神林長平『戦闘妖精・雪風<改>』

神林長平_戦闘妖精雪風改
神林長平『戦闘妖精・雪風<改>』 (ハヤカワ文庫JA)

神林長平のSF小説、『戦闘妖精・雪風<改>』を読みました。

南極大陸に突如出現した超空間通路によって、地球への侵攻を開始した未知の異星体「ジャム」。反撃を開始した人類は、「通路」の彼方に存在する惑星フェアリイに実戦組織FAFを派遣した。戦術戦闘電子偵察機・雪風とともに、孤独な戦いを続ける特殊戦の深井零。その任務は、味方を犠牲にしてでも敵の情報を持ち帰るという非情かつ冷徹なものだった―。発表から20年、緻密な加筆訂正と新解説・新装幀でおくる改訂新版。

SF小説には疎い私でも、作者とこのシリーズの名前は聞いたことあったし、飛行機の表紙にも見覚えありました(ヲタクっぽいなと思ってたw)
8編の短編を収めた作品ですが、主要登場人物は共通しているし、各編(おそらく)時系列に並んでいるので、長編のようにも捉えることができます。短編連作集といった位置づけか。


以下、人によっては「ネタバレ」と感じる部分があると思いますので、ご注意ください。
 ↓


戦術コンピュータはFCSに割り込み、ミサイルシーカーのアーマメントコントロールのミニマムモードを消去(キル)。その瞬間、ミサイルが雪風の腹部から発射された。

雪風のFCSはミサイルに誘導情報を発信していたが、危険を察知し、誘導制御を解除。ミサイルは雪風からの誘導情報を切られて、ドップラー周波数の変化による起爆能力を失う。雪風のレーダーのパルスと目標からの反射パルスのドップラー周波数を比較、目標に最接近するときのミニマム・ドップラーゲートを捉えて起爆する装置が作動停止。しかし光学感応信管が目標の熱を感知し、熱電池が作動、起爆信号を発声させた。ミサイル、爆発。

それは限りなくフリーダムでアジャイル、そしてイノベーティブなものだと考えています。シュリンクされたバジェットをどのようなスキームで獲得していくのか、そのオポチュニティマネージメントこそが鍵です。


は?
何言ってんだ、この文章?
(関係ないのも混じっているような気もしますが気にすんなw)
でもこういうのが男の子は好きなはず。やたら専門用語が並んでて、メカニカルな知的好奇心を満足させてくれそうな気がするやつ。私はあんまりピンときませんが。

ただ、そんな戦闘描写はあれど、基本的にはコレ、人間ドラマですね。というより、人間のあり方と機械との向き合い方を書いた小説という感じですかね。噂に違わぬ面白さでした。こりゃあ傑作だわ。

正体不明の敵、ジャムとの戦いそのものの面白さもさりながら、特殊戦に従事する通称「ブーメラン隊」という特異な環境に置かれた軍人を主人公に据え、彼=深井零中尉とその愛機である「雪風」を通して人間と機械の関係性や距離感を描いているのが興味深い。基本的に、無慈悲な、機械に近い性格でなければ「ブーメラン隊」の任務は務まらないという設定でありながら、各エピソードで垣間見える零の人間らしさの発露にグッと引き込まれます。特に、システム部門の担当官であるトム・ジョン大尉との交流を描く「インディアン・サマー」はリリシズム溢れる名編だと思います。あとは、零を主人公から外すことで、別の人物の視点からの人間らしさを追求した「フェアリィ・冬」も重要なエピソードでしょう。同時に、ここで描かれる、コンピュータが人間のあずかり知らぬところで「自我」を持つ描写が恐ろしい。

森博嗣のスカイ・クロラシリーズは好きなんですけど、本作を読んでいて、この虚無感というか無機質な感じは、同シリーズに通じるところがあるような気もしましたね。もしかして森氏は影響受けてるんですかね? まぁ、普通は読む順番が逆なのかもしれないですけど。

さて、次作『グッドラック』も楽しみ。
因みに、本作と『グッドラック』で、同じく“戦闘妖精・雪風”って書いてあるのに、ジャケに描かれた飛行機は別物だよな、とか思っていましたが、その理由は本作の最終編「スーパーフェニックス」で明らかにされていましたね。ジャムの正体について一歩踏み込んだ描写をしているエピソードとしても、雪風と零との関係性の変化を描いている話としても重要。力作。

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