこの『傷だらけのカミーユ』が出ると聞いた時、「え、2作目から間をすっ飛ばして最終作を刊行するの?」って思ったんですよね。ただどうやら、三部作という構成で、あと残った中編作品は“番外編”なんですと。
まあいいや。
内容が面白いなら、それに越したことはない。

あ、このシリーズ、いきなり本作から読むのはやめた方がいいですよ。


以下、人によっては「ネタバレ」と感じる部分があると思いますので、ご注意ください。
 ↓




読後感がすこぶる悪いですね。

『悲しみのイレーヌ』『その女アレックス』ほどのひっくり返しは無く、ミステリとしての出来は及ばないものの、やはりこの作者は話のもってゆき方が抜群に巧いので、サスペンス物としては流石の仕上がりだと思います。
後味は『イレーヌ』も『アレックス』も悪かったんですよ。ただ、その2作は謎解き部分のアッという驚きの強さが、物語の救いの無さを中和していたようなところがあって、そこが素晴らしかった。対して本作はと言うと、「あぁ…こう来るのか…」と感心する部分はあれど、ひたすら運命に翻弄されるような主人公カミーユの姿が、ただただ痛々しい…。。

カミーユ個人の物語になっているんですな、本作。
前2作は捜査陣「カミーユ・チーム」としての魅力が強くって、(広義の)警察小説シリーズ物が好きな私からしたら、そこが好みだったんですが、この最終作はチームプレイではなくなった。そして、早い時期から三部作の全体構想が出来ていたとのことですが、シリーズ物として捉えると「人事異動」の展開があまりにも速過ぎる。

アルマンは亡くなり(いきなりのビックリ・ポイント!)、親友であり上司だったル・グエンは昇格して「チーム」からは遠ざかった。マレヴァルはいなくなっちゃってるし、あとはルイだけ。でも本作のルイは“事情”を知らされておらず、物語の本筋には関わってきません。ルイやル・グエンがカミーユに向かって再三、「助けはいりませんか?」とか「助けを求めてくれてもよかったろうに」とか言うシーンにはなかなか厳しいものがあります。


今さらながら、ルメートルの作風ってあんまり好きじゃないような気がしてきました(苦笑)
本作を読む前に、ノンシリーズの『死のドレスを花嫁に』を手に取ったんですが、あまりにも読みにくくって、途中で断念したんですよね。で、ネタバレ・ブログをザッと見て読んだ気になったw 本シリーズとは訳者が違うことも大きかったと思いますが、どうも読んでいて気が滅入る作家です。ここらへん、アメリカの作家とはちょっと違う感じもありますね。大雑把な捉え方ですけど。

ま、もし万が一、「カミーユ・ヴェルーヴェン警部」シリーズが復活したら読むでしょうけどね。個々の登場人物は、“これっきり”にしてしまうには惜しい人達ばっかりだから。

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