神林長平『グッドラック - 戦闘妖精・雪風』

神林長平_グッドラック
神林長平『グッドラック - 戦闘妖精・雪風』 (ハヤカワ文庫JA)

神林長平の戦闘妖精・雪風シリーズの2作目、『グッドラック - 戦闘妖精・雪風』を読みました。
1作目、『戦闘妖精・雪風<改>』の感想は → コチラ。

突如、地球への侵攻を開始した未知の異星体ジャム。これに対峙すべく人類は実戦組織FAFをフェアリイ星に派遣、特殊戦第五飛行戦隊に所属する深井零もまた、戦術戦闘電子偵察機・雪風とともに熾烈な戦闘の日々を送っていた。だが、作戦行動中に被弾した雪風は、零を機外へと射出、自己のデータを最新鋭機へと転送する―もはや人間は必要ないと判断したかのように。人間と機械の相克を極限まで追求したシリーズ第2作。

なんじゃこれ、めっちゃ面白い。


以下、人によっては「ネタバレ」と感じる部分があると思いますので、ご注意ください。
 ↓


短編連作集だった1作目『戦闘妖精・雪風<改>』と違って、こちらは長編です。
ストーリーとしては完全に続き物ですので、前作を読んでからじゃないと厳しいでしょうね。内容や設定は把握できるかもしれないですけど、本作における物語展開の必然性への理解や面白みがガクンと落ちると思います。

1作目から色々変化してます。
前作での設定や人間関係をより突き詰めた描写や、「こうきたか!?」という展開まで、さらに分量が増えたページの中に、あまりスピード感を感じさせない筆致で描かれます。しつこいくらいに。濃密。
空中戦の描写は少なくなり、「敵であるジャムとは何者か?」という疑問を通して、各陣営・組織間の関係性、人と機械との関わり方/人と世界との関わり方を描くことに大きくページを割いています。哲学や宗教を論じているようなムードもあるんですけど、それがなかなか面白いんですよね。

最終的には、各陣営の構図が【ジャム/人類(FAF)/人類(地球人)/人類(特殊戦チーム)/コンピュータ群】という風に複雑化し、クライマックスの“クーデター”へと繋がってゆきます。その過程で主人公・深井零と“相棒”雪風との関係性が変化し、また、零自身も変わってゆくんですが、その描写が読ませること読ませること。
変化する零。その転機となったのは、地球のジャーナリストであるリン・ジャクソンとの邂逅、それと、零の精神分析をする軍医・フォス大尉とのやりとり、でしょうかね。フォス大尉は、人間と機械の関係性、それと零と雪風との奇妙な絆について、読者に分かり易く説明するためのキャラとしても機能しているわけですけど、本書における彼女の役割はかなり大きなものがあります。

1作目では、雪風の行為に対する零からの一方的な評価によって、二者の“絆”が描写されていましたが、本作では零(もしくは同乗者)の発話に対して、雪風がディスプレイ上に人語(=英語)で返答するという、双方向の会話が成立しています。それがね、とても良いね。機械とのやりとりのくせして、圧倒的なリリシズムを感じさせるところが。ジャムとの接触に際して、雪風が<everything is ready/I don't lose/trust me…>って返してくるところなんて震えがくる。

特殊戦の人間模様も大きな読みどころで、副主人公的な役割のブッカー少佐だけでなく、特殊戦の親分であるクーリィ准将についての掘り下げがまた良いスパイスになっていますね。最終作戦前のブリーフィングで、「これは大がかりな作戦だが、基本的には、いつもの作戦と同じだ。戦隊機は手段を選ばず、必ず帰還せよ。これはわたしの要望ではない、命令である。これもいつもと同じだ。以上」と言い放つパートは異常なほどにクール。
ラストシーンでの雪風の出撃シーンも、限りなくクール。


1作目の面白さをさらに押し進めた、傑作。
ストーリーは尻切れ気味に次作『アンブロークンアロー 戦闘妖精・雪風』へと続きます。まだ買ってないけど。

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