伊坂幸太郎『死神の浮力』

伊坂幸太郎_死神の浮力
伊坂幸太郎『死神の浮力』 (文春文庫)

6つの短編を収めた『死神の精度』に続く、シリーズ2作目『死神の浮力』を読みました。
前作は、好きな作家である伊坂幸太郎の作品群の中でもトップスリーくらいに入るくらい好きだった作品。…という風な位置付けになっている。自分の中では。正直、内容はあんまり覚えてなかったんですけど(笑)

娘を殺された山野辺夫妻は、逮捕されながら無罪判決を受けた犯人の本城への復讐を計画していた。そこへ人間の死の可否を判定する“死神”の千葉がやってきた。千葉は夫妻と共に本城を追うが―。展開の読めないエンターテインメントでありながら、死に対峙した人間の弱さと強さを浮き彫りにする傑作長編。

今度は長編。
読んでいるうちにだんだんと前作の雰囲気、思い出してきたわー。


以下、人によっては「ネタバレ」と感じる部分があると思いますので、ご注意ください。
 ↓


前作には短編集なりの良さが、本作には長編なりの良さがあると思います。
テンポと切れ味が良く、それぞれの「編」の連なりが最後に感動を生む前作。
笑いのツボは「繰り返し」だという点を的確に押さえ、重いテーマの中に爽やかさな空気を吹き込んだ本作。
共に、傑作ですわ。

作者の強みは、メインのプロットとは関係のないところにニヤリとしたりジ~ンとくるエピソードを巧みに挿入できるという才能ですが、この点がより活きてくるのが長編でしょう。それによって、登場人物への愛おしさが募り、ひいては作品への愛着が増すという。
安易な設定や、ちょっと無理矢理っぽかったり説得力の無い展開が見受けられたりもするんですけど、そんなことは些細に思われるほど、あちこちに仕掛けられた会話の妙やちょっとしたエピソードに心揺さぶられる。

死神である千葉と山野辺夫妻のチグハグな会話の面白さには最初から最後までヤラれるし、千葉の独白パートでの飄々とした地の文も良い。何回にも分けて登場する山野辺遼と父親とのエピソードは物語の根幹を成してるし、ある曲が夫婦の頬に涙を光らせるシーンの美しさは白眉。
こういう、心に残るシーンが山ほどあるのよ。私、本を読んでて気に入った場面やセリフがあると、栞代わりにページの上の端っこを折っておくんですが、その折り目がめちゃくちゃある。本作だけじゃなくて、伊坂作品にはそういう後で見返したいシーンがとても多い。で、かつ、そういうシーンって、作者のモチーフの使い方が巧いせいでしょうけど、物語の流れの中で読んでこそ二ヤッとしたり感激したりするものなので、一つ一つ例を挙げて説明してもあんまり面白くは感じてもらえないものだと思うのよね。実際に読んでもらわないと。

しっかし、最終章の最後のセリフからのエピローグが泣けるなぁ…。。。。

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