ピエール・ルメートル『悲しみのイレーヌ』

ピエールルメートル_悲しみのイレーヌ
ピエール・ルメートル『悲しみのイレーヌ』 (橘明美 訳、文春文庫)

ピエール・ルメートルの『悲しみのイレーヌ』を読みました。
「カミーユ・ヴェルーヴェン警部」シリーズの1作目にして、『その女アレックス』の前作。
『その女アレックス』の感想は → コチラ。

異様な手口で惨殺された二人の女。カミーユ・ヴェルーヴェン警部は部下たちと捜査を開始するが、やがて第二の事件が発生。カミーユは事件の恐るべき共通点を発見する……。『その女アレックス』の著者が放つミステリ賞4冠に輝く衝撃作。あまりに悪意に満ちた犯罪計画――あなたも犯人の悪意から逃れられない。

シリーズ物の1作目にもってくる話だとはとても思えん。


以下、人によっては「ネタバレ」と感じる部分があると思いますので、ご注意ください。
 ↓

『その女アレックス』を先に読んでる人には分かってるんですよね、結末が。ましてや、この邦題ですから(この邦題の付け方は失敗だと思う)。
ただ、それでも本作は楽しく読むことが出来ました。「楽しく」というにはあまりにも救いのない話なんですけど。

どんでん返し的には一段階。数回のどんでん返しをキメた『その女アレックス』に比べると、読者を翻弄する力は弱いかもしれません。でもその一発がかなり強力です。その強力さゆえに、細かいことはどうでもよくなってくるんですが、トリック決められた後に冷静になって考えてみると、ツッコミどころは多く、ちょっと乱暴かな、とは感じましたね。

トリック自体の切れ味よりも、このパターンのトリックをシリーズ物の1作目に採用してくるのか!?ってことの方が何倍もビックリでした。1作目って普通、登場人物紹介が主眼になりますからね。特にこういった警察物という、チーム戦を描く物語ではなおさら。それとも作者って、本書を書いた時点ではシリーズ化を考えていなかったのかしら。調べても調べようともしてないので不明ですが。

この作者は巧いね。サクサクと読みやすいんだけど、軽薄さは無く、むしろ反対に、読み手がジリジリと追い詰められてゆくような焦燥感を覚える…。アレックスの時も書きましたが、訳者の手腕に依るところも大きい。
本書の大きな読みどころは、“チーム・カミーユ”による活躍っぷりなんですけど、各チーム・メンバーが生き生きと描かれて、あちこちに印象的なシーンがある。それは、設定された性格に沿った行動言動を、それぞれのキャラにちゃんととらせているからですね。上手い。
ルイもアルマンも良いけど、オイラ…、マレヴァルも好きだな。

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COMMENT 4

VKTRS  2016, 06. 20 [Mon] 20:59

こっちはまだ読んでないです

おお、シリーズ作が出ていたのを知りませんでした。

『その女アレックス』は見事な作品でしたね。
話の後味はよくないのだけれども、ミステリとしては素晴らしかった。
こちらはまだ読んでませんが、屈折した主人公カミーユに魅力を感じたので、見つけたら読んでみようと思います。

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ヒゲ・スカイウォーカー  2016, 06. 21 [Tue] 19:51

VKTRSさん、

アレックスは『このミス』1位でしたけど、本作は翌年の2位でしたね。
アレックスがお気に召したのであれば、本作もどうぞ。同様に後味悪いですけどw

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VKTRS  2016, 08. 18 [Thu] 22:19

こちらを先に読みたかったなぁ・・・(ややネタバレ?!というか刊行順的に仕方ない・・・)

やっと読了致しましたので書き込み。

後味の悪さは同様、どころかアレックスの非じゃなかったですよwww
(終盤の展開、ちょっと"大罪をテーマにしたあの映画"が思い出されました)
アレックスを先に読んでいなかったら、正直もっと衝撃だったでしょうねぇ・・・
訳で読んでいるから仕方ないとはいえ、刊行順に読めた方が羨ましいです。

この後アレックスを読み直そうと思っていますが、
イレーヌについてのカミーユの心境により感情を動かされそうです・・・。
そして個人的にはアルマンとル・グエンが好きかなw

訳者がよいというのもあるとは思いますが、
作者のこの「読みやすいのに焦燥感を覚える」手腕は、
脚本家であることに拠るところが大きいのかな、と思います。

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ヒゲ・スカイウォーカー  2016, 08. 20 [Sat] 20:01

VKTRSさん、

この後味の悪さでシリーズ1作目ですからね(笑)

脚本家の人が書く小説って、読者を振り回してやろうって意図が露骨に見えて鼻白む場合もあるんですけど、今のところこの人の作品ではそれは感じなくって(登場人物の心理描写の巧さゆえだと思う)、なかなかの逸材かな、と。

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