スティーヴン・キング『ジョイランド』

スティーヴンキング_ジョイランド
スティーヴン・キング『ジョイランド』 (土屋晃 訳、文春文庫)

スティーヴン・キングの『ジョイランド』を読みました。
キングにしては珍しい、ハードカヴァーを経ないでいきなり文庫化。ヴォリュームも抑えめで、サクッと読みことが出来ます。

海辺の遊園地、ジョイランド。彼女に振られたあの夏、大学生の僕はそこでバイトをしていた。そこで出会った仲間や大人たちとすごすうち、僕は幽霊屋敷で過去に殺人があったこと、遊園地で殺人を繰り返す殺人鬼がいることを知る。もう戻れない青春時代の痛みと美しさを描くキングの筆が冴え渡る!感涙必至の青春ミステリー。

「巨匠が贈る感涙必至の青春ミステリー」らしいですが、
 またまたぁ、盛り過ぎでしょ?
って思ったら、ほんとに感涙した(笑)。ちょっとだけね、ちょっとだけ。


以下、人によっては「ネタバレ」と感じる部分があると思いますので、ご注意ください。
 ↓


スティーヴン・キングのことを「恐怖の帝王」と呼ぶことがままありますが、常々、この愛称(?)って的外れだと思ってるんですよね。もっと言うと、キングの作品を読んだことのない人に対しては、的外れどころか邪魔してるとさえ思う。

キング本人の思惑は置いといて、この人の作品って徹底的に怖がらせるところに面白さがあるんじゃなくて、ホラーを媒介にして人間自体を描いたり、超自然的な環境にぶっ込まれた時の心理や行動を描いてるんであって、要は彼の書く「人間」(時には人間以外も含む)が面白いんですよね。…って思ってます。正直、キングの作品であんまり「怖い」って思ったことないし(笑)。私の想像力が貧困なのかもしれんが。個人的にはホラー作家というより、広義のエンタメ作家だと捉えてますし。

ということで、本作、「人間」を描かせたら右に出る者のいないキング御大の魅力がストレートに出ていると思います。
大雑把に括ると青春小説とでも言いましょうか、ジョイランドという遊園地でバイトする主人公デヴと、その周りの人間模様を描いた作品です。ミステリの要素や超能力的な色づけもあるんですけど、それはメインじゃない。
デヴがジョイランドでの仕事を通して失恋を克服してゆく(忘れてゆく)過程、職場の同僚や車椅子の少年マイクとその母親アニーとの交流、父親との絆等々、一つ一つのエピソードが生き生きと描写されており、面白いのなんの。トリックやアクション、謎解きを以って物語をリードするタイプではない小説にとって、生命線は如何に登場人物を魅力的に描くかということでしょうけど、本作はその手本のようなもの。もう一人一人が愛おしくてしょうがない。
それだけに哀しい結末には胸が締め付けられるわけだが…。。なんて詩情豊かなラスト、、、

さすがキングたる、素晴らしい作品でした。

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