イチヂク「嫐」

イチヂク_嫐
イチヂク「嫐」 (2016)

プログレッシブヤンデレバンド・イチヂクの2ndフルアルバム。
「嫐」は「うわなり」、ね。歌舞伎の演目だそうな。両手に華ですよ。字面は。

2014~2015年に掛けてリリースされた3枚のシングル(それぞれ3曲入り)から、計6曲が再収録されています。全部で13曲のアルバムなので、半分弱が既発曲。…といっても、それらシングルは、ライブ会場での物販やバンドの通販を除くと、発売当時はタワーレコード渋谷店でしか扱っていなかったから、持っている人はそれほど多くないかもしれんな、と。


1stフル「メス」(2013)よりメロウな作風になっていますかね。
1曲目の①ロストがいきなりアルバムの最後かと思うようなバラード(狂おしいほどの叙情をぶつけてくる素晴らしい曲!)だし、後半にジワジワ哀感を重ねてくる曲が多いこともあって、そういう印象です。
ただ、バラード系の曲が多いといっても、このバンドの場合、聴感上の攻撃力は落ちるものの、むしろ精神的な攻撃力は上がるというか、穏やかでピースフルな楽曲に仕上がることはなく、反対に暗く重い。④女子力⑤ピザ食べたい⑧ゆるしてちょ♡等、ファンキーで明るい曲もあるけど、それらの軽妙さを簡単に塗り替えるほどの病みっぷりが強いです。
全体としては、濃度が濃く、重いアルバムですね。

歌詞は相変わらず、視線/言葉選び/題材選び、全てにおいてキレまくってます。このアルバムの(このバンドの)「重さ」ってのは歌詞に依っているところも大きいわけで、これは何故かって言ったら、多くの歌詞が依存や執着をテーマにしているからだと思うんですよね。恋愛相手への依存(執着)とか、仲間意識への依存とか、自分の存在証明や居場所への執着とか、ピザへの依存()とか(笑)。

しかしの寸劇パートには笑うなー。以前、シングル「皎」(2015)購入時の特典CDとして、お前kill youを菊池梢(Vo&Gt)じゃない男Voがアムロ・レイ/HYDE/河村隆一等々の物真似をしながら歌っていう、ニヤニヤせざるを得ないヴァージョンがあったんですけど、このでもアムロ・レイ(というか古谷徹)が降臨してます(笑)。これ、誰がやってるんだろ? 出水健一(Ba)?
その寸劇セクションから、何故かホーンがパンパカパーンってなる明るいパートに突入するのもカオス。
※2016/10/5追記 : アムロ声は佐々木健太(Dr)が担当していると、オフィシャルTwitterアカさんから教えていただきました!

たまたまを例に挙げましたが、このバンド、どの曲も間奏の雄弁さにはハッとさせられるんですよね。1曲の中に同居させるのには無理があるようなパート同士、それらをスムーズに繋ぐセンスが秀逸です。また、Gt,Ba,Dr以外の音の入れ方がやたら上手いですね。ピアノやスペーシーなシンセ、ホーンや尺八、琴だったり…etc…。それら作り込み部分の印象が強いにも関わらず、バンドの出音が全く負けていないのは、出水のBaを中心にした強力なアンサンブルがあるからですね。
また、作風ゆえでしょうか、菊池の歌唱力が光る場面が多いです。静かなパートでの情感や色気、堂々たる歌い上げにはかなりの成長を感じるし、声自体の力強さも随分と増したと思う。


より成熟した、でも鋭さは失っていない充実作。
前作より好きかな。

【お気に入り】
①ロスト
⑦お前kill you
⑨累
⑪愛してると言ってほしい
⑥芋虫
③自撮少女

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