原田マハ『楽園のカンヴァス』

原田マハ_楽園のカンヴァス
原田マハ『楽園のカンヴァス』 (新潮文庫)

原田マハの『楽園のカンヴァス』を読みました。
名前は以前から知ってたけど、ここで初めて読む作家です。

ニューヨーク近代美術館のキュレーター、ティム・ブラウンはある日スイスの大邸宅に招かれる。そこで見たのは巨匠ルソーの名作「夢」に酷似した絵。持ち主は正しく真贋判定した者にこの絵を譲ると告げ、手がかりとなる謎の古書を読ませる。リミットは7日間。ライバルは日本人研究者・早川織絵。ルソーとピカソ、二人の天才がカンヴァスに篭めた想いとは―。山本周五郎賞受賞作。

とても面白いですね。
読みやすいですし、普段読書しない人や、ミステリ物はあまり読まないって人にもオススメ。


以下、人によっては「ネタバレ」と感じる部分があると思いますので、ご注意ください。
 ↓



原田マハ著『楽園のカンヴァス』に登場する絵画のまとめ、なるまとめページがあって、便利です。
→ コチラ。

読み始めてすぐに思いついた言葉が、「絵画ハードボイルド」でした(笑)
「実は主人公は過去を背負った凄腕の○○」という設定がなにやらハードボイルドちっくだし、好敵手の存在がまたその印象を強める。

…んじゃないかと思っていた導入部ですが、実はそんなことなかった。
本書の基本構造として、第一章と最終章は早川織絵の視点からの物語進行ですが、メインとなる第二~十章は17年前の出来事で、こちらはティム・ブラウン視点での物語となります。で、ティムが割と「ふつーの人」で、次々と降りかかって来る奇妙な事態やトラブルに右往左往する様が読者の共感を得る、そんな人物造形になっているので、ハードボイルドっぽくはなかったです。ティムの目を通して描かれる織絵が、ミステリアスな魅力を放っているところは良いですね。

人が殺されるような事件ではなく、由来不明の一枚の絵の真贋を見極めるという「大きな謎」を主軸にし、その周囲に複数の「小さな謎」をちりばめる。決して派手な展開を売りにする作風ではないのに、グイグイと物語に引き込まれます。伏線の配置の仕方とその回収方法、謎の設定の大胆さ、作者の確かな筆力ゆえでしょうか。

読後にじんわりと温かい気持ちになる。
作者による、芸術作品とそれを生み出す情熱に対する愛のこもった視線、そして瑞々しい感性が封じ込められた傑作だと思います。

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