MAHATMA「Orchestra of the Life」


MAHATMA「Orchestra of the Life」 (2016)

群馬のテクニカル・雑食ロック・バンド、MAHATMAの2ndフルアルバム。

前作「Re:generation」(2014)は、半分以上の楽曲がWalkure Recordsに所属する前からのマテリアルでしたが(新録&リミックス有り)、本作は全編まっさらな新曲ばかり11曲(イントロSE1曲含む)が収録されています。
前作の記事で、アルバム・タイトルについて、
ジャケのタイトルの後ろのところ、「01」ってなってる? じゃあ、次作は「Re:generation 02」か?
等と書きましたが、そんなことはなかったわけでして。

前作リリース後に、KeyのRiekoが脱退しました。したがって今のメンバー構成は、Hideki(Dr)とTsubasa(Gt&Ba)の兄弟、それとVoのNaNaという3名です。
Riekoの脱退が本作の作風にどれだけ影響しているのか、そもそもMAHATMAの音源制作における彼女のインプットがどれほど大きかったのか分かりません(ライブにおける貢献には相当なものがありましたが)。ただ、本作について言えば、「Hideki&Tsubasa兄弟によるアルバム」ってイメージは強いですね。2人の執念の作り込みっぷりが伝わってくる。
もちろんこのバンドの場合、(例えばDEF LEPPARD的な)ビッグ・プロダクションによる作り込みというよりは、家内制手工業的暖かみ(?)を感じるというか、そんな良い意味でのこじんまりとした作風なんですけどね。多数のゲストを迎えて制作されている作品ではありますが、それであってもなおそういった感覚は保っている。
端からライブのことは考えていないか、音源とは別物として考えている、そんな風にも取れますかね。まぁMAHATMA(特に演奏陣)は、ライブの方がずっと凄いという点では「ライブバンド」ですけど、ライブを中心に据えてバンド活動をしているという意味では全くもって「ライブバンド」ではないしね。誤解を恐れずに言えば、あんまりバンド作品らしくはないんですな。そのことが本作の魅力をスポイルするものだとは思いませんが。

音楽的には、「カラフル + テクニカル + 高いアレンジ能力 + 異国情緒」という私が考えるこのバンドの特徴はそのままに、一気にシンフォニックさが増しています。プログレメタルというより、シンフォ・ロック。
「作り込み」という部分とも関わってくるし、アルバム・タイトルの「Orchestra」にも繋がってくる音楽性なんですが、元メンバーのSatokatzによるオケ・アレンジが肝になっている曲がいくつかあって、その印象が濃厚なせいもあります。もろシンフォな序曲①Overture for Romance~オケの作り込みが秀逸な哀メロ・リードトラック②Romanceで始まり、オケをバックに数十人のゲストが複数言語でスポークンワーズ/讃美歌的なコーラスを重ねる⑪COSMO GRAPHIC ~愛は世界の始まり~で締めくくるというアルバム構成も、シンフォ・ロックという印象を強めています。

HR/HM色は薄いですね。このバンドの場合、Hidekiがそういうタイプの曲を書かなけりゃあまりメタリックな作風には振れないのかもしれませんが、彼は今回シンフォ・チューンとバラード系の曲を中心に提供している印象です。まぁそれでもこのバンドの場合、随所に器楽的な聴き応えのあるパートが挿入されていますけどね。

演奏面での技巧に関して言えば、ポップなメロディの曲ほどそれが際立ってるかもしれません。Tsubasaが作った曲にそういうのが多いんですな。MardelasLIGHT BRINGERALHAMBRAのhibiki(Ba)が参加している③Brand New Worldこそロマンティックな響きが支配的(ただ、同時にめっちゃ技巧的でもある)ですが、くだけた言葉を詰め込んだ歌詞がチャラさ 軽妙さを感じさせる⑥セレクトや、ヒネッたポップ感を持つ⑦ラッキー☆セブンでは、リズム隊を中心に相当鬼畜なプレイが連続します。もう唖然とするほか無いんですが、そこはNaNaのVoがスッと聴き易くまとめてバランスを取っているから、ハ-ドルは高くない。むしろ、低い。

前作辺りから力強さを増してきたように感じるNaNaのVoですが、本作ではそれほど「力強さ」にフォーカスした歌唱ではないですね。Voパートの録音自体、あまり生々しくなく演奏の上にフンワリと乗ってくるように録られていますし、収録曲がパワーを求めてないというか、優しく叙情的な響きの方が強い。④Last Tears⑤精霊歌⑧銀河の果てからといった、シンフォに包まれる哀メロ曲やバラードでの歌唱なんて特にそう。


収録曲の録音時期/環境によって音質やバランスがバラバラだった前作と異なり、おそらくは全てを兄弟のコントロール下に置いたんでしょう、アルバム一枚を通して統一された音質が保たれています。Voは柔和ですが、逆にDrの録音は生々しいですね。生演奏の雄弁さが際立つように、もう少しシンフォは控えめにしてほしかったと感じる部分もありますけどね。はせっかくhibikiが弾いてるのに、ウワモノのKeyのせいでその凄みがあんまり伝わってこないし。


親しみやすい変態、再び。
もうちょっと力強さや攻撃性を感じさせる曲も欲しかったかな、というのが正直なところですが、専任Key奏者がいなくなってなお、こういう(シンフォニックな)方向に進むとは思いませんでした。それだけにKeyの「ソロ」となると減ってはいますけど。

前作が「MAHATMAとはこういうバンドですよ」という自己紹介だったならば、本作は「こういう面もあるよ」といった感じでしょうか。いずれにせよ、素晴らしいミュージシャンシップ・表現力・メロディを有する作品だと思います。
ただ、次作はまた違った方向性になりそうな気もする…。で、それを何となく望んでもいる私。

【お気に入り】
⑨Starry Night
「パーカッシヴなリズム+哀メロ」なハイライト曲。Drソロもヤヴァし。
②Romance
ガルネリ/あぶらのYUHKI(Key)が参加した間奏の聴き応え、それとエンドGtソロの泣きっぷりが素晴らしい。
③Brand New World
⑦ラッキー☆セブン
⑩Dragon's Fly
間奏後のドラマティックな展開が◎。

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