KING CRIMSON「IN THE WAKE OF POSEIDON」


KING CRIMSON「IN THE WAKE OF POSEIDON」 (1970)

“赤ら顔オッサンの苦悩”こと、衝撃のデビュー盤「IN THE COURT OF THE CRIMSON KING」(1969)の翌年にリリースされた2ndアルバム。

「前作の二番煎じだから評価が低い」みたいな前情報があってですね、実際に聴いてみたら、これが凄い。もんのすごい。こんな凄い出来で喜ばないなんて、プログレ・ファンはどんだけ狭量なんだと驚いた覚えがありますね。そんなこと言ったらAC/DCなんてどうなっちゃうの!?っていう…。
あ、でも下手に「プログレッシヴ」なんて冠されているから、常に変化を求められてハードル高くなっていたのかしら? まぁ一口に「プログレ」と言っても、字義通りにprogressiveな場合もあれば、音楽スタイルとしての「プログレ」もあるのが実情ですけど。

もし1stが無かったら本作の評価はどうなるのか、というのは愚問だし、かつ意味を為さない質問ですが、『宮殿』最大の功労者であろうIan McDonald(KeyとかSaxとか諸々)が居なくても、この叙情を保つことができたということが驚きですね。まぁその「叙情」の方向性はちょっと変化しているんですけどね。この変化って、Mel Collins(Sax&Flute)とKeith Tippett(Piano)に依るところが大きいんでしょうか、ちょっとジャズ方面へ向かいつつあるのを感じます。

二番煎じ的評価っていうのは、同タイプの楽曲が似たような配置で並んでいるからなんでしょうけど、アルバムの構成を考えると1stより本作の方が美しいと感じます。それは①Peace – A Beginning⑤Peace – A Theme⑧Peace – An Endという小曲3つが、アタマとケツと真ん中に配置されることで統一感を与え、全体を引き締めているから。この役割が殊の外、大きい。

21st Century Schizoid Manのスキツォイドっぷりをさらに突き抜けさせた②Pictures Of A City。間奏のぶっ飛んだ攻撃性は大きな大きな聴き処ですが、アグレッシヴなだけではなく、同時に高い知性を以って冷静に構築されたものを感じさせるのが怖ろしい。
1stに続いてGreg Lakeが素晴らしいヴォーカルを聞かせる本作ですが、I Talk To The Windを想起させる③Cadence and Cascadeのみ、歌っているのはGordon Haskellです(彼は次作にも参加)。Gregによる気品や包容力と一緒に力強さを感じる歌唱に比べると、Gordonのそれはただただ繊細で朴訥(上手いわけじゃない)。歌唱というより囁きに近いものがあります。それがこの曲の素朴さを担保しているとも言えそう。
Epitaphばりのシンフォニック・キラーチューンがタイトル・トラックの④In The Wake Of Poseidon。二番煎じと言えばもっとも二番煎じ的だけど、このメロトロン波状攻撃と崇高な空気と悲哀のメロディにはまんまとヤラれる。

と、ここまでは思いっきり前作に酷似した構成なわけですけど、本作でしか聴くことの出来ないのが⑥Cat Foodでしょう。この曲の存在は大きいと思いますねぇ。似た曲、1stには無いもんね。クリムゾン全体を考えてももしかして無い?? 人を食ったようなフリーキーさが実に英国のバンドらしいなぁ…と感じます。「きゃっふー!きゃっふー!きゃっふぅぅ…あげぇぇえぃんッ!!」のところはクセになるわー。
3部構成、恐怖感を煽るインスト大作の⑦The Devil's Triangleが、とてつもなく大きな存在感をもって最後に待ち構えております。めちゃくちゃヘヴィ。聴いてるとジワジワと焦燥感に苛まれるという、精神にクる重さ。終盤、一瞬だけ現れるThe Court Of The Crimson Kingのメインテーマ・メロディも、穏やかにアルバムを締めくくるも救いにはならん。


このアルバムの後、Robert Fripp(Gt&Key)とPeter Sinfield(words)を除いて、オリジナル・メンバーはいなくなります。次作、次々作はラインナップがガタガタですからねぇ。作品の出来に関係なく。

昨年末の来日公演でこのアルバムの曲を聴いてますます評価が高まったというか、再評価したというのもあり、実に奥深い作品じゃないのか、と改めて感じる次第です。今までの私の聞き込みが浅かっただけかもしれないですけどね。
繰り返し何度も聴いた1stより、今となってはこちらの方が聴く度に発見があって面白いかもしれません。演奏面の充実はさすがクリムゾンと言いたいところですし。予備知識無し、歴史的意義とか無視して黙って両方聞かせたら、もしかして本作の方が良いんじゃね?とか思ったりも。
超絶傑作。

【お気に入り】
④In The Wake Of Poseidon
⑦The Devil's Triangle
②Pictures Of A City
⑥Cat Food


12月7日、Greg Lakeが癌との闘病の末に逝去されたとのことです。69歳。
ご冥福をお祈りいたします。


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COMMENT 4

Yas  2016, 12. 17 [Sat] 22:05

お邪魔します

Greg Lake亡くなっちゃいましたね。
でもそこでELPではなくあえてこのアルバムというのがいいですね。
私もいずれこのアルバムのレビューを書こうと思っていましたが、書きたかった内容は全く同じです(笑)
1stさえなければ、これが最高傑作だったはずです。でもCat Foodだけはどうしてもジョークソングにしか聴こえないんだよなぁ。。

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ヒゲ・スカイウォーカー  2016, 12. 19 [Mon] 04:30

Yasさん、

生で観たことあるわけじゃないんですけど、Gregの逝去はショックでしたね。

元々ELPよりもクリムゾンの方が好きなんですが、ELPは演奏中心に考えてしまう傾向があるのに対して初期クリムゾンは歌の比重も大きいですから、こちらをチョイスしました。
凄いアルバムです。

Cat Foodは昔は好きじゃありませんでした(笑)
英国人らしいブラック・ユーモアが現れているようで、今は好きになりましたけど。

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紅  2016, 12. 21 [Wed] 02:10

キャットフード、ジャズロック的な感じが強くておもしろいですよね。

これでピアニストのキースティペットの作品にも興味が出ました。

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ヒゲ・スカイウォーカー  2016, 12. 21 [Wed] 23:37

紅さん、

コメントありがとうございます。
Cat Foodは今回記事にするにあたって聴きなおしたら、なおさらハマりました(笑)

私は、Keith Tippettも含めて、クリムゾン・ファミリーの“枝”の方までは聴いてないものが多いので、余裕が出たらチェックしてみたいです。

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